BOSS・十三神剣アメン・ラー①/神の剣
黄金の地獄炎を纏った俺は、浮遊神殿に到着。
炎を解除して着地……目の前に、三つの玉座。そして、神が三体。
「来たね、フレア」
一人は、俺と同い年くらいの男。
白と黄金を基調とした礼服みたいなのを着ている。背後には、異なる形状の剣が十三本浮かんでいた。
アメン・ラー……先生たちを生き返らせた、神の一人。
玉座から立ち上がると、自分の顔を押さえる。
「キミを目の前にすると、この火傷が疼くんだよね……」
「安心しろよ。今度は全身火傷にしてやるからよ」
「ふん……」
アメン・ラーの顔には、俺が付けた火傷の跡がある。
サラサラの金髪をかき上げ、憎々し気に俺を睨む。
そして、フンと鼻を鳴らし、ゆっくりと浮かび上がった。
浮かび上がると、背中に十二枚の翼が広がり、十三本の剣がクルクル回転する。
「トリウィア、黒勾玉。手出しは無用だよ」
「ええ、わかったわ」
『───、───』
トリウィア、竪琴を持った女。
黒勾玉……こいつはよくわからん。ただの黒い岩石の集合体にしか見えないけど、アメン・ラーの問いかけに岩がブルブル震えていた。
俺は構えを取り、火乃加具土命Spec2を装備。全身を赤く燃やす。
「焼き鳥、あいつを燃やしたいだろ?」
『わかってんじゃねぇか、相棒……!!』
火乃加具土命Spec2は、俺の意志と関係なくメラメラ燃えていた。
こいつ、アメン・ラーにめっちゃキレてたからな。
「ククク……フレア、ボクが何の策もなしに、キミと戦うと思うかい?」
「知らね。全部燃やすからいいけど」
「まぁ───やればわかるさ」
と───アメン・ラーの剣の一本が燃える。
「『紅の剣』」
「え? ミカエル?」
剣は赤く燃え───この炎、まさか。
アメン・ラーが剣を掴むと、恐ろしい速度で迫ってきた。
「───ッ!?」
「おっ」
横薙ぎ。
今まで会った誰よりも速かった。
なんとか躱せたが、俺の背中に冷や汗が流れる。
「『風の剣』、『氷の剣』」
「な、まさか」
アメン・ラーは赤の剣を離し、風と氷を纏った剣を両手に持ち斬りかかってくる。
俺は火乃加具土命Spec2で風の剣を、右足を上げフリズスキャルヴ・カテナSpec2で氷の剣を受け止めた。驚いたのは、風の剣が火乃加具土命の炎を、氷の剣がフリズスキャルヴの氷を押し返したことだ。
強い……俺は目を見開く。
「『雷の剣』、『鋼の剣』、『操の剣」
鋼の剣がドロドロした鋼を撒き散らし、無数の剣が生まれた。
そこに、雷の剣から発せられた雷で帯電、俺に向かって飛んでくる。どういう原理なのか、複雑な軌道で……しかも、速いし!!
「『大地の爪Spec2』!! 流の型、『流転掌』!!」
飛んでくる帯電剣を、魔神器を装備した両手で受け流す。素手だったら感電してた……が、僅かにびりっと痺れてしまう。
俺は、全ての剣を捌き言った。
「て、天使の剣……!?」
「正解。聖天使教会十二使徒の能力は、ボクの『十三神剣』を模して与えた物だよ」
「え、十三……十二使徒って十二人じゃ」
「そう。そして、これがキミの弱点」
「え?」
アメン・ラーは、十三本の中で一番立派な両手剣を目の前へ。
その剣は、『虹色』の炎を帯びていた。
「『神世ノ那々夜』」
「───」
美しい剣だった。
虹色に輝く剣。
だが、それ以上に───全身から凍り付くような汗、寒気を感じた。
『相棒!! あれはアメン・ラーが持つ本来の剣だ!! あの炎は……相棒!? おい!!』
「魅入られたね。無理もない───喰らえ」
アメン・ラーが剣を振るうと、虹色の炎が俺に向かって飛んできた。
炎なら───そう思った。
「───ッっぎ、あがぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァーーーーーーッ!?」
俺の身体が、燃えた。
久しく感じていない熱。腕が、足が、火傷する。
俺は虹色の炎から脱出するように地面を転がる。
アメン・ラーが、笑っていた。
「あーっはっはっは!! やっぱりねぇ」
『どういうことだ……!!』
「耐性だよ」
アメン・ラーは、火傷で動けない俺に言う。
「きみの中にある魔王宝珠は八つ。火乃加具土命たちと、零式創世炎の魔王宝珠だ。自然界の炎はもちろん効かないし、地獄炎も効かない……でもね、それはあくまで火乃加具土命たちの炎が効かないってだけ。ボク、トリウィア、黒勾玉の炎には耐性がない。零式創世炎はあくまで、地獄炎に変換するだけの炎のだしね……その様子からして、考えは当たっていたようだ」
「ぐ、あ……ッ」
俺は脂汗が止まらなかった。
久しく感じる火傷の痛み。腕、背中に火傷を負ってしまった。
零式創世炎の弱点。
俺は、アメン・ラーたちの炎による適性を持っていない。あくまで七つの地獄炎に耐え抜き、魔王宝珠をその身に宿しているからこそ、地獄炎で燃えないのだ。自然界の炎は当然通用しない。
だが、それが神の炎となれば別。
結果は今の通り……俺の身体は、焼けた。
俺は立ち上がる。
「どうだい? 久しぶりの火傷は」
「熱いし、ヒリヒリするし、ピリピリするし、チクチクする。痛くてたまんねーよ……」
「それが普通さ。さて……続き、やろうか」
十二本の剣が様々な属性を纏い、アメン・ラーの持つ剣に虹色の炎が燃える。
俺は全ての魔神器を身に纏い、構えを取る。
「くっ……」
『相棒、気を付けろ……アメン・ラーは、これからが本気のようだぜ』
やっぱり、神の名前は伊達じゃないってことか、ちくしょう!!




