表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十二章・白き愛の国ホワイトパール

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

340/395

そのころのミカエルたち

 プリム、アイシェラ、ナキ、クロネ、シラヌイは、ホワイトパール王城謁見の間にいた。

 城に来て案内されたはいいが、コクマは別室に閉じ込められ、プリムたちだけここに案内されたのだ。

 プリムは、懐かしさに胸が満たされていた。


「ここ、懐かしい……謁見の間。あまり入ったことはないけど、それでも懐かしいわ」


 プリムは、思わず微笑んでしまった。

 アイシェラがそっとプリムを支えると、プリムは微笑む。

 ナキは煙草を吸い、クロネは周囲を警戒。シラヌイは尻尾を振りながらナキの足下をグルグル回っていた。


「ふぅ~……で、王様は?」

「にゃん。煙いにゃん、こんなところで吸うにゃん」

「おっと失礼。で、王様は?」


 ナキがそう言うと、玉座の後ろにあるドアが開いた。

 現れたのは、王冠を被った青年。

 白を基調としたマントを羽織る、プリムと同じ髪色と目をした、ウィンダー国王だった。

 ウィンダーは玉座にどっかり座り、プリムをジーっと見た。


「久しぶりだね、プリマヴェーラ」

「ウィンダーお兄様……お久しぶりです」


 プリムはスカートを持ち上げて一礼。

 クロネ、ナキは気付いた。ウィンダーが謁見の間に入ると同時に、薄い気配が二十以上増えた。恐らく、護衛が山のようにいるだろう。

 ウィンダーは、薄い笑みを浮かべながら言う。


「で、話したいことがあるんだって? 妹の頼みだ、聞いてあげるよ」

「ウィンダーお兄様……お兄様。お姉様方はどこへ?」

「ああ、みんな死んだよ。あはは……実に、不幸な事故でねぇ」

「……そうですか。では、お父様は」

「元気……ではないけど、生きてるよ。家族がみんな死んじゃってるところで、病魔に侵されちゃってねぇ。王位をボクに譲って引退したのさ」


 ウィンダーは、王とは思えない軽さで言う。

 だが、プリムは特に気にしていない。


「お兄様。私はもう、ホワイトパール王国に興味がありません。あなたがどんな政治を行おうが、この国がどんな発展をして、どんな国になるのか。私にはもう関係ありません」

「そうだね……で?」

「ですが、ここは私の故郷です。私を育ててくれたお父様に、最後のお別れくらいはさせてください。そしてウィンダーお兄様、あなたにも」

「…………」


 ウィンダーは、確認するように言う。


「プリマヴェーラ。本当に、王位はいらないのかい?」

「はい。私はもうホワイトパール王族ではありません。なので、これは妹として、兄にする最初で最後のお願いです」

「ふーん……」


 プリムとウィンダーはまっすぐ向き合う。同じ髪色、同じ眼で。

 そして、ウィンダーは頷いた。


「わかった。いいよ」

「ありがとうございます」

「やれやれ、どうやら杞憂だったみたいだ。例の特異種をけしかけて大暴れするのかと思ったけどね」

「そんなこと、意味はありません。私はもう、あなた方にも、この国にも興味ありませんから」

「あははははっ! なかなかいうね……まぁ、いいよ。ボクはもう王様だし、ボクを殺したところで反逆者となるのが落ちさ。プリマヴェーラ、キミがこの国の女王になれる可能性はないよ」

「……はぁ、悲しい人ですね。私は世界を旅して、世界の広さを知りました。一国の王であるあなたには理解できないかもしれませんが、世界には王様以上に価値のある物がいくらでもありましたよ。そんな小さなもの、私の人生には必要ありません」

「……ふーん」


 プリムは慈愛に満ちた笑みを浮かべる。

 ウィンダーは鼻を鳴らした。


「ちょ~っと待った!! ふふん、悪いけど、まだ用事は残ってるのよねぇ」


 と───玉座後ろのドアが開き、二人の少女が現れた。

 一人はハイシャオ。もう一人はハクレンだ。

 ハイシャオの手には鎖があり、それぞれカグヤ、ミカエル、アブディエル、コクマを拘束している。


「カグヤ!! これは……お兄様、どういう」

「……さぁ?」


 ウィンダーも困惑していた。ウィンダーにもわからないようだ。

 アイシェラはプリムを守るように前へ。ナキ、クロネ、シラヌイも戦闘態勢を取る。

 そして、ハイシャオが言った。


「王様、まだ終わってないよ」

「え、あの……どういう」

「とりあえず、ここにいる特異種、全員貸して。これからあたしたちが、試験をするから」

「し、試験?」

「うん。ヴァジュリ師匠のお願いでね、フレアを試します」

「……???」


 わけがわからなかった。

 ハイシャオは、手に持っている棒を床に叩き付ける。


「鋼の型、『鎖錠鹵獲(さじょうろかく)』」


 すると、床がドロリと溶けて形が変わり、鉄の鎖となってプリムたちを捕獲する。

 鎖が生き物のようにうねり、プリムたちはハイシャオとハクレンの元へ移動した。


「きゃぁっ!?」

「ぬぅぅっ!?」

「ぐぉぉっ!?」

「うにゃぁぁっ!?」

『きゃうんっ!!』


 全員が、ハイシャオに捕まった。

 すると、プリムたちの力が抜けていく……鎖に流された呪力で、完全に無力化されていた。

 ハイシャオは、鎖を揺らしながら言う。


「ごめんね。これが最後の試練……フレアの『資格』を試すんだって」

「……え?」

「あたしもよくわかんないけど、ここにいる特異種たちとフレアを戦わせるんだって。ホワイトパール王国って特異種がすっごく多いからさ、試練には絶好の場所みたい。だからあたしたち、ここを選んだの」

「ど、どういう……ぅぅ」


 力が抜けていく。

 カグヤ、ミカエルも弱々しい。間違いなく呪術で弱っていた。

 そして、謁見の間の扉が開く。

 現れたのは、この場にいる誰もが知っている姿。


「おお、ここが謁見の間かぁ~……って、みんな揃ってんじゃん!! おーい、無事だったかー?」


 あまりにもいつも通りに、地獄炎の呪術師ヴァルフレアが現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
[一言] 仲間の命を危険にさらして迄やるべき事だったとは到底思えないからわざわざ人質になりに来たプリム達がただの馬鹿にしか見えない 命かけてるはずなのに1人1人に危機感がなさすぎてこの状況もただの茶番…
[一言] 今更試される理由がよくわかんないなぁ… あっちがただ安心したいだけとかじゃなくちゃんとした理由があるのだろうか それにただ戦えってだけだと戦闘力ぐらいしか確認できないけども…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ