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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十四章・炎の彼方へ

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次元のはざま、その向こうに

 アメン・ラーたちを倒すと、浮遊神殿が静かに落下……聖天使教会跡地に着陸した。

 量産型天使は消滅。残りの十二使徒や階梯天使たちも負けを認めたようだ。

 そして、大勢が浮遊神殿に集まってきた。

 俺は、集まってきたみんなを出迎える。


「よ、勝ったぞ」

「「「「「「軽い!!」」」」」」

「うおっ」


 プリム、カグヤ、クロネ、アイシェラ、ナキ、ミカちゃんが一斉にツッコむ。

 そして、シラヌイが飛び掛かってきたのでキャッチ。思いきり撫でまわした。


『きゅぅぅぅん』

「よしよし。おーおー、こんなボロボロで……頑張ったな」

『わんわん!!』


 シラヌイは嬉しそうに鳴いた。

 さて、集まったメンツだが……なんか多いな。

 

「それにしても、いっぱいいるな。おいダニエル、みんな紹介してくれよ」

「おま、ここでオレに振るのか!? まぁいいけど……」


 ダニエルが全員を紹介する。

 えーと、この場にいるのが聖天使教会のアルデバロン。その部下のジブリールとガブリエルにズリエル。ボロボロのハイシャオにハクレン。堕天使のコクマエルにアブディエル。黒天使のマキエル、ラハティエルか。それと俺の仲間たちだな。

 アルデバロンが、俺の前に出る。


「神を倒したのだな」

「ああ。どうする? あんたも俺とやるか?」

「……やめておこう。オレでは絶対に勝てん。ふふ、最強の炎か……ミカエル、お前の言った通りだ」

「ふん、当然でしょ」

「???」


 よくわからん。

 すると、アルデバロンは言う。


「ジブリール、ガブリエル、ズリエル。我々は階梯天使たちをまとめるぞ。これから新しい時代がやってくる……我々天使もまた、変わらねばならん」

「やれやれ、年寄りを酷使しおって」

「まぁ、悪くないけどねぇ」

「え。え、え……わ、私も? え。ダニエル先輩、あの」

「すまん、アルデバロンの旦那には逆らえん」

「えェェェェェェェェ!?」


 アルデバロンたちは、階梯天使をまとめるべく去って行った。

 なんとなくだけど、天使はこれから変わっていく気がする。

 そして、ハイシャオ。


「兄貴……行くの?」

「ああ。ケリつけないとな」


 振り返ると、浮遊神殿に空く巨大な穴……神が作った異空間がある。

 この奥に、先生たちがいる。


「兄貴……」

「お前、負けたんだろ?」

「……わかる?」

「ああ。で、大丈夫なのか?」

「……まぁね」


 ハイシャオは笑った。

 負けたことで得るものがあったんだろう。ハイシャオはカグヤをチラッと見る。カグヤはフンと鼻を鳴らしてそっぽ向く。


「あたし、兄貴の帰り待ってるから。強者を求めて旅へ! なーんて展開にはならないから安心してね。妹として、家族として……待ってるから」

「……おう」


 家族か。 

 ハイシャオ。こいつも寂しかったのかな。

 千年前の人間は、もう俺とハイシャオしかいない。こいつが兄貴を求めてるなら、応えてやってもいいかな……なんて思う。

 

「お兄ちゃん」

「ハクレン、お前もご苦労さん」

「うん……」


 ハクレンを撫でてやると、顔をほころばせる。

 こいつもまとめて面倒みてやるか。へへ、俺が兄貴ねぇ。

 ハクレンをハイシャオに渡し、堕天使たちを見る。


「ダニエル、おつかれさん」

「おう。あ~酒飲みたいぜ」

「ラティエルも」

「うん」

「アブディエル」

「……私は、自分の仕事をしただけ」

「えっと、コクマエル」

「あはは。いや~疲れたよ」


 堕天使たちは相変わらずだな。ま、無事でなにより。

 そして、幼女を連れてる糸目の天使……こいつ、誰だろう?


「ああ、ワタクシは傍観者なのでお気になさらず」

「おなか、へった」

「お、おお」


 よくわからん。まぁいいや。

 そして、仲間たち。

 俺はプリムたちを前に、ちゃんと言う。


「みんな。俺たちの旅はここでおしまい。俺……あの中にいる先生たちと、ケリつけてくる」

「……やはり、行くのだな」

「ああ」


 アイシェラ。

 アイシェラは、俺の前に立つ。

 アイシェラはボロボロだった。怪我とかは治療されているが、傍らに控えるブルーパンサーは傷だらけで、激戦だったことがわかる。


「私からは一つだけ……死ぬな」

「ああ」

「フン、お前が死んだらお嬢様が悲しむ。それと……私も」

「え、お前も?」

「……察しろ、馬鹿め」

「はいはい。なんだかんだで、ずっと一緒だったもんな。アイシェラ、お前はプリム好きの変態だと思ってるけど……俺、お前のこと好きだぞ」

「やめろ。私はお嬢様命だ……まぁ、私も嫌いではない」

「ああ、ありがとな」

「……ふん」


 アイシェラと軽く手を合わせた。

 そして、クロネ。


「にゃん」

「クロネ。ここまでありがとな」

「にゃん。最後かもしれないし……うちの身体触ったこと、許してやるにゃん」

「お、ありがとよ」

「……ちゃんと帰ってくるにゃん」

「ああ」


 クロネはそっと寄り添い、俺の胸に頭を擦りつけた。

 頭を撫で、ネコミミを優しく揉むと、クロネの喉がゴロゴロなる。

 俺から離れ、アイシェラの後ろへ隠れてしまった。

 そして、ナキ。


「さっさと終わらせてこいよ。んで、メシ食おうぜ」

「お、いいな。やっぱ肉かな?」

「ああ。肉でも魚でも何でもいい。へへ、奢ってやるよ」

「ありがとな」

「おう……負けんじゃねぇぞ」

「ああ」


 ナキとハイタッチ。

 そして、ミカエル。


「行きなさい。そして、決着を」

「ああ。全部終わらせる」

「ええ。終わったら……」

「ん?」

「終わったら、ちゃんと帰ってきて」

「はは、当たり前だって」

「……待ってるから」


 ミカエルは、俺の肩に頭を寄せる。

 今気づいた。ミカエルの翼がない……それに、天使としての力をほとんど感じない。

 まるで、布一杯に吸い込んだ水を、限界まで絞り出したような状態。

 

「…………っ」


 何かを言おうかと思ったけど、やめた。

 きっとミカエルは、限界まで力を出したんだ。それでいい。

 ミカエルの頭を撫で、言う。


「ありがとな、ミカちゃん」

「ミカちゃん言うな、馬鹿」


 そう言って、ミカエルは笑って離れた。

 入れ替わるように、カグヤが前に出た。


「死んだら殺す。死にたくなかったらさっさと行ってさっさと帰ってきなさい」

「おま、相変わらずすぎだろ……逆に安心するぞ」

「ふん。アタシはアタシよ。でもね、自分の信条を曲げても、アンタには死んでほしくないの」

「……お前、ほんとにカグヤか?」

「どーいう意味よ!!」


 ぷんすか怒るカグヤ。

 カグヤの蹴りを躱し、俺は拳を突き付ける。


「お前とも決着ついてないしな。速攻で戻ってくる」

「ええ。それと、アタシに勝てたらいいものあげる」

「お、なんだ?」

「いいものよ。アンタに相応しいもの……」

「?」

「と、とにかく!! 負けたら殺す!! 以上!!」

「いでっ!?」


 カグヤは俺の胸を叩き、耳まで赤くしながら引っ込んだ。

 最後に───……プリム。


「フレア」

「おう」

「頑張ってください。わたし……待ってますから」

「ああ」


 プリムは俺の手を握り、温かな光で包み込む。

 怪我が綺麗に治り、体力も回復したような気がした。

 そして、俺の手を引き……唇に温かかく柔らかな物が触れた。


「えへへ、しちゃいました」

「びっくりした……お前、やるな」

「はじめてのキスです。フレア、大好きです」

「ああ、俺も好きだぞ」

「……えへへ」


 プリムはぽろぽろ涙を流す。

 俺は頭を撫で、目を拭ってやった。


「みんなと待っててくれ。ちゃんと帰ってくるからさ」

「……はい」


 プリムをアイシェラに任せ、俺は拳を打ち付ける。

 振り返ると、次元のはざまが見える。

 空間に空いた亀裂。この先に先生たちがいる。


「っしゃ!! じゃあ、行きますか!!」


 俺は気合を入れ、次元のはざまに飛び込んだ。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] 帰ってきたら何百年も経った後だったみたいのは嫌だなー
[一言] フレア…頼むから消えるなよ…
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