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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十二章・白き愛の国ホワイトパール

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戦いの始まり───とは、ならず。

「待て!!!」


 いざ、戦いの始まり。

 そう思っていたのだが……いきなりの怒声に、心無き天使部隊とナキたちの動きが止まる。

 ナキたちは警戒したままだが、心無き天使部隊は動きを完全に止めた。

 そして、部隊を割りながら歩いてくる一人の男。

 プリムはナキたちを手で制し、前に出た。


「初めまして。第七王女プリマヴェーラ様」

「ごきげんよう……あなたは?」


 プリムは、スカートを持ち上げて一礼。

 目の前にいる男は丁寧なお辞儀をして挨拶する。


「『心無き天使』部隊、総隊長ビクトールと申します。第七王女……いえ、元第七王女様。なぜ、この国に戻ってきたのですかな?」

「あなたに言う必要が?」

「……これは手厳しい」

「ウィンダーお兄様に会わせなさい。安心して、お兄様に危害を加えるつもりはございません。わたしは……お兄様と、お話したいだけなのです。あなたたちとも、この国とも、争うつもりはございません」

「ふむ……」


 ビクトールは、しばし考える。

 視線をプリムに、ナキに、アイシェラに、クロネに、シラヌイに移す。

 たったこれだけ。もし、他国の息がかかっていても……問題なく処理できる。

 それに、ウィンダーは「ちょっかいを出せ」と言った。殺せと言う意味だが、そうでもないと言い切れる。

 ビクトールはしばし考え、結論を出した。


「わかりました。我が主に確認を取ってまいります。無益な争いは我らとて望みはしない。あなたがウィンダー国王の命、立場を脅かす存在なら、そういうわけにもいきませんが……ふふ、今のあたなは無力だ」

「ふふ、そうですね。わたしとて、権力のために実の兄弟を手にかける王が統治する国など、滞在するのも苦痛ですし、あなたがたの顔なんて一刻も早く忘れてしまいたいです。わたしが望むのは、家族として、血のつながった妹としてのケジメです。わかったら、さっさと兄の元へ帰りなさい」

「…………では、失礼します」


 ビクトールは軽く一礼し、手下を連れて帰っていった。

 完全に気配が消えたのち、プリムはふにゃふにゃと座り込んでしまう。


「お嬢様!!」

「あ、ああ……緊張したぁ」

「いやはや、とんでもない毒舌で追っ払ったなぁ……驚いたぜ」

「にゃん。死ぬかと思ったにゃん……」

『くぅーん』


 シラヌイが寄り添い、プリムは震える手でシラヌイを抱っこした。

 コクマは面白そうに、プリムに言う。


「あとは、ウィンダー国王がどう出るか……ふふ、また刺客を送るのか、対話をするのか。ああ、本当に面白いね」


 とりあえず───今日はもう休みたい。そう思うプリムだった。


 ◇◇◇◇◇◇


「……へぇ~」


 ホワイトパール王城。

 豪華な調度品にあふれる執務室で、ウィンダーはビクトールの報告を聞く。

 プリムが、会いたがっている。

 地位に興味はない。妹として、最後に話をしたい。


「今更、肉親の情なんてわかないけど。まぁ、血のつながった妹だし、話くらいはしてもいいかな」

「それでは……?」

「いいよ。招待してあげる。ああ、条件として仲間は全員連れてくること。ふふ、天使様との約束だし……ですよね、ハイシャオ様」

「ん、そう」


 ウィンダーが視線を向けた先にいたのは、ハイシャオとハクレン。そして……ヴァジュリ。

 ハイシャオはお菓子をモグモグ食べながら、ハクレンは猫を抱っこし、ヴァジュリは置物のように動かなかった。

 ハイシャオは、ヴァジュリに聞く。


「ヴァジュリ先生、なんでこんな回りくどいことするんです?」

「大したことじゃないわ。人間がどれだけ強いのか……特に、フレアの仲間がどれだけ強いのかを見たくてね。だからこそ、あなたたち暁の呪術師と戦わせ、フレアと仲間を分断した」

「ふーん。兄さん、めっちゃ強いよね。あたしで勝てるかな……」

「無理よ」


 ヴァジュリは断言した。

 さすがに、ハイシャオも唖然とする。


「七つの魔神器、そして零式創世炎を宿したフレアに勝てるとしたら、同格の神様だけ。ううん……その逆ね」

「え? 先生、どういう」

「ハイシャオ、ハクレン」

「は、はい」

「はい」


 ヴァジュリは、ハイシャオとハクレンの頭を撫でた。


「こんな形になったけど……あなたたちは、あなたたちのままで」

「……え?」

「?」


 意味が分からず、ハイシャオとハクレンは首を傾げた。


 ◇◇◇◇◇◇


 一方そのころ。

 フレアは一人、よくわからない崖の上から森を眺めていた。


「参ったな……ここ、どこだ」


 まっすぐ進んでいたのに、崖。

 完全に迷子だ。

 さすがのフレアも、少し焦っていた。


「やべぇ……どんどんホワイトパール王国から離れてる気がする。ちくしょう、あのおっさん変な道教えやがって!」


 頭を抱えそうになるフレア。

 すると、背後から気配を感じ振り返った。


「はっはっは。若いの、久しぶりだなぁ?」

「え、誰……ん? おっさん、どこかで」

「旅の僧だよ。ほれ、おぬしをぶん投げた」

「……あ!! あんときの」


 ツルツルの頭、白黒の僧服、編み笠、錫杖。ぽっこりしたお腹に、人懐っこそうな笑顔。

 

「ふむふむ……ほっほぉ、また強くなったのぉ」

「そりゃどうも。って! そうじゃない。あのさ、ホワイトパール王国行きたいんだ。場所教えてくれ!」

「構わんぞ。なら、一緒に行こうか」

「やった! おっさん、ありがとう!」

「おっさんじゃない。メテオ和尚と呼ばんか」

「メテオおしょう……言いづらい」

「……まぁ、好きに呼べぃ」


 こうして、フレアは再会した。

 特級冒険者序列一位。『覇王拳』メテオ・ブルトガング和尚に。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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