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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十三章・至高の三神と地獄炎の七大魔王

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この世界で最強の天使

 俺とミカエルは、聖天使教会の上空に浮かぶ『浮遊神殿』へ向かう。

 そういや、二人で並んで飛ぶのなんて初めてだな。


「あんたと並んで飛ぶ日が来るなんてね」

「同じこと考えてた」

「そ……ふふっ」


 ミカエルは笑った。

 俺もなんとなく笑ってしまった。

 そして、真下を見る。


「お、ダニエルが頑張ってるな」

「……うそ、ラティエル? あの子、あんなに強かったの?」

「ちょっとだけ見たけど、覚悟を決めたような感じだったぞ」

「あの子……戦いが嫌いでね、守ってばかりだったの。十二使徒で最弱なんて言われてたけど」

「そうは見えないけどな」


 ラティエルは、巨大な樹木をいくつも生やして戦っていた。

 階梯天使たちが接近しようとするが、樹木の壁に弾き飛ばされたり、巨大な植物から種が大砲のように発射されて天使たちを薙ぎ払っていた。

 

「あいつら、やるじゃん───」

「───ミカエル!!」

「っ!!」


 下に気を取られて判断が遅れた。

 俺たちの真上から、巨大な『雷』が落ちてきた。

 俺は瞬間的に、背中の『翼』から第五地獄炎を燃やす。


「第五地獄炎、『甲蟲ダンゴロ』!!」


 緑色のダンゴ虫。

 風の塊であるダンゴ虫を上空に召喚、雷を受け止めた。

 俺とミカエルはバランスを崩し地上へ。

 着地するとそこにいたのは……四人の天使だった。


「初めまして、だな」

「……あんたが、今の雷を?」

「そうだ」


 なんというか、威厳たっぷり……王様みたいな天使だった。

 全身がバチバチ帯電している。分厚く装飾の施されたローブを纏っているが、鍛え抜かれた強靭な肉体が隠れているとわかった。こいつ……かなり強い。

 そして、よぼよぼのおばあちゃんが二人と、どこか根暗そうな黒いローブを着た男だ。

 まず、雷親父が俺に言う。


「初めまして。地獄炎の呪術師ヴァルフレア。私は、聖天使協会十二使徒筆頭、『雷』のアルデバロン」

「天使のお偉いさんか……」


 そして、よぼよぼのおばあちゃんが二人……よく見るとそっくりだな。


「あたしはジブリール。ふん、いい顔した坊ちゃんだね」

「あたしはガブリエル……こんな形で会いたくなかったよ」


 おばあちゃんたちは、どこか乗り気じゃなさそうな気がする。

 そして、根暗そうな男が前に出る。


「我が名はサラカエル。黒天使の長にして最強……ククク」


 サラカエルは、手から『黒い雷』をバチバチさせる。

 四人とも、かなりの使い手だ。間違いなくこれまで出会った天使の誰よりも強い。

 すると、俺の肩を叩きミカエルが言う。


「こいつらが聖天使協会の最強戦力。こいつらさえ乗り越えたら、あとは神だけよ」

「そうか。じゃあ、さっさとやっつけるか」


 両手の指をパキパキ鳴らすと、アルデバロンが言う。


「ミカエル。貴様はそちらに付くのだな?」

「当然。ってかアルデバロン……あんたがそっちに付く方が意外。ジブリール、あんたも……人間のこと、そんなに嫌ってなかったじゃない」

「……歳を取るとね、若いころみたいに冒険できないのさ。あたしらみたいにね」

「……どくつもり、ないの?」


 ミカエルが四人を睨む。

 すると、サラカエルが笑いだした。


「く、ははは……ハーッハッハハ!! ミカエル、貴様は聖天使協会を、神を裏切った!! 貴様を始末する理由がある!! どく、だと? 貴様こそ、逃げる準備でもしたらどうだ?」

「あんた馬鹿? あたしが、あんた程度」


 と───ここで、サラカエルの天使の翼が広がる。

 頭上には、輝く輪が現れた。

 明らかに、圧が増した。


「今の我らは、神の加護を得ている。たかが天使の貴様に勝ち目はない!!」

「…………そういうことだ」

「悪いね、ミカエル」

「すまないね……」


 サラカエルだけじゃない。

 アルデバロン、ジブリール、ガブリエルもまた、翼を広げると頭上に輝く輪が出現した。

 さすがに、これはヤバい。

 

「ガブリエル、やるよ」

「ああ。これをやるのも最後かねぇ……」


 二人の手に現れたのは、色違いの剣。

 水色と、群青色の夫婦剣だ。

 それらを交差する。


「共鳴せよ、『水鏡ノ剣(ミカガミノツルギ)(ミズ)』」

「心合わせ、『水鏡ノ剣(ミカガミノツルギ)(イヤシ)』」


 神器だ。

 ミカエルの持つ赤い剣と同じ、神様が作った武器。

 二人は剣を合わせ、互いに向き合い───お互いを突き刺した。


「『水の聖天使(ジブリール)流麗艶美(アマデトワール)』」

「『癒の堕天使(ガブリエル)麗美妖艶(オラトリオ)』」


 そして、どこからともなく現れた水が二人を包み込む。

 さらに、キラキラと水が光りだし、一気に弾けた。


「……マジで?」


 驚いた。

 そこにいたのは、双子の美女。

 夫婦剣を手にした、絶世の美女だった。

 よぼよぼのおばあちゃんが、若返った。


「久しぶりに、本気を出そうか」

「ふふ、若いっていいねぇ」


 冗談抜きで、強い。

 そして、アルデバロンがローブを脱ぎ棄てる。

 やっぱりムキムキだった。さらに、両手両足にゴツイ籠手とレガースが装備される。


「轟け、『雷帝(らいてい)』……オレも、本気を出そう」

「ふん……煌めけ、『黒雷(こくらい)』……兄者、口調が昔に戻ってるぞ?」


 サラカエルも、巨大な杖を手にした。

 俺は拳を構え、全身を黄金の炎で包む───と。


「フレア」

「ミカエル、こいつらかなりヤバい。本気で───」

 

 と……ミカエルが、俺の頬にキスをした。

 そして、俺をまっすぐ見て笑う。


「ここは、あたしに任せて行きなさい」

「……は?」

「だから、任せろって言ってんの!!」


 ミカエルは俺の背中をバシッと叩く。

 悪いけど、冗談には付き合えない。


「あの四人、お前より強いぞ」

「そうね。でも、あたしが負けるわけないじゃない」

「……」

「死にもしないわ」

「でも……」

「あんたは、やるべきことがあるでしょ?」


 ミカエルは上空に浮かぶ『浮遊神殿』を見上げた。

 ミカエルの決意は固い。

 こいつは、ここで命を賭けて戦うつもりだ。

 だから……俺はミカエルを抱きしめた。


「終わったら、また」

「ええ」


 それだけ言って、俺は全力で上空に飛んだ。


 ◇◇◇◇◇◇


 残されたミカエルは、翼を広げてゆっくり飛び、アルデバロンたちの前へ。


「あんたらの相手はあたしよ」

「……正気か? 今の我らの力「あーあー、そういうのいいから」


 アルデバロンの声を遮り、真紅の剣を掲げる。

 すると、ガブリエルとジブリールが少しだけ微笑む。


「恋する天使、かい……」

「カワイイねぇ」

「そうね。あたしも驚いてる。まさか、こんな気持ちになるなんて」


 ミカエルは認めた。

 胸から湧き上がる思いが、炎となって自分を燃やす。

 そして、炎に包まれ、小さな『神玉』が目の前に。


『ミカエルお姉ちゃん』

「ええ、行くわよ、ロシエル」


 それを飲み込むと───炎が爆発的に燃え上がる。

 神に匹敵する業火が、ミカエルの全身を、翼を、髪を燃やす。

 それは、あまりにも神々しい姿だった。


「『神炎天使灼熱態ブレイズ・オブ・サタナエル』」


 ミカエルは、剣を四人へ向ける。


「あたしがあんたらを止めるんじゃない。あんたらが死なないために、あたしを止めるのよ」


 この世界で最強の天使は、真っ赤に燃えるような笑みを浮かべた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
[良い点] ミカエルかっこよすぎるよ……イケメン(!?)すぎるよ……。 彼女とアルデバロン様たちはどんな戦いを繰り広げるんだろう……。これからの展開から目が離せませんね! [一言] フレアくんは顔がい…
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