世界に散らばる悪意、そして希望③
イエロートパーズ王国は、大混乱だった。
漆黒の天使による襲撃。対話を試みるが失敗……そして、蹂躙。
逃げ惑う住人たち。戦うという選択肢がない魔法使いたち。
このまま、イエロートパーズ王国は滅びてしまうのか。
「うぉぉぉぉぉぉっ!!」
だが、一人の青年が剣に雷を纏わせ、夜天光に斬りかかる。
夜天光は漆黒の槍で受け止める。だが、青年の剣が輝き、夜天光を感電させる。
その隙に、青年は夜天光を斬り裂いた。
消滅する夜天光。そして、肩で息をする青年。
「はぁ、はぁ……このイエロートパーズ王国は、私が守る!!」
青年の名は、フリオニール。
魔法学園に通う、魔法剣士見習いだ。
天使の襲撃に誰よりも早く反応し、戦いを選択した青年でもあった。
フリオニールの傍に、仲間が駆け寄る。
「おぉ~い!! 大丈夫かい!?」
「一人で行くなんて無茶ですよ!!」
「大丈夫。思った通りだ……私の剣でも倒せる!! いくら天使様でも、何の罪もない街の人たちに襲い掛かるなんて許せない!!」
フリオニールは剣を構える。
二人の仲間は互いに頷き、それぞれ拳と杖を構えた。
拳を構えたのはレイラ、杖を構えたぽっちゃりめの青年はラモン。フリオニールと同じく、魔法学園に通う生徒だ。
「キミたち……いいのか?」
「ええ。ここで引いたら、カグヤさんに笑われちゃうわ!!」
「フレアくんにもね」
「レイラ、ラモン……よし!! 一緒に戦うぞ!!」
夜天光は、まだまだ上空を飛んでいる。
すると、どこからともなく魔法が放たれ、夜天光たちに命中した。
フリオニールたちの背後に、大勢の魔法使いたちがいたのである。
「恐れるな!! イエロートパーズ王国を守るぞ!!」
「こ、怖くない、怖くないぞ!!」
「て、天使様……うう、負けるか!!」
魔法使いたちが、意志を持ち立ち上がった。
フリオニールは笑みを浮かべ、剣の柄を強く握る。
「フレアくん、カグヤさん……見ててくれ!!」
◇◇◇◇◇◇
パープルアメジスト王国にも夜天光は現れたが、こちらはイエロートパーズ王国とは違ってすでに戦闘が始まっていた。
それもそのはず。量産型天使では、ゴーレムには勝てない。
モルガン整備工場で作られた最新型の『実装型』ゴーレムを装備したゴーレムマスターのケインは、全身赤の鎧をガシャガシャさせながら、上空を飛ぶ夜天光を『サンダーバレット』という雷の弾丸で撃ち落としていた。
「すっげぇな、この量産を前提にした最新の実装型ゴーレム」
ケインの仲間であるアルコは青、エミリーは緑色のゴーレムを纏っている。
両手に砲身があり、全身を覆う鎧はどこまでもゴツイ。女の子であるアルコとエミリーには、デザイン的に少しだけ不満があった。
だが、モルガン整備工場専属のゴーレムマスターとなった今、余計なことは言わない。
エミリーは、夜天光を撃ち落としながら言う。
「量産系実装型ゴーレム『ベガ』、『ベテルギウス』、『プロキオン』ね。近接、中距離、遠距離の三タイプから選べる実装型。カスタムパーツも豊富で、自分だけの実装型を作れるっていう、モルガン整備工場の最新作よ」
「メイカさん、本当に天才ですよね……」
周りを見ると、他のゴーレムマスターたちも自分たちのゴーレムで、夜天光と戦っていた。
強大な力であるゴーレムが、夜天光を倒した。それだけで自信となったのだろう。ゴーレムマスターたちは、誰も天使を恐れていない。
すると、モルガン整備工場からメガネを掛けた男が出てきた。
「はーっはっはっは!! さすが我の設計したゴーレム!! さぁ、天使たちを一掃するのだ!!」
「に、兄さん!! まったくもう、危ないから下がって!!」
モルガン整備工場のモルガンと、妹で技師のメイカだ。
ゴーレムバトル大会で優勝したことで、その才能と技術を認められたメイカとモルガン。若い二人はパープルアメジスト王国を支えていく技術者となるだろう、そう言われていた。
モルガンは、足下に転がる金属製の球体こと、ゴーレムの『キュータマ33号』の上に立つ。
「天使など怖くない!! 我が友人たちのがよっぽど強かったぞ!!」
「確かに。兄さんの言う通りですね」
メイカの傍に、真紅の犬型ゴーレム『シラヌイ参型』と、緑色の狼型ゴーレム『カミカゼ丸』が並び立つ。メイカは二頭を撫で、力強く言った。
「あの人たちに、この子たちを見せてあげたいので……ここは切り抜けさせていただきます!!」
二頭のゴーレムは、唸り声を上げて夜天光に襲い掛かった。




