出発
「オレとラティエル、アブディエルとコクマエル。あと……そっちのハクレンって子は、別ルートから聖天使教会へ向かう。先行して様子を探るから、先走るなよ」
と、ダニエルが真面目な顔で言う。そういうの似合わないから変な感じ。
つまり、二つのルートで聖天使教会へ向かう。
ダニエルたちは、天使の翼を広げ飛んでいった。
俺、プリム、アイシェラ、カグヤ、ナキ、ミカエル。こっちは正面から聖天使教会へ乗り込むルートだな。
すると、アイシェラが顔を青くする。
「今更だが、真正面から乗り込むのか……」
「あ、乗り込むのは俺な。お前らは雑魚掃除頼む。神様ぶん殴って、先生たちとケリ付ける」
「ちょ、アンタばかり楽しそうじゃん!!」
「いいから頼むって。それと、十二使徒はまだ残ってる。お前も楽しめると思うぞ」
「む……まぁ、いいか」
なんとかカグヤを納得させ、俺たちはホワイトパール王国を出発した。
目的地は、聖天使教会。
そこに、残った全ての天使と神様、そして先生たちがいる。
「にゃん。うちら、大丈夫かにゃ……」
「大丈夫です! 怪我をしたらわたしが治しますから!」
「ごろごろごろ……って、撫でんにゃ!」
プリム、隙あらばクロネを撫でるようになった。
クロネも喉を鳴らすし、まんざらでもなさそうに見える。
「とりあえず、出発するぞ」
馬車に乗り込み、出発した。
いつも通りだ。
町に入って、観光したり厄介ごとに巻き込まれたり、そして最後は笑顔で町を出て行く。
それの繰り返し。
今回も同じだ。きっと最後は笑っていられる。
◇◇◇◇◇◇
馬車で進み、暗くなる前に野営。
竈を組み、テントを建てて、町で買った食材でクロネが料理。
みんなでワイワイしながら食べ、片付けをして、女性陣がシラヌイを連れて水浴び、ナキは煙草を吸いながら俺とカードで遊ぶ。
水浴びから戻った女性陣を混ぜてカードで遊び、眠くなったらテントで寝る。
夜警は、俺とカグヤ。
カグヤとカードをやり、飽きたのでお茶を飲みながら焚火に当たっていた。
「なんか、いつも通りね」
「そりゃそうだ。やることはいつもと変わらん」
「そっか。アンタにとっちゃ、いつも通りなのね」
「ああ。俺の冒険のイベントみたいなもんだ。神様殴るのも、先生たちを解放するのも……まだまだ続く冒険の、ほんの一歩にすぎない」
「そう……ってか、もう七つの大陸回っちゃったじゃん」
「アホ。ただ回っただけだろ? それに、まだ挑戦してないダンジョンとかあるし、美味いモンだってまだまだいっぱいある。あと十周くらいしないとな」
「ブラックオニキスとかグリーンエメラルドにも行く気……?」
「当たり前だ。特にブラックオニキス、ぜんぜん遊べなかったしな」
「あそこは遊ぶ場所じゃないでしょ……アタシ、死にかけたんだけど」
カグヤは俺の隣に座り、肩を寄せてくる……なんか近いな。
「ね、アタシも一緒でしょ?」
「当たり前だろ。それに、どうせ付いてくるだろ?」
「うん。ずっと一緒」
カグヤはにっこり笑い、俺の肩に頭を乗せる。
「フレア」
「ん?」
「好きよ」
「おお、俺も好きだぞ」
「……ばーか」
「は?」
「……ま、全部終わったらでいいわ。冒険する時間も、遊ぶ時間も……アタシのこと知る時間も、いっぱいあるしね」
「……?」
カグヤは俺の背中をパシッと叩き、少しだけ離れた。
俺はお茶のお代わりを注ぐ。
「な、カグヤ。お前とミカエルに頼みたいことあるんだ」
「なに?」
「俺が先生たちに負けたら……負けるつもりはないけど、手傷は負わせる。もし先生たちが生きていたら、先生たちを解放してやってくれ」
「…………」
「先生は強い。冷静になって考えてみたけど……あの神様たちに従っているのは、きっと理由があるはずだ。でも、先生たちはもう死んだ人間だ。いつまでもこの世界にいちゃいけない。だから……俺は、地獄門を守ってきた呪術師最後の生き残りとして、ケリをつける。命に代えてもな」
「フレア、その命に代えてもってやめて。縁起でもない」
「……カグヤ?」
「最初から負けるつもりでいるんじゃないわよ。たぶんだけど、ミカエルも同じこと言うわよ」
「……そうだよな。うん、悪かった、今のなし」
「はいはい。まぁ、聞くつもりなんてなかったけど」
「……ありがとな」
俺はお茶を一気に飲み干し、立ちあがる。
ストレッチし、軽く足を上げた。
「少し、組手しようぜ」
「いいわよ。アタシも座ってばかりでお尻痛くなってたところ。身体動かしましょ」
カグヤ、ホントに変わったよな。俺、カグヤのことマジで好きだわ。




