表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十三章・至高の三神と地獄炎の七大魔王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

368/395

魔法使いの復讐

 ドビエルは、神や天使たちに邪魔をされないように浮遊神殿から離れて『量産型天使』を生み出していた。

 漆黒の試験管から生み出される黒い『モヤ』が、量産型天使『夜天光』となり世界中へ飛んでいく。

 それらを神器に任せ、ドビエルは考える。


「世界浄化後、私は神のために何ができる? 新人類……神が生み出す新たな人類。そして天使……フ、フフフ。聖天使教会ではない、新たな組織を作るのもいい。フハハハハハッ!! アルデバロン、ジブリールとガブリエルなんかより、私の方が神に貢献している。クハハハハッ!! 私が、天使と新人類を導く新たな天使となり、この世界を、世界を……く、ハハハハハハッ!!」


 妄想が止まらない。 

 かつては、魔法研究者として名を馳せた『夜』の天使ドビエル。

 今は、目の前に現れた神を妄信する、憐れな天使でしかない。

 ドビエルは浮遊神殿を見上げ、笑みを浮かべた。


「神よ、我が神よ!! 我が名はドビエル。神の使途にして偉大なる───」


 と、ここでドビエルに向かって『炎』が飛んできた。

 量産型天使が間に入り防御、夜天光は燃え尽きる。

 ドビエルは、じろりと下を睨んだ。


「───……なんだ、貴様ら?」

「妄想はおしまい。あなたは、ここで死ぬ」

「や、こんにちは」


 杖を構えた魔女と、一般人のような男性だった。

 魔女は殺気を飛ばし、男性はニコニコしている。

 裏切りの堕天使アブディエルと、コクマエルだ。

 ドビエルは、首を傾げた。


「はて? どなたですかな?」

「…………私は、アブディエル」

「天使? はて、覚えがないですな」

「…………」

「アブディエル、アブディエル。落ち着いて落ち着いて」


 青筋を浮かべるアブディエルの肩を叩くコクマエル。

 コクマエルは、両手を広げて笑った。


「や、ドビエル。元気だったかい」

「あなたは見覚えがありますね。確か、コクマエル」

「見覚えがあるって、酷いな。ボク、キミよりも頭いいし、アルデバロンの右腕でもあったんだよ?」

「ふむ?……そうでしたかな? 申し訳ないが、過去にはこだわらないので」

「あっはっは。なるほどねぇ……だから馬鹿なんだね」

「……はい?」


 馬鹿。

 今、馬鹿と言った?

 ドビエルは眼鏡を外し、ハンカチで丁寧に拭いてかけ直す。

 そして、咳ばらいをして言う。


「今、なんと?」

「だから、馬鹿って言ったんだ」

「…………ふむ」

「わかりやすく説明してあげるよ」


 コクマは翼を広げ、ドビエルと同じ目線まで飛ぶ。

 ドビエルを真正面から見て、やはり笑顔だった。


「きみは今、何を見ている?」

「知れたこと。神が作る新しい世界。そして、未来」

「そうだね。未来は確かに大事だ。先の予定を立てることは楽しいし、まだ見えない未来を想像するのは実にワクワクする。でもね、未来ばかりみちゃダメなんだよ」

「ほう? 過ぎ去った過去に想いを馳せろとでも?」

「たまには思い出に浸るのも大事だ。でも、過去の積み重ねがあって未来がある。過去があるからこそ、今の自分がある。ドビエル、きみは過去に成し遂げた偉業を忘れたのかい?」

「我が偉業など数え切れぬほどありますね。まぁ、どうでもいいこと。所詮は過去、今、この瞬間には関係がありませんので」

「そうかい……」

「あなたは、過去に囚われているので?」

「さぁね、でも……ないがしろにしていい過去なんてないと思うし、世界の未来が明るければいいかなとは思うよ」

「そうですか。で……あなたは、何が言いたいのですか?」

「あはは。そうだよね、まるで『時間稼ぎ』してるみたいだ」

「…………───!!」


 ドビエルは、下を見た。

 いない。

 コクマエルと共にいた天使が、消えていた。


「貴様ッ!!」

「ドビエル。最後に一つ……キミさ、熱くなったり語るに落ちると周りが見えなくなるクセ、治ってなかったのは致命的だったよ」

「なに───お、ごばがはぁぁぁっ!?」


 ドビエルの身体に無数の穴が空き、背後にアブディエルがスウッと浮かび上がる。

 透明化の魔法。

 残り少ないアブディエルの魔力を、『透明化』と『風の槍』につぎ込んだのだ。

 風の槍はドビエルの全身を貫いていた。

 ドビエルは、地上に落下……アブディエルが、冷たい目で見下ろしている。


「私は、アブディエル」

「ハ、ハ、ハ……??」

「魔法……お前に、研究の全てを奪われた天使、アブディエルだ!!」

「………………………………ぁ」


 ドビエルの眼が見開かれ、ゴボゴボと血を吐いた。

 ようやく思い出したのか、口がパクパク動く。

 アブディエルは、冷たい眼差しのまま杖を向ける。


「復讐は何も生まない。虚しいだけ。意味がない……そんなことを言う奴がいるけど、私は違う」

「ぁ、ぁ、ぁ」

「最高の気分。ドビエル、私の怒り……思い知れ!!」


 アブディエルの魔力全てを注ぎ込んだ『火炎』魔法が、ドビエルを焼き尽くした。


 ◇◇◇◇◇◇


 ドビエルが灰になり、量産型天使全てが消えた。


「…………」


 アブディエルの亜神器が地面に落ち、消える。

 アブディエルも、崩れ落ちた。


「どう? 復讐を果たした気分は」

「……不思議と、何もないわ」

「それが復讐だよ。やっぱり、復讐は何も生まない。意味なんてないんだ」

「…………」

「それでも復讐をするのはやっぱり───満たされると信じてるからかな」

「…………」

「とりあえず、お疲れ様。量産型天使は全て消えた。世界中に飛んでった量産型天使も消えただろう。アブディエル……きみは、人間たちを救ったんだよ」

「……別に、どうでもいい」

「そうだね。でも、お疲れ様」


 コクマエルはニッコリ笑い、アブディエルを近くに木に寄りかからせる。

 そして、コクマエルも座り、カバンから水のボトルを取り出した。


「後は、フレアくんたちの仕事だ。ぼくたちは、全てが終わった後のことでも考えながら、ゆっくり待とうじゃないか」

「…………」


 そう言って、コクマエルは水のボトルを一気に飲み干した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ