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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十二章・白き愛の国ホワイトパール

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プリムの決意

 ナキは、大勢に囲まれていた。

 それだけじゃない。無数の武器を向けられ、攻撃も受けていた……が、今は全員が止まっている。

 だが、ナキは一歩も動かない。

 ナキの周囲に浮かぶ『ヤカの矢』が、襲撃者たちの首元に突き付けられてた。


「ったく、おめーらオレのこと舐めすぎだぜ? おめーら人間はオレのこと『森人』のナキって呼ぶそうじゃねぇか。それくらい認めてんならよ、もっと人数連れて来いよ」


 二十人以上に囲まれているのにこの余裕。 

 ナキは間違いなく、冒険者最強の一人だった。  

 すると、ナキを囲う人間の一人が言う。


「ど、どうなってやがる……ぞ、増援が来ねぇ」

「あ?」

「ち、ちくしょう!! 本隊に何かあったのか!? おめぇら、ここは引くぞ!!」

「あ、おい」


 襲撃者たちは、ナキの矢を振り切って逃げだした。 

 路地裏にポツンと残されたナキは、今の状況を正確に分析する。


「増援、本隊……あの身なりからして、血溜組の連中に間違いねぇな。その本隊が、増援が来ねぇってことは……何かあったな? へへ、フレアたちかもな」


 ナキの推測は当たっていた。

 まさか、迷子になったフレアが血溜組の本部にたどり着き、血溜組組長のゼンジュウロウを相手に『ビビらせて戦意喪失させた』など、さすがのナキも考えつかない。

 血溜組の脅威は消えた。 

 残るは、ホワイトパール王国の特殊部隊『心無き天使』だけ。


「……とりあえず、お嬢ちゃんたちに合流するか」


 ナキは矢をしまい、プリムたちの元へ向かった。


 ◇◇◇◇◇◇


 隠れ家には、プリムとアイシェラ、コクマとクロネ、そしてシラヌイがいた。

 ナキが戻ると、プリムが心配そうに出迎える。


「ナキさん! お怪我は」

「大丈夫大丈夫。んなことより、お前たちは無事だったか?」

「はい……あの、それより」


 ナキは椅子にドカッと座り、テーブルにあった酒をグイっと飲む。

 喉を潤したナキは、ニヤリと笑う。


「どうやら、奴さんも想定外の事が起きたらしいぜ」


 ナキは、血溜組が引いたことを話す。

 すると、コクマがウンウン頷きながら言った。


「なるほどね。これはフレアくんたちかな?」

「たぶんな。想定外の事情……あいつらが絡んでるとしか思えねぇ」

「なら、敵は特異種の部隊だけ。うんうん……これならいけるんじゃない?」

「……何?」


 アイシェラは、訝しむようにコクマを見た。

 コクマは、プリムを見てにっこり笑う。


「敵がホワイトパール王国の部隊だけなら、可能性が出てきた。次に襲撃があったら、敵を一人だけ残して交渉するんだよ。もし交渉に乗ってきたら、向こうも余裕がなくなってる証拠だしね。無駄な血を流さず、きみの意思を伝えることができるかも」


 そう。今までは『血溜組』という協力組織があった。でも今はそれがない。

 アイシェラ、ナキ、クロネが脅威と知った以上、『血溜組』の協力がなければ始末は難しいと考えるはず。それに、ナキが『血溜組』のメンバーを退けたと知ったら、脅威度は増しているはず。 

 向こうは、全滅の可能性も考えて動く。それこそ、ウィンダー国王に指示を仰ぐ可能性もある。

 そこで、プリムが出る。

 争うつもりはない。ウィンダー国王に話がしたい。そういうだけで話は通るかもしれない。


「たぶんだけど、今も監視されてると思う。試しに表に出てみたら?」

「え……」

「貴様。お嬢様を危険に晒すつもりか!!」

「いや、血溜組が引いたんなら、早めに行動したほうがいいと思って」

「……わかりました」


 プリムは、決意したかのように頷く。

 立ち上がり、ナキとクロネとシラヌイに言う。


「外に出ます。皆さん、護衛をお願いします」

「ほ、本気かにゃん? うちが偵察したけど、見張りなんて……」

『くぅん……』

「……本気、なんだな?」

「はい」

「……わかった。おいアイシェラ、覚悟決めろ」

「し、しかし」

「お嬢様がここまで本気なんだ。それに……ずっと旅してたお前ならわかるだろ? このお嬢さん、かなり頑固で芯が通ってやがる」

「…………」

 

 成長。

 プリムは、フレアたちとの旅で成長した。

 何度も命を危険に晒してきたのだ。

 プリムの眼には、覚悟があった。

 ホワイトパール王国との因縁を終わらせる、覚悟が。


「……お嬢様」

「アイシェラ、お願い」

「わかりました。このアイシェラ、命を賭けてお守りいたします」


 アイシェラは跪いた。

 コクマはウンウン頷きながら笑う。


「いいねぇ。お姫様と騎士。まるで小説の世界だよ」


 一行は、覚悟を決めて外へ。

 外は、不自然なくらい生物の気配がない。倉庫街なのに、仕事をしている人間は誰もいない。 

 プリムは倉庫から出ると、思いきり叫んだ。


「わたしはここです!! さぁ、出てきなさい!!」

「にゃっ!? ちょ」

『───ッ!! ガルルッ!!』


 シラヌイの全身が燃え上がり、飛んできた矢を一瞬で焼き尽くす。

 そのままプリムの傍で、守るように唸りを上げた。

 ナキの矢が浮かび、アイシェラのブルーパンサーが起動。クロネはため息を吐き、腰からナイフを抜いた。

 そして、集まりだす気配。

 数は十人以上。全員、黒っぽい衣装を着ている。

 

「わたしは、プリマヴェーラ!! ホワイトパール王国第七王女!! わたしが命じます、国王にして兄のウィンダーの元へ、連れて行きなさい!!」


 張り上げた声が波紋のように広がる。

 だが、襲撃者たちは止まらない。

 

「ふん、一人残せばいいだろう」

「アイシェラ、それ悪役のセリフにゃん」

「ま、いいじゃねぇか。遊んでやろうぜ」

『ぐるるるる……』


 プリムを守る騎士たちが、闘志を漲らせ武器を構えた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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