神々の黄昏/それぞれの戦い
それは、突然の出来事だった。
「───……む!?」
「兄者、どうし───」
最初に気付いたのは、アルデバロン。
そして、サラカエル。ガブリエル、ジブリールと続く。
アルデバロンは上空を見上げ───『光』を見た。
「あれは、まさか……」
「おお……」
「地獄の、業火……」
「こりゃまぁ、なんとも……」
聖天使教会最強の四人が、見惚れるほどの美しさだった。
七つの魔神器を身に纏い、黄金の炎を燃え上がらせ、ヴァルフレアが太陽を背に飛んできたのである。
あまりにも、あまりにも……神々しい姿だった。
まるで、神。
「来たね、フレア」
だが、自分たちの信じる神が不敵に微笑んだのを感じた四人は、すぐに意識を切り替える。
迎え撃つべき『敵』として、フレアを消耗させるべく闘う。
フレアが着地し、黄金の炎を燃え上がらせた。
全ての量産型天使、階梯天使たちが身構える中、フレアは言う。
決して大声ではない。ポツリと呟いただけだが、それはこの場にいる全ての天使たちに聞こえた。
「一度だけ言う。邪魔しないなら何もしない。でも……邪魔すんなら、焼き尽くす」
殺気。闘気。地獄炎。
それらすべての『意志』が、全ての天使たちに叩き付けられる。
階梯天使のモーリエが、ガタガタ震えながら泣きだした。
冷や汗を流しまくる階梯天使のマルシエルが、叫ぶ。
「ひ、ヒィィィィィィッ!? ば、バケモノだぁぁァァァァァァッ!?」
「わ、我は、我は……もう、奴とは戦いたくないのである!!」
二人は逃げ出した。が……上空から落ちてきた『雷』に撃たれ、黒焦げになり倒れた。
それは、人差し指を突き付けるアルデバロン。
アルデバロンは、全力で叫んだ。
「臆するな!! 敵は一人だけ!! 我らの背後にいる至高の存在を忘れたか!? 天使として、この世界の秩序を司る存在として、我らは負けん!!」
「「「「「お、オォォォォォォ───ッ!!」」」」」
天使を鼓舞するアルデバロン。
サラカエルはさりげなく舌打ちした。
カリスマ性において、アルデバロンに勝てる天使など存在しない。
すると、聖天使教会本部の最上層が開き、金属でできた天使の羽が開いた。
上層が分離し、浮き上がる。
「おお……分離した」
フレアが感心したように言う。
そして、分離した上層階がさらに開き、三つの玉座に座る三神がいた。
「やぁ、フレア」
「お前……」
「きみにやられた火傷、すっごく疼くんだよね」
「先生たち、どこだ?」
「先生? ああ、あの呪術師たちね。あいつらなら『常世のはざま』にいるよ。ボクらのいた世界の守護者としてね」
アメン・ラーが背後を指さすと、空間に黒い穴が空いているのが見えた。
フレアは、首をコキっと鳴らし、手首をスナップさせる。
「じゃあ、そこに行くよ。お前たちをブチのめしてな」
構えを取り、黄金の炎を燃やし、四肢に力を漲らせる。
「呪闘流甲種第三級呪術師ヴァルフレア。お前ら全員、地獄の業火で呪ってやるよ!!」
◇◇◇◇◇◇
「ついに、この時がきた」
「ぜんぶ、ぜんぶ壊してやる」
「私から全てを奪った天使、ドビエル……!!」
「くらえ」
「これが私の」
「恨み、怒り、悲しみ、嘆き……全てを詰め込んだ、最強魔法」
「私の名前は、アブディエル」
「『裏切りの八堕天使』の一人」
「ぜんぶ、全部……壊れてしまえ!!」
◇◇◇◇◇◇
いざ、フレアが走り出そうとした瞬間───上空に、巨大な魔方陣が展開した。
「え、なんだこれ?」
フレアが止まる。
天使たちが上空を見上げる。
そして、ドビエルも見上げた。
「これは……ま、魔方陣? なぜ? 誰が? おい!! あれは何───」
「マズいね───ジブリール!!」
「わかってる!!」
ガブリエル、ジブリールが魔法障壁を展開した。
が、すでに遅かった。
「『魔の堕天使・究極魔法』!!」
魔方陣から、巨大な『光球』が生み出され───量産型天使、聖天使教会本部、階梯天使を巻き込む形で落下した。
量産型天使のほとんどは蒸発。第五階梯天使より下の天使は黒焦げに、それ以上の天使は魔法障壁を展開し、かろうじて防御した。
一瞬にして、聖天使教会周辺が更地となる。
防御に成功したドビエルは、ずり落ちる眼鏡を直しながら叫んだ。
「な、なんだ今のは!! ま、魔法だと!? 神レベルの魔法を、いきなり、あんな……どういうことだ!!───はっ、我らが神!!」
上空を見上げると、『浮遊神殿』は無事だった。
トリウィアが、竪琴を鳴らしながら感心する。
「やるじゃない。今の、見た?」
「ああ。天使一人でこれだけの出力、よくやるね」
「でも、一発限りみたいね。まぁ当然でしょうけど」
「やれやれ、だいぶ減っちゃったね。ま、別にいいけどね」
『───、───』
トリウィア、アメン・ラー、黒勾玉が感心していた。
◇◇◇◇◇◇
「おい、アブディエル……おい!!」
「聞こえてる……耳元で怒鳴らないで」
「すっげぇぞ!! 量産型天使、ほとんど消えちまった。あとは階梯天使たちだけ……いけるんじゃねぇか!?」
「だから、怒鳴らないで……」
アブディエルを支えるダニエルは興奮していた。
アブディエルは、うっとおしそうにダニエルから離れる。
真っ青で、大汗を掻き、肩で息をしていた。
これだけの魔法を使い、空っぽだった。
「後は、おねがいね」
「ああ。へへ、久しぶりに……マジでやってやる」
ダニエルは拳をコキコキ鳴らす。
ラティエルも、胸に手を当てて祈っていた。
「わたしも、がんばる」
「じゃ、ぼくはアブディエルを看病してるよ。がんばって!!」
「……まぁいいけどよ。じゃ、行こうぜラティエル、フレアの援護だ!!」
「はい!!」
二人は飛び出し、聖天使教会へ向かって走り出した。
「さて、最後の戦いが始まるねぇ。どういう結末になるか、ぼくにも予想できないよ」
「……ドビエルは、生きてる?」
「んー、生きてるね」
「じゃあ……トドメ、刺さなきゃ」
「あはは。まぁ、それくらいなら手を貸そうか」
アブディエル、コクマエルも、戦いへ向かう。




