表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第二章・風のラーファルエル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/395

みんな無事で安心した!!

 潜水艇とかいう木造りの船に入った俺は、シラヌイが飛び掛かってくるのを受け止めた。


『きゃうぅぅん!! わんわんっ!!』

「ははっ、シラヌイ!! よかった、お前も無事だったか」

『きゅぅぅん……』

「よしよし」


 尻尾を千切れそうなくらい振り、俺に甘えるシラヌイ。

 俺はシラヌイを抱っこし、頭や背をナデナデワシワシしまくる。するとプリムとアイシェラが俺のもとへやってきた……あ、おばさんもいる。


「フレア、天使様はどうなったのですか?」

「ああ、やっつけた」

「そうですか……よかったです」

「貴様……まさか十二使徒まで降すとは。とんでもない奴だな」

「いや、けっこう強かったよあいつ。さすがに負けるかと思った」


 ぶっちゃけ、空飛べるって反則だよなー。俺、空飛べないし。

 今回は地形が海だったこともあるし、蒼い炎でラーファルエルの虚をつけたってのもある。俺が頭に血が上ってたこともあるし、もっと冷静に対応すれば赤い炎だけでも倒せたかも。

 ま、いいや。ラーファルエルの野郎にはもう負ける気がしない。


「……船が十隻とも粉々になったのは痛いねぇ。造船所が忙しくなるだろうさ」

「あ、おばさん。怪我は?」

「おばさん言うな糞餓鬼。それと、お前に聞きたいことがいくつもある……天使を殺ったのはお前かい?」

「殺してないよ。つーか逃げられた」

「……それと、潜水艇が一時浮上できなかった。海面にびっしり氷が張り、さらに氷柱が何本も降り注いできた。これはお前がやったのかい?」

「うん。青いおばさんの炎でやった」

「「「…………???」」」


 プリム、アイシェラ、エリザベータおばさんが首を傾げる。

 青いおばさんの炎って言ってもわかんねーか。


「えーと、赤い炎じゃラーファルエルを燃やせなかった。んでやられそうになったら青いおばさん……第二地獄炎の蒼い炎が出たんだ」

「だ、第二、地獄炎?」

「ああ。なんでも燃やす赤い炎とは別の、なんでも凍らせるあおい蒼い炎な。ほれ」


 俺は右手の人差し指に蒼い炎を灯す。

 アイシェラとエリザベータおばさんはギョッとしたが、プリムは目を輝かせた。


「わぁ~♪ すっごく綺麗な青……うぅん、空みたいな蒼、ですね」

「だろ? ラーファルエルの野郎、これ見てめっちゃビビってさぁ」

「ふふ。フレアってばすごい!」

「おう!!」


 シラヌイとプリムがキャッキャと喜ぶ横で、アイシェラとエリザベータおばさんが言う。


「アイシェラ、こいつは……」

「こいつは地獄門の呪術師……恐らく生き残りだ」

「地獄門の呪術師だと? 確証は」

「ある。こいつは天使を何人も屠ってきた。それに、私自身、呪術をその身に受けたからな……長寿にして病魔に侵されたことがない天使にとって、呪術による苦しみは恐ろしく効果的だ。エリザベータ、口内炎を口の中いっぱいに作られ、全ての歯が虫歯に侵され、頭痛と腹痛が同時に起こった状態でまともに戦えると思うか?」

「…………」

「あいつは、それを平気でやる。触れただけで生きる者全てを病魔に侵す。そして……地獄の炎。さらに得体の知れない武器……天使の神器とはまた違う、恐るべき何かをその身に宿している」

「…………なるほどね」

「確か、ブルーサファイア王国には『堕天使』がいたな……会わせてみたらどうだ?」

「……一応、上に報告はしよう。『天使の襲撃により船は全滅、だが乗り合わせた呪術師の生き残りに助けられた』とな」

「そうしてくれ。それと、姫様と私のことは」

「第七王子にのみ書状を送った。恐らく、港で秘密裏に迎えが来るだろう」

「そうか」

「一国の王族の亡命だ。第七王子が国王に報告するかしないかは賭けだぞ」

「……恐らく、大丈夫だと思う」

「……確証はあるのか?」

「さぁな。それに、隠れ家だけ用意してもらえばいい。姫様は冒険に出る予定だからな」

「…………第七王子がそれを許すかどうかは私は知らないよ」

「いいさ。姫様なら説得してくれる」


 難しい話なので俺は聞くのをやめた。

 それより気になったのは、おばさんの怪我だ。


「なぁおばさん、怪我は大丈夫なのか?」

「おばさん言うんじゃないよ。怪我は……まぁ問題ない。可愛いお姫様のおかげでね」

「……っ」


 プリムが身体をすくませる……なんだ?

 エリザベータおばさんはクククと笑う。


「心配しなさんな。あんたの『力』のことは誰にも言わないよ。それにその力、持ってるのはあんただけじゃないしねぇ……」

「……え?」

「ふふ、部下にも口止めはしてある。まさか『癒し』の力をこの身で体験することになるとはねぇ」

「ああああの!! それ以上は!!」

「はいはい。悪かったね」

「癒し? プリムの力のことか?」

「ああ、特異種の魔法さ」

「特異種?」

「おっと、これ以上はお姫様に叱られちまうね」

「?????」


 首を傾げると、プリムが袖を引っ張った。


「フレア、その……私には癒しの魔法がある、それだけ知っていてくれれば」

「わかった」

「……ありがとうございます」


 ま、どうでもいいから深く聞かない。

 すると、おばさんの部下の一人が来て言った。


「船長!! 陸が見えやした!!」

「デカい声出すんじゃないよ!! 狭い潜水艇じゃ声が響くんだ!!」

「すす、すいやせん!!」

「おばさんの声のがデカくね?」

「やかましい!!」


 俺のツッコミに対し、さらにデカい声でおばさんは怒鳴った。

 こうして、ブルーサファイア王国に到着した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ