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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十三章・至高の三神と地獄炎の七大魔王

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BOSS・呪闘流八極式鋼種第一級呪術師ハイシャオ②

「神風流、『流星杭』!!」


 カグヤの流星のような飛び蹴りが、ハイシャオを狙う。

 だが、カグヤは呪符を取り出した。


「『硬くなれ(カタタク)』!!」

「チッ……」


 呪符に込められた呪力が発動。カグヤの身体が鉄のように硬くなる。

 カグヤは棍を無視し、ハイシャオめがけて前蹴りを繰り出した。

 ハイシャオは、絶妙な体捌きでカグヤの蹴りを躱し、距離を取る。

 憎々し気にカグヤを睨んで言った。


「呪符、何枚もらったのよ」

「そりゃもう山ほどね。アイツ、身体強化系の呪力を込めた呪符を何枚もくれたのよ。アタシとミカエルのぶんってね……相手は呪術師や神様だし、用意するに越したことはない、ってさ」

「……うっざ」


 ハイシャオの呪術は、フレアの持たせた呪符が身代わりとなり無効化される。初めからミカエルかカグヤが戦うことを想定していたようだ。

 呪術は、もう期待できない。

 ハイシャオは深呼吸し、棍をクルクル回す。


「ガチでやってあげる」

「そりゃ光栄ね」


 カグヤも、右足を軽く上げて構えを取った。

 ハイシャオは、カグヤに聞く。


「あんたさ、兄貴のこと好きなの?」

「…………」


 カグヤは、答えず走り出した。


 ◇◇◇◇◇◇


 最初は、ムカつくやつだった。

 水浴びをしていたカグヤの前に現れた。只者じゃないと一瞬でわかった。裸ということも忘れ襲い掛かった……今思えば、恥ずかしい。


「裏神風流、『孤高狼月(ここうろうげつ)』!!」

「鋼の型、『鉄鋼時雨(てっこうしぐれ)』!!」


 砂漠でタイマンを挑んだ。

 そして敗北。リベンジを誓い同行することにした。

 それからは、面白いことの連続だった。

 天使との戦い、魔法使いの国でダンジョンに挑み、吸血鬼の国では死にかけた。パープルアメジスト王国ではゴーレムと戦い、エルフの国でも戦いの連続。

 そのすべてに、フレアがいた。

 いつの間にか、心を許して背中を任せていた。

 一人の戦力、一人の人間、そして……一人の男として、信頼していた。

 好きか嫌いかで言えば、間違いなく好きだ。

 

「鋼の型、『鎖錠鞭』!!」

「ぐっ!?」


 フレアは、空に浮かんでいる『浮遊神殿』で、神様と戦っている。

 神に天使。物語の住人のような相手が、敵なのだ。

 そして、自分が戦っているのは呪術師。


「捕らえたっ!!」

「ぐぁっ!?」


 カグヤの足に鎖が絡みつく。

 地獄炎を帯びた鎖がカグヤの足を焼く。カグヤは舌打ちし、足を巨大化させて鎖を引きちぎった。

 そして、地面を思いきり踏みつける。


「裏神風流、『地震割断(じしんかつだん)』!!」


 地面が割れ、地面から生えていたハイシャオの鎖が全て取れた。

 ハイシャオは飛び上がり、カグヤに向かって棍を投げつける。


「っと!?」

「滅の型、『打厳』!!」

「がっ!?」

「甲の型、『鉄心甲』!!」

「ぐえっ!?」


 腹に強烈な拳が叩き込まれ、そのまま肘打ちが入る。

 カグヤは吐血。だが、歯を食いしばって耐え、横薙ぎの蹴りをハイシャオの側頭部へ。

 だが、ハイシャオはほんの少しだけ首をひねって回避。

 カグヤはそのまま勢いを付け、もう一度蹴りを喰らわせる───が。


「流の型、『漣』」

「!?」


 蹴りにそっと手を添えられ、軌道を捻じ曲げられた。

 ハイシャオが地面を踏むと、土から鉄棍が生成される。


「シッ!!」

「あがっ!?」


 バチン!! と、鉄棍で顔を殴られた。

 痛みで一瞬思考が飛ぶ。だが、気合で意識を保つ。

 

「ぐ、っは……」


 強い。

 近接戦闘は、フレアに匹敵する強さだ。

 基礎四大行を使いこなし、カグヤの攻撃を躱しては反撃をする。

 ハイシャオは、本気だった。

 

「あんたは強いよ。あたしが戦ってきた中で一番……でも、あたしが勝つ」

「ふざ、けんなっ……」


 カグヤは折れない。

 ハイシャオは、カグヤの胸元にある呪力を感じ取る。

 呪術を込めた拳を喰らわせるたびに、呪符が消滅しているのがわかる。

 恐らく、あと数回。数回攻撃を与えれば、呪符は全て消滅する。

 その時が、カグヤの終わりだ。


「あんたの攻撃パターンは全て読んだ。足技をこれほどまで使いこなすなんて、呪術師の村でもいなかった」

「はぁ、はぁ、はぁ……アァァァァァッ!!」

「でも、もうおしまい」

「ご、がっ、がっ!?」


 スパパパパン!! と、高速の打撃がカグヤの全身を叩く。

 呪符が全て燃え尽きたのを確認。同時に、カグヤが膝をついた。

 ハイシャオは、鉄棍を手に取り、最後の一撃を叩き込む。

 第三地獄炎を最大まで燃やし、カグヤを完全に消滅させる。


「さよなら、カグヤ。あんたは強いけど、兄貴に相応しくはなかったね」

「…………」


 そして───第三地獄炎を纏った鉄棍が、カグヤに触れた。

 その瞬間、カグヤの全身が一気に燃え上がる。

 ハイシャオは振り返り、フレアのいる浮遊神殿を見上げた。


「さて、兄貴を追わないと」


 ◇◇◇◇◇◇




「───まだだよ」

「え?」




 ◇◇◇◇◇◇


 幼い声が聞こえた。

 ハイシャオが振り返ると───目の前に何かがあった。


「だらぁぁぁっ!!」

「ぶがっ!?」


 それは、カグヤの足の裏。

 強烈な飛び蹴りが、ハイシャオの顔面に突き刺さった。

 たたらを踏み後退するハイシャオ。だが、カグヤは止まらない。


「神風流、『夜叉風車』!! 『凪打ち』!! 『連牙弾』!!」


 回転踵落とし、側頭部への蹴り、全身を狙った蹴りの連撃が叩き込まれる。

 まだカグヤは止まらない。


「神風流第一奥義、『旋風(つむじかぜ)椋鳥ノ嵐(むくどりのらん)』!!」


 接近して飛び上がり、これでもかと蹴りを浴びせる。

 それでも、カグヤは止まらない。


「アァァァァァ───ッ!!」


 滅茶苦茶に蹴りまくった。

 どんな技を使ったのかもわからない。

 ハイシャオを、全力で蹴った。

 そして、息も絶え絶えになり……ようやく止まる。

 地面に転がったのは、全身骨折でピクリとも動かないハイシャオだ。

 ハイシャオは、まだ意識があった。


「ど、して……」

「……勝負に横入りするやつは許さないけど、その信条を曲げたわ。今は、アンタをフレアの元へ行かせるわけにはいかないからね」

「……え」


 カグヤの背後からひょっこり現れたのは、真っ白な呪闘衣を纏った少女。


「は、くれ……ン」

「ごめん、ハイシャオ。お兄ちゃんのためなの」


 第四地獄炎の使い手、ハクレン。

 ずっと姿が見えなかったが、今の今まで潜んでいたのだ。

 もしもの場合の切り札として。仲間を救う《治療薬》として。

 カグヤが燃やされた瞬間、第四地獄炎で瞬間的に治療したのだ。

 カグヤはハクレンが現れた瞬間、迷った。勝負の邪魔をされるのは許せない……だが、フレアの元にハイシャオを行かせるわけにもいかない。

 だから、曲げてしまった。

 勝ったのに、カグヤは悔しそうだった。


「お願い。コイツを治して」

「いいの?」

「ええ」

「わかった。死なない程度に治しておく」


 真っ白な炎が、ハイシャオを包み込む。

 カグヤは、歯を食いしばりながら言った。


「仕切り直しよ」

「……え」

「今度は、邪魔が入らない場所で。本気で勝負しましょ」

「……」


 まっすぐな目で、カグヤは言った。

 そのまっすぐさが、ハイシャオには眩しかった。

 こんな風に、純粋に戦いを楽しむなんて……。


「……あは」


 ハイシャオは負けを認め、そのまま目を閉じた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
[良い点] ミカエルとカグヤ、勝ちはしましたけど能力犠牲と信念曲げてでもっていう勝ち方よかったですね まぁ二人共根幹はフレアになるんでしょうがね! [一言] さて残りはフレアですかね? 全乗せチートで…
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