人身売買での戦い
「相手は一人だ!! 全員でかかれっ!!」
衛兵が剣を俺に突き付けて叫ぶ。なるほど、こいつが頭か。
その命令に、衛兵が一斉にかかってきた。
武器は剣、統率の取れた動きで俺を切ろうと迫ってくる。
「流の型、『刃砕』」
俺は、振り下ろされた剣の腹を叩いて砕き、薙ぎ払われた剣の腹を下から叩いて砕く。
衛兵がギョッとするが無視。そのまま顎に掌底を叩き込み、もう一人の衛兵には回し蹴りを食らわせる。
衛兵は吹っ飛び壁に激突。
「ほらほら、全員で来いよ」
「ぐぬっ……ええい!! 奴は一人だ、数で押せば倒せない相手じゃない!!」
向かってくる衛兵たちを、俺はひたすら殴る蹴る。
まず武器を破壊。これでけっこう驚いて硬直するので、あとは無防備な急所を叩く。二十人くらい倒すと、衛兵たちが向かってこなくなった。
全員、ただ向かってくるだけじゃ倒せないって気付いたみたいだな。
「おのれ……!!」
「隊長!! 後部出入口からも、侵入者が!!」
「何ぃ!?」
おお、和尚が来たのか。
俺はニヤリと笑い、隊長に向かって走り出す。
「なっ!? きさ───」
「滅の型、『登楼牡丹』!!」
指を尖らせた連続突き。
関節部分を狙うことで、ガコッガコッと関節が外れる音が響く。
百花繚乱、桜花連撃と並ぶ、滅の型でも強力な攻撃技だ。
「っご、あ……」
隊長は真っ青になりガクガク震え、そのまま泡を吹いて倒れた。
腕や足の関節がほとんど外れたんだ。痛みを感じる前に脳が失神を選択した。
隊長が倒れ、残った部下は真っ青になり、剣を向けていた。
「さーて。残りはこんだけね……かかってきな」
やぶれかぶれになった衛兵たちを、俺は残らず叩き潰した。
◇◇◇◇◇◇
「……あれ?」
衛兵は全員倒したのに、貴族たちは逃げも怯えもしなかった。
首を傾げると、仮面をかぶった男が近づいてくる。
『さぁ!! 侵入者の少年は屈強な衛兵を全員倒しました!! 少年に賭けた皆様は大ラッキー、次の賭けではどうなるか!!』
「…………」
ニヤニヤした司会者っぽい男は、俺に言う。
『さぁ侵入者の少年、こちらへ。これよりメインイベント!! ガーディアンとの戦いに入ります!! さぁ皆様、侵入者の少年か、賭けた賭けた!!』
「…………」
なんか、メチャクチャ馬鹿にされてるな。
俺は司会者の言う通り移動する。
『少年、現在の気持ちを』
「ああ、とりあえず……」
俺は拳を握り、司会者を殴る。
「滅の型、『百花繚乱』!!」
『おぼごっ!?』
「滅の型、『桜花連撃』!!」
『ががっ!?』
「甲の型、『牛進』!!」
『っぎぁぁぁっ!?』
顔面を狙った集中打。流れるような全身への打撃。そして全力のタックル。
司会者は吹き飛び、壁に激突してめり込んだ。
「なーんか見世物みたいだな」
すると、巨大な柵が床からせり上がってきた。
柵は、俺を囲むように円形にせり上がり、まるで試合会場みたいになった。
「おお、なんだこれ?」
『えー、これより!! 特別試合!! 侵入者の少年VSぅぅぅ……ガーディアン!! の、対決を行います!! さぁ賭けた賭けた!!』
「「「「うぉぉぉぉぉっ!!」」」」
すごい騒ぎになった。
いつの間にか、会場内にいた連中が試合会場を囲んでいる。
そして───俺の目の前の床が開き、何かがせり上がってきた。
「な、なんだ……?」
せり上がってきたのは、俺の想像を超えるモノだった。
◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇
和尚は、フレアと反対の出入口から堂々と侵入。
壁をブチ壊し、向かってくる衛兵を無力化しながら進んでいた。
そして、奴隷が収監されている部屋のドアを破壊。鎖に繋がれた奴隷たちの元へ。
「大丈夫かの?」
人間だけじゃない。
獣人、エルフも多くいた。
ホワイトパール王国の闇……奴隷売買。
和尚は鉄格子を素手で開け、奴隷の少年少女の頭を撫でる。
「やぁやぁ遅くなった。さぁ、もう大丈夫」
「う、ぅ……」
「大丈夫。大丈夫。ワシはお前さんたちを救いに来たんじゃ」
獣人の少年を撫でると、ぽろぽろと涙を流す。
和尚は、一人ずつ鎖と首輪を素手で引きちぎる。鋼鉄製の首輪と鎖は、まるで紙のように引きちぎられた。
「さぁて。フレアが表で戦っている隙に、脱出しようかの」
と───和尚は眉をピクリと動かす。
振り返ると、ドアの前に数人の兵が立っていた。
ただの兵ではない。
「おいおい、おっさん……なにしてんの?」
「駄目じゃない。その子たち、大事な商品なんだから」
「ふふ。馬鹿みたい。あたしたちに見つかっちゃったぁ」
ナイフをくるくる回す男、魔法使い風の美女、人形を持った少女だ。
和尚は直感で理解した。この三人は『特異種』であると。
「どうやら、易々と通してくれんようだのぉ」
和尚は困ったように笑った。
◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇
床からせり上がってきた『何か』は、金色の輝いていた。
上半身は人間のようで、下半身は馬のようになっている。
「まさか、これ……」
俺は、見覚えがあった。
そう、パープルアメジスト王国で……ユポポで見た、あれ。
「ご、ゴーレム!?」
「大正解!!」
ゴーレムの影にいた女が、パンと手を叩く。
二十代くらいの女だ。長い髪をポニーテールにした、活発そうな女。
そいつは、俺を指さして叫ぶ。
「久しぶりに楽しませてよね!! 侵入者!! この『黄金級鉄機』の一体、『射手座』をね!!」
さすがに驚いた。
まさか、パープルアメジスト王国にいるはずの『黄金級』の一体が、ホワイトパール王国に……しかも、人身売買組織の元にあるなんて、想像すらしてなかった。
「カグヤが羨ましがりそうだな……へへっ、俺だって強くなってるんだ。こんな奴、すぐにスクラップにしてやる!!」
拳を構え、俺は黄金級に向かって走り出した。




