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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十二章・白き愛の国ホワイトパール

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和尚とお別れ

 なんとか、貧民街にたどり着いた。

 うろ覚えの地形、道を進みながら到着。

 貧民街には子供が大勢いた。その内の何人かは俺を覚えていたのがありがたかった。その子たちに貧民街のリーダーであるガッシュを呼んでもらう。


「フレアさん! また来てくれるなんて」

「どもども。あのさ、いきなりだけど」


 俺は、和尚の影に隠れるようにいる子供たちを見る。


「……その子たちは」

「ああ、人身売買組織から助けてきたんだ」

「なるほど。そういうことですか」


 ガッシュは頷くと、子供たちを呼ぶ。


「食事と、着る物を準備してくれ。それと、お湯を沸かして身体を拭いてやるんだ」


 ガッシュ、ちゃんとリーダーやってるんだな。

 子供たちは連れて行かれた。ここでならちゃんと面倒を見てくれるだろう。


「ところで、飯とか大丈夫なのか?」

「はい。魔法を覚えた子たちのおかげで、狩りの成功率が上がりまして」

「なるほど。ああ、困ったこととかあるか?」

「いえ、今のところは」


 思った以上に大丈夫そうだ。

 もう、貧民街は大丈夫だな。子供たちが立派に成長して、ここが町みたいになる日も遠くない。よく見ると、ガラクタばかり置いてあったのに、どこかスッキリしてる。家みたいなものちゃんと建っている。

 和尚は、フムフムと頷いた。


「フレア。ワシはしばらくここに住むことにしよう」

「え、なんで」

「ワシが救った子供じゃ。落ち着くまで面倒を見るのが筋じゃろ?」

「そんなもんかな」

「うむ。それと、ホワイトパール王国に用事があるのじゃろ? ワシの用事は終わったし、お前さんがやりたいことをやればいい」

「和尚……うん、ありがとう」


 俺は和尚に頭を下げた。

 和尚がいれば、さらに安心だ。

 俺はホワイトパール王国へ向かって歩き出そうとして───。


「ああ、最後にフレア」

「ん?」

「ワシと、本気で戦わんか? 純粋な、力比べを」


 和尚が、そんなことを言った。

 俺は立ち止まり、和尚を見る。


「……マジで?」

「ふふ、純粋な興味よ。ワシも武を納める者じゃ。強者に挑みたい気持ちはある」

「……」


 和尚は強い。

 俺も武を習った。和尚と戦ってみたい気持ちはある。


「心配するな。本気を出せば殺し合いになってしまう。能力なしの、純粋な体技で競おうぞ」

「……わかった。じゃあ、一本だけ」


 俺は首をコキコキ鳴らし、両足で地面を踏みしめて構えを取る。

 和尚は右手を手刀の形にして、左手を胸の前へ。


「名乗るぜ。俺は、呪闘流甲種第三級呪術師ヴァルフレア」

「錦流武術十八代目皆伝『覇王拳』メテオ・ブルトガングじゃ」


 子供たちは見守っている。俺と和尚が笑みを向けるとホッとしたようだ。

 

「では───参る!!」

「来い!!」


 和尚が滑るように突っ込んで来た。

 右手の手刀がゆらゆら揺れる。軌道が読みにくい……すると、右手が顔面目掛けて突き出された。


「ッ!! っしゃぁ!!」

「フッ!!」


 俺は首をひねって躱し、和尚に上段蹴りを食らわせる。

 だが、和尚は左腕で受け、そのまま右足で前蹴り。俺はその前蹴りを腕で受けた。

 互いに離れ、すぐに接近。息もできない連続攻撃を繰り出す。


「わ、わぁ……すごい」

「みえないよ……」


 子供たちが唖然としている。

 それくらい、俺と和尚の攻防は速かった。たぶん和尚、カグヤより速い。

 受け、躱し、ギリで躱し、攻撃し───決定打がないまま五分ほど経過。


「ッフ!! はぁ~~~……っ、ここまでじゃな」

「ああ。和尚、めっちゃ強い……体技だけじゃ終わらない」

「うむ。ワシも『変身』せねば勝てないのぉ」

「変身?」

「こっちの話じゃ。くくく、いい刺激になったわい」


 俺と和尚は構えを解く。

 たった五分。されど五分の攻防は、引き分けで終わった。

 体技でここまで戦える相手は、カグヤ以来だ。


「フレア。またやろうぞ……さらばじゃ」

「うん。和尚、いろいろありがとうございました!!」

「うむ!!」


 和尚はニッコリ笑い、満足そうに頷いた。


 ◇◇◇◇◇◇

 

 ◇◇◇◇◇◇


 一方そのころ。

 カグヤ、ミカエル、アブディエルの三人は、ホワイトパール王国近くの森にいた。


「あの馬鹿!! なんっでいないのよ!! ああもう!!」

「ホンットにもう!! 見つけたら蹴りまくってやる!!」


 ミカエルとカグヤは怒っていた。

 いつの間にかフレアはいなかった。どうやらはぐれたようだ。

 ホワイトパール王国は目の前なのに、フレアを探していた。

 アブディエルは、杖を掲げたまま目を閉じている。


「……いない。私の探知にも引っかからない」

「……なんでよ」

「地下にいるとか、かな?」


 ミカエルの苛立ちを感じたアブディエルは、短く言う。

 まさに、フレアは現在、奴隷売買組織がある地下で戦っていた。

 フレアが黄金級ゴーレムと戦っているなんて知らない三人は、ため息を吐く。


「もうあいつ無視していいんじゃない?」

「賛成。アタシ、さっさと宿に入ってお風呂入りたいわ」

「あたしも。アブディエル、あんたは?」

「……お風呂、入りたい」


 三人が諦めモードになっていると───。


「みつけた」


 いきなり、幼い声が聞こえた。

 

「「!?」」

「え、私の探知に引っかからない、え!?」


 そこにいたのは、白い少女だった。

 十三歳くらいだろうか。真っ白な呪闘着を身に纏い、どこか眠そうな白い髪の少女だ。

 

「じゃあ、やる」


 ゆらゆらと身体を揺らしながら───呪闘流曲種第一級呪術師ハクレンが襲い掛かってきた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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