BOSS・ホワイトパール王国特殊部隊『心無き天使』①/三人
謁見の間に入ると、プリムたちがいた。
ミカエル、アブディエル、カグヤ。この三人もいる。鎖で拘束され、こっちを見るだけでピクリとも動かないし喋らない……なるほどな、呪術で動きを止めてるのか。
俺は、プリムたちに手を振った。
「ようやく会えた……いやその、悪かった。ちょっと和尚と一緒にホワイトパール王国の奴隷売買組織をツブしてたら遅くなった。いやーびっくりしたよ、地下組織い行って暴れたんだけどよ、出てきたのはなんと黄金級! まさか、ホワイトパール王国で黄金級ゴーレムと戦えるなんて思わなかった」
しゃべりながら周囲を探る。
ハイシャオ、ハクレン。そしてプリムに似た男……王冠被ってるし王様かな? それと、室内には二十以上の気配。なるほどね、特異種か。
ハイシャオは、根をクルクル回しながら言う。
「兄貴、いろいろあったみたいだけど、あたしたち『暁の呪術師』から試練を出す。この試練を突破できたら───…………あれ? できたらどうなるんだっけ?」
「知らない。師匠、言ってない」
「……まぁいっか。とにかく兄貴、この子たちを解放してほしければ、力を示して」
ハイシャオは、プリムたちに根を突き付ける。
それを見た俺は、心が冷えていくのを感じた。
「もしプリムたちを傷付けたら殺す」
「……いいね、怖いくらい圧縮された殺気。でも、その程度はあたしは怯まないよ?」
「王様、命令して」
「え? あ、は、はい!!」
ハクレンが、王様の袖をクイクイ引っ張る。
王様は事態を飲み込めていなかったが、命令を出した。
「ホワイトパール王国特殊部隊『心無き天使』に命じる。目の前にいる脅威を、全力をもって排除せよ!!」
「「「「「御意」」」」」
すると、どこに隠れていたのか、周囲の景色の一部が色づき、何人も現れた。
まるで周囲に溶け込むように擬態……そういう特異種の能力ね。
室内だし、デカい炎は使えない。町に入るとこんなんばかりだな。
構えを取り、ニヤリと笑う。
「へへへ……悪いなカグヤ、ここは俺だけで楽しませてもらうぜ」
「っ~~~!!」
鎖に巻かれたカグヤが、なぜか俺を睨んでいた。
◇◇◇◇◇◇
向かってきたのは、両手にナイフを持った男、いや女? が数名。
こいつら全員マスクしてるからわからん。
三人は、息の合ったナイフ攻撃を繰り出す。
「お、おおおっ!? っとぉ!!」
速い───……っ!!
全員、かなりの使い手だ。
どういう原理なのか、三人の腕が鞭のようにしなっている。さらに、空中でナイフを投げ合い、それを三人でキャッチ。変幻自在のナイフ攻撃を繰り出す。
俺はナイフを躱し、『漣』で受け流す。
「やるな。では───……」
「これなら」
「どうだ?」
一人が俺に向かってナイフを投げる。
俺はそれを首だけ捻って躱す。すると、背後にいた二人目がナイフをキャッチ。
俺はしゃがみ、横薙ぎに振るわれたナイフを躱す。そのまま足を上げ、背後の二人目の顎を蹴り砕いてやろうかと思った───……が。
「あれっ!?」
二人目が消えた。
同時に、一人目と三人目がしゃがむ俺に向かって蹴りを放つ。
俺は蹴りを両腕を交差して受ける。
そのまま地面を転がって離れるが。
「死ね」
「え!?」
消えた二人目がまた背後に。おかしい、こいつこんな場所にいなかった。
俺は転がってナイフを躱す。
「「シャァァァァッ!!」」
「はぁ!?」
転がった先に、一人目と二人目がいた。
なんで!? 二人目、移動する余裕なんてなかったはず。
俺は悟る。
「そうか、特異種───……」
「ッシャァァ!!」
「なら───」
俺は再び背後にいた三人目のナイフを躱すのではなく、人差し指と中指だけで挟んで止めた。
「っ!?」
「止めちまえばいい。流の型、『骨指』!!」
「ぐ、おぉぉっ!?」
俺はナイフを取り上げ、三人目の小指を掴んで思いきり捻り上げへし折った。先生が言ってた。指の骨は脆いから、やり方次第で簡単に骨は外せるし、簡単に折れるって。
手、指は武器使いにとって大事な物。壊せば武器は握れない。
三人目は指を押さえて下がる。気付いたが、一人目と二人目も少しだけ指を押さえた。
「なるほどな。なんとなく読めたぞ……」
たぶん、一人目の能力は黄金級のアイネと同じ『跳躍』と似た能力だろう。三人を常に俺の近くにジャンプさせて、途切れることなく攻撃して疲れさせる。んで二人目は、痛みとか疲れを三人で『共有』する能力だ。一人ぶんの疲れを三人で共有するなら、疲れも三分の一で済む。二人が攻めて一人が完全に休めば、それだけで体力の消耗を抑え込める。
そして三人目は、腕を伸ばしたりしならせたりする能力かな。この腕の動き、普通の人間じゃこうはいかない。
「なら、簡単だ!!」
俺は呪符を取り出し、呪力を込める。
「『凄まじき速度で叩く』」
俺の両腕に呪力が流れていく。
そして、両足に呪力を込めてダッシュ。指を押さえている三人目に、拳を叩き込んだ。
「滅の型、『修羅・轟乱打』!!」
呪力で強化された両拳によるラッシュ。
毎秒二千発の拳は、三人目の全身の骨ほとんどを砕いた。
痛みを共有している二人は、口から泡を吹いて失神。三人目は吹き飛ばされ壁に激突した。
「痛みを共有するってことは、限界まで痛みを与えればいいってことだ。へへ、一人で三人も倒せてラッキー───……っとぉ!?」
いきなり現れた剣士が、俺の首を斬り落とそうと剣を横薙ぎに振るう。
俺は右手のブレードを展開し、受け止めた。
やばいやばい。敵は二十人以上いるんだった。
「ま、いいや。お前ら全員、炎ナシで叩きのめしてやるよ!!」
俺はそう叫び、剣士の腹に前蹴りを食らわせた。




