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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十三章・至高の三神と地獄炎の七大魔王

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BOSS・神の如き天使『雷・黒・癒・水』②/炎光の天使

 ミカエルが戦える時間は残り少ない。

 『神玉』がミカエルの体内で砕け散り、一時的に爆発的な力を生み出す。

 ミカエルは十二枚の翼を広げ、全身に炎を纏い飛んだ。

 真紅の剣を掲げ、未だほぼ無傷の四人を相手に力強く笑みを浮かべる。

 アルデバロンは構え、ガブリエルとジブリールも構え、サラカエルだけは「フン」と鼻を鳴らした。

 そして、つまらなそうに言う。


「無様だな。まだ勝てると信じ切った眼……滑稽を通り越し、憐れに見える」

「…………」

「ミカエル。最後の機会をやろう」


 サラカエルは、つまらなそうに言う。


「自害しろ」

「…………」

「我ら四人、もう遠慮はしない。全身全霊の一撃で、貴様をこの世から消滅させる……ふふん。自害するなら、貴様の遺体を剥製にして、永遠の時を歩ませてやってもいいぞ?」

「…………」

「さぁ、選べ」


 そして───ミカエルは、本当に嫌そうに顔をしかめた。


「いや、キモイ」

「……なに?」

「死体を剥製? あんた、マジで気持ち悪いわ。ねぇアルデバロン……あんたの弟、猟奇的な趣味あるの? いやぁ……死体を剥製にして飾ってやるから自害しろなんて言われるとは思わなかったわ。こればかりはマジで震える」


 ミカエルは身震いするようなポーズを取り、サラカエルを馬鹿にした。

 サラカエルの額に青筋が浮かぶ。

 アルデバロンは、サラカエルを手で制して言う。


「ミカエル。これが最後通告だ……降参しろ」

「あら、あんたは自害しろって言わないのね」

「今のお前は確かに強い。だが、神の力を直に与えられた我らに、勝てるはずがない。お前はもう最強の天使ではない……負けを認めるんだ」

「……最強の天使。ふふ、最強ね」

「そうだ。貴様が求めていた称号だろう……? 最強の天使、最強の『炎』」

「……かもね」


 ミカエルは、真紅の剣の柄を強く握る。

 アルデバロンの言う通り、最強を求めた。

 聖天使教会で最強、全ての天使最強だった。

 でも……それはもう、過去の話だ。

 今のミカエルは、違う。


「アルデバロン。あんたは厳しいし、マッチョだし、説教くさいし、いつも眉間にシワ寄ってるし、汗臭いしオヤジくさいけど……誰よりも優しいと思ってる」

「…………」

「あんたがそう言うのは、あたしを傷付けたくないからでしょ? でもね、あたしも引けないの」

「…………」

「ガブリエルとジブリール、あんたらも同じ」

「「…………」」


 アルデバロン、ガブリエルとジブリールは目を反らす。

 三人は、ミカエルの育ての親でもあった。

 

「本当に、ありがとう。一回だけ言う……あたし、あんたらのこと好きよ」

「「「…………」」」

「だから、だから───……あたしは、あんたらと戦う。あの神様は間違ってる。あたしは、神に従うあんたらを止める」


 ミカエルは、剣を突き付ける。

 すると、アルデバロンが拳に雷を纏わせた。

 ガブリエルとジブリールの剣が輝き、水を纏う。


「わかった……ケリをつけよう」

「うん」

「最強の天使ねぇ……ジブリール、勝てるかい?」

「分が悪い。ふふ、負けちまいそうだ」


 ガブリエルとジブリールは、なぜか嬉しそうだった。

 そして、サラカエルの杖に黒い雷がまとわりつく。


「茶番は終わりだ。フン……くだらん三文芝居だった。これでケリをつける!!」


 黒い雷が、大きさを増していく。

 そして、巨大な漆黒の雷龍となり、上空を黒く染めた。


「堕ちろ!! 『黒の堕天使(サラカエル)黒龍冥轟ノワールドラゴン』!!」


 さらに、ガブリエルとジブリールの剣が交差。二匹の水蛇が絡み合いながらミカエルに襲い掛かる。


「「『水と癒しの天使(ガブリエセレスタ)水蛇双流(リヴァイアサン)』!!」」


 その大きさは、サラカエルの黒いドラゴンに引けを取らない。

 そして、アルデバロン。

 全身に紫電の雷を纏う。

 爆発的な雷が、巨大な『右拳』となり上空に浮かんでいた。

 アルデバロンは拳を構え、叫ぶ。


「『雷の聖天使(ヴァラキエル)雷帝爆掌(トールハンマー)神拳(フルクラム)』!!」


 漆黒の雷龍、水の双頭蛇、紫電の巨大拳。

 喰らえば、間違いなく死ぬ。

 でも、ミカエルは───不思議なことに、笑っていた。

 それを見たアルデバロンは、見た。

 ミカエルが、胸元から何かを取り出したのを。


「ありがと、フレア」


 それは───呪符(・・)

 ミカエルは、愛しそうに呪符を投げて叫ぶ。


「『最強無敵であるためにフォース・ゼア・ギルファドム』!!」


 呪符が燃え、ミカエルの身体が輝いた。

 それは(・・・)呪術(・・)

 天使であるミカエルが呪術を使うなんて、想像すらしなかった。

 呪術最高の、肉体強化。

 その効果が、ミカエルの身体に作用する。

 ミカエルは剣を掲げ───『炎の天使』としての全てを注ぎ込んだ。


「全てを、この一撃に───ッ!!」


 黒龍よりも、水蛇よりも、紫電の拳よりも巨大な『炎』だった。

 赤を通り越し、純白の光となった炎の球体が上空に染まる。

 ミカエルは叫ぶ。


「『最強の天使(サタナエル)聖光(セイファート)太陽万丈(シャインブレイズ)』!!」


 白と紅蓮の『太陽』が、アルデバロンたちの一撃を一瞬で消滅させた。

 サラカエルが叫ぶ。


「ば、馬鹿な!? なぜ、なぜ!? 兄上、兄上!!」

「…………ふっ」


 アルデバロンは諦めたように笑い、太陽を見上げる。

 ガブリエルとジブリールも、同じだった。

 敗北を悟り、全てを受け入れようとしていた。


「お前の勝ちだ。ミカエル」

「まだだ!! まだ負けない。我らには神が───ッ!!」


 サラカエルの虚しい叫びと共に、アルデバロンたちは太陽に飲み込まれた。


 ◇◇◇◇◇◇


 更地となった大地に、ミカエルはゆっくり降り立った。

 そして、全ての力が霧散し……その場に倒れ込む。

 近くには、ボロボロのアルデバロン、元の老婆に戻ったジブリールとガブリエルもいた。

 アルデバロンはまだ意識があった。だが、指一本動かせない。


「……凄まじい一撃だった」

「ええ……あたしも、空っぽよ」

「これほどの一撃、どれほどの代償を支払った?……お前は、もう」

「そうね……もう」


 すると、ミカエルの翼から羽が落ちていく。

 天使としての力を全て注ぎ込み、もはや十二使徒どころか並みの天使以下にまで力が落ちていた。

 全ての力を失うのは、時間の問題だった。


「……いいのか?」

「……なにが?」

「もう、お前は最強には戻れない。今のお前は、並の天使……いや、人間とそう変わらないレベルに落ちている。羽が全て落ちれば、天使に戻ることもできない」

「いいわよ、別に」

「……なんだと?」

「あたしは、最強じゃなくていい。だって……あたしは、あたしの『(最強)』を見つけたから」

「…………」


 ミカエルは態勢を変え、上空を見つめた。

 結局、空の色を赤く染めることはできなかった。

 でも……青い空も、悪くない。


「く、ハハハハハハッ!! ハハハハハハッ!! はーっはっはっはっはぁ!!」


 と───ボロボロの身体を引きずり、サラカエルが現れた。

 手には折れた杖を持ち、血走った眼をミカエルへ向ける。

 ミカエルは目を見開くが、もう動けなかった。


「きさま、貴様は、貴様だけはァァァァァァーーーーーーッ!! ヒャハハハハハハハ!! 神のために、貴様はここで「そこまでです」……え」


 と、サラカエルの背後に誰かがいた。


「ラハティエルさん」

「うん」


 突如、空間が裂けた。

 そして、糸目の男……マキエルが、サラカエルの背をポンと押す。

 前のめりに倒れたサラカエルは、空間の亀裂に落ちて行った。


「マキエルぅぅぅぅぅぅぅぅ!! 貴様ァァァァァァーーーーーーッ!!」

「それではBOSS……また会う日まで」


 マキエルは帽子を取り一礼。ラハティエルが空間を閉じた。

 そして、マキエルは再び一礼。


「引き際は美しくがモットーですので、勝手に幕を引かせて頂きました」

「……あんた、サラカエルはあんたのボスでしょ?」

「ええ。ですが、これ以上の戦いに意味などありません。では、怪我の手当てをして、最後の戦いを観戦しましょうか」

「だいじょぶ?」


 ラハティエルがしゃがみ込み、ミカエルの頭を優しく撫でた。

 もうどうでもよくなったのか、ミカエルは大きなため息を吐く。

 そして、空を見上げ……ポツリと呟いた。


「フレア、あとは任せたからね」

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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