表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第三章・神風の銀狼カグヤ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/395

お届け者の皇子さま

 ギーシュが案内してくれたのは、見晴らしのいい高台にある家だった。

 俺はベランダに出る。すると、港やさっきまでいた小屋がとても小さく見えた。

 

「すっげぇ……海、それに町。知らない世界ってこんなに感動するんだな」

「フレア、楽しそうです」

「ま、そりゃな」


 プリムは俺の隣に立ち、同じ景色を眺めていた。

 ちなみにアイシェラは寝てる。虫歯と口内炎の苦しみで気を失ったままだ。

 ベランダには潮風が吹く。日差しが強く火照った身体にしおか潮風が当たり、とても気持ちいい。

 

「フレア、すぐに帰ってきてくださいね」

「ああ。すぐに帰ってきて一緒に冒険だ!」

「はい! えへへ……楽しいことばかりで嬉しいです」

「そうだな。俺、知らないことばかりだ。海の次は何が見れるかすっげぇわくわくしてる。プリム、お前も楽しいこといっぱい見つけられるといいな」

「……はい!」


 俺の出発は明日。

 ブルーサファイア王の隠し子を、レッドルビー王国に住む祖父とやらのもとへ送る。その道中の護衛が仕事だ。この仕事を終えれば、プリムの帰る家に必要な物が手に入る……だっけ? よく聞いてなかったから覚えてねーや。


「フレア……」

「ん?」

「私、アイシェラと待ってます。フレアが帰ってきたら、一緒に旅をしましょうね」

「おう。すぐに戻ってくるから待っててな」


 プリムが手を差し出したので、俺はその手を握る。

 さっさと用事を済ませて帰ろう。俺はそう思った。


「うぅぅ~……ひめさまぁ」


 さて、行く前にアイシェラを治してやろうかな。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。プリムとアイシェラを連れて港へ。

 ギーシュに会った小屋に入ると、中には少年と……おいおい、また女騎士かよ。


「やぁ、来てくれたね」

「おう。で、そっちが?」

「うん。ボクの弟のニーアと、聖騎士のレイチェルだ」


 見た感じ、おどおどした少年。

 栗色のサラサラな髪に女みたいな容姿だ。背も低いし華奢な感じ……まぁ六歳だしこんなもんか。

 女騎士はアイシェラみたいな感じ。金髪のポニーテールにキリっとした目、鎧を着ているけど……いや、脱げよそれ。

 ニーアという少年は俺に頭を下げる。


「は、はじめまして。ぼくはニーアと申します。あの、とっても強い人が護衛してくれるって聞いて……よ、よろしくおねがいします!」

「おう。俺はフレア、よろしくな」

「は、はい!」

「で、あんたは?」


 女騎士を見ると、スッと目を細めた……なんか嫌な予感。


「ふん。天使様を倒したと聞いたからどんな者かと思えば、まだ子供ではないか」

「うわー……この感じ」

「なんだ貴様……」

「いや、アイシェラみたいだなーって」

「黙れ。貴様のような得体の知れない奴を警戒するのは当然だ」

「いや、得体の知れないって……護衛のことは話してると思うけど」


 金髪ポニテ女騎士はアイシェラを見て手を差し出す。


「聖騎士アイシェラ殿とお見受けする。私はレイチェル……あなたのお噂はかねがね」

「これはご丁寧に。よろしく頼む、レイチェル殿」

「おーい、よろしくすんのは俺だろ?」

「「黙れ」」

「…………」


 早くも疲れてきた……こんな奴と一緒に旅すんのかよ。

 すると、ニーアがくいくいと俺の袖を引っ張る。


「あ、あの。ぼく……」

「ん?」

「ぼく、がんばります!」

「え、あ、うん」


 ニーアはぐっと拳を握る。よくわからんがやる気満々のようだ。

 すると、レイチェルが二ーアに近づく。




「はぁ、はぁ……ぼ、坊ちゃまかわえぇ……お、おねえさん、鼻血でそう!! ふんす、ふんす!!」

「は?」

「れ、レイチェルぅ……息が荒いよぉ、ふぇぇ」

「ふぇぇぇーーーっ!? な、ナマでふぇぇキターーーーーーッ!!」

「…………」




 レイチェルは、アイシェラと同類だった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ギーシュの手配した船に乗り、俺とシラヌイ、ニーアとレイチェルは出発した。

 プリムが手を振るのを見えなくなるまで見る……なんか寂しいね。


「あの、フレアさん」

「ん、どした?」

「ぼく、小さくて弱っちいです。皿洗いくらいしかできないです。でも、がんばりますので、これからよろしくおねがいします!」

「お、おお。さっきも聞いたけど」

「黙れ。坊ちゃまのお言葉は一言一句胸に刻め!! ふぁぁ、坊ちゃまかわええ!!」

「あんた、アイシェラと同じ匂いがするよ……」

『わぅん!!』

「わわ、なんでしょう?」


 シラヌイがニーアの周囲をくるくる回り、ニーアがシラヌイの頭を撫でるとシラヌイはニーアをペロペロ舐めはじめた。


「あははっ、く、くすぐったいよ」

『わぅぅん!』

「坊ちゃまとペロペロプレイ…………よし今夜やるか」

「あんたも頭おかしいんだなぁ」


 レイチェルはうんうん頷いている……こいつキモイ。

 ニーアはともかく、レイチェルは気持ち悪い。

 ニーアのために虫歯と口内炎の呪いの準備でもしておくか。


「さーて。ブルーサファイア王国に行った早々に、レッドルビー王国に行くことになるとは」


 船の上で、俺は海を眺める。

 潮風が髪を撫で、遠ざかるブルーサファイア王国から、新たな地であるレッドルビー王国に思いを馳せる。

 シラヌイと遊ぶニーアと、ニーアを見てハァハァする女騎士レイチェル。

 プリムのために、この二人と一緒にレッドルビー王国へ。


 俺は、まだ知らない。

 『砂漠』の王国レッドルビーに待ち受けるなにかを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
[一言] うーん、第七皇子すごく良い人に見えるけどなぁ… 良い人すぎてあまり頼りたくなかったのか 良い人のふりして天使を倒せる戦力を国から穏便に追い出して帰り道は用意してないとか? 今後が気に…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ