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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十二章・白き愛の国ホワイトパール

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フレアとアブディエル

 和尚と別れ、ホワイトパール王国の正門に向かって歩いていると……気付いた。


「…………ん? これは、呪力?」


 脈動するような、黒い呪力。

 ホワイトパール内じゃない、ここから少し離れた場所か。

 俺は正門を眺める。


「あー……ここまで来て、まだ入れないのかよ。呪力……誰だ? ヴァジュリ姉ちゃんか? それとも、ハイシャオかハクレンか……また別の奴か」


 俺は頭を掻き、ため息を吐く。

 カグヤたちを探す前に、こっちから終わらせるか。

 敵なら叩く、そうじゃなかったら無視する。

 

「じゃ、行くか……なんか寄り道ばっかりだな」


 カグヤやミカちゃんたちはともかく、プリムたちは大丈夫かなぁ。


 ◇◇◇◇◇◇


 ホワイトパール王国から少し離れた場所に、小さな森があった。


「なっ……お前!?」

「ぅ……」


 そこに、アブディエルが倒れていた。

 抱き起し確認すると、着ている服の胸部分が破かれ、心臓付近に呪符が張られている。

 さらに背中。青く内出血していた。背中の服が破れていることから、衝撃で弾けたようだ。


「これは『鎧通し』……この呪符、心臓から命を吸って呪力に返還している。そうか、これは目印……俺がアブディエルを見つけるための目印か」

「ふ、レア……」

「待ってろ。すぐに楽にしてやる」


 俺は胸の呪符をはがす。

 剥しただけでは呪術の効果は切れない。指先に呪力を集め、アブディエルの心臓付近を指でなぞった。


「ぅ、あ……」

「呪力の流れを断ち切る。すぐに楽になるぞ」

「ぅ……」

「よし、あとは背中」


 左足に『天照如意具足』を装備し、アブディエルを抱きしめながら全身を第四地獄炎で燃やす。すると、アブディエルの傷付いた身体が綺麗に癒された。


「おい、しっかりしろ。おい」

「あぅ……叩かないでよ」

「呪符は剥したし、呪術の処理もした。背中の傷も治したぞ」

「…………」

「何があった? ミカエル、カグヤは?」

「……連れて行かれたわ」

「は? 連れて行かれたって、あの二人をか?」

「ええ」


 アブディエルは、悔し気に顔を歪めた。


「あの、白い女の子……呪術師に」

「呪術師……白いっていうと、ハクレンか」

「ホワイトパール王国に連れて行かれたわ。『疫病魔』が会いたいって」

「……ヴァジュリ姉ちゃんが?」

「ええ。私はメッセンジャー……あなたに、このことを伝えるために残された」

「そうか。じゃあ、ホワイトパール王国に行けばいいんだな……立てるか?」


 アブディエルを立たせ、俺は首をゴキッと鳴らす。

 目的地は、ようやく決まった。

 ホワイトパール王国にいるヴァジュリ姉ちゃんの元へ。


「……その、ありがとう」

「ん?」

「怪我、治してくれて」

「いいって。それより、まずは服なんとかしないとな。裸じゃ寒いだろ?」

「え?…………………っ!?」


 アブディエルは、上半身がほどんど裸だった。

 慌てて胸を隠し、しゃがみ込み……赤い顔で俺を睨む。


「ッッッ!! 変態……」

「お、おお、なんか悪かった」

「ふん!!」


 アブディエルはそっぽ向き、俺はなんとか宥めようと時間をかけることになった。


 ◇◇◇◇◇◇


 アブディエルは、魔法で(異空間なんちゃら魔法?とか言うらしい)で新しい服を取り出し着替えを済ませた。なぜか俺は睨まれてた……女ってわからん。

 いざ、ホワイトパール王国へ!!……って思ってたのだが。


「もうすぐ日暮れか」

「……行くなら、明日にしましょう」

「だな。深夜に殴り込んでもいいけど」

「駄目。あっちは人質がいるのよ? 下手に動かないほうがいいわ。ちゃんと、日が明るいうちにね」

「はいはい。じゃあ、今日は野営……あのさ、俺と二人で大丈夫か?」

「別に。あなた、私を襲うつもり?」

「いやそんなことないけど」

「ならいいわ。でも、私の胸を見た代償……夜警はあなた一人でね」

「へいへい」


 森の中なので枝はいっぱいある。

 アブディエルに火を点けてもらい、俺は適当な木の実や野草を集めた。

 幸いなことに、旅の道具はあった。

 野草や木の実を鍋に入れ、適当に煮込んでスープを作る。


「ほれ、熱いぞ」

「ん」


 スープは、ちょっとしょっぱかったけど美味かった。

 あとは寝るだけだが……アブディエルは言う。


「ねぇ、少し話をしない?」

「話?」

「ええ。呪術師のこと、知りたいわ」

「別にいいけど、何が知りたいんだ?」

「呪術のこと」


 アブディエルは即答した。

 呪術のことが知りたい……そういや、そんなこと言ってた特級冒険者もいたな。今じゃ死ねない呪いに苦しんでいるけど。


「地獄炎の呪術師。呪いと炎。世界最強の戦闘集団……聖天使教会でも、その存在は危険と判断された。そして、呪術師を滅ぼすべく戦いを挑んだけど、たった四人の呪術師に天使の軍勢は敗北」

「…………」

「その強さ、興味があるの。私の復讐に役立つかも」

「やめとけ」

「……なんで?」

「興味本位で呪術師に手を出すな。呪われるぞ」

「…………あなたが、呪うの?」

「さぁな。でも、先生が言ってた。『呪うなら、呪われる覚悟が必要だ』って。現に、俺たち呪術師が呪いを使うためには、呪われることから始まる」

「…………」

「ま、そういうわけでやめとけ。お前の復讐はちゃんと手伝ってやるからさ」

「……ええ」


 アブディエルの復讐。

 そういやこいつも苦労してんだよな。


「ま、寝とけ。俺が見張ってるからさ」

「……ええ、ありがとう」


 アブディエルはころんと横になると、寝息を立て始めた。


「……明日か」


 明日、ホワイトパール王国に殴り込みだ。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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