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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十二章・白き愛の国ホワイトパール

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特級冒険者のナキ

 コクマの隠れ家。

 ホワイトパール王国城下町にある、あばら家だった。

 いくつも同じような倉庫が並んでいる。ここは、商会の倉庫街である。その倉庫の一つが、コクマの隠れ家の一つ。その倉庫の中に、プリムたちはいた。

 倉庫の中は、意外と快適な空間だった。


「チッ……どうする」


 アイシェラは、ブルーパンサーを撫でながら呟く。

 現在、アイシェラたちは『心無き天使』部隊に追われていた。

 コクマは、本を読みながら言う。


「フレアくんたちと合流できれば勝ち、だね」

「なに?」

「だって、神ですら警戒する人間だよ? 半天使……じゃなくて、特異種が何人束になってかかろうと勝てるわけないじゃないか」

「む……認めるのは癪だが、正論だ」


 アイシェラは頷く。

 フレアの戦いをずっと見ていたからこそわかる。フレアは、特異種が千人束になって襲ってきても、十分かからず消し炭にするくらいの火力を持っている。

 つまり、この戦いは……フレアたちと合流するまでが勝負。

 黙っていたプリムは、シラヌイを撫でながら言う。


「なるべく事を荒立てず、ウィンダーお兄様に会わないと……」

「お嬢様……」

「わたしは、お話したいだけです。王位なんていらないし、お兄様と敵対するつもりもありません。わたしは、王族として、プリマヴェーラとして最後のお話がしたいだけです」

「だったらさ、心無き天使部隊が来たら、連れてってもらえば? すぐに殺されないと思うよ?」

「…………」

  

 プリムは考え込む。 

 だが、ナキが止めた。


「やめとけ。あいつら、殺す気満々の動きだったぞ……下手に投降して、連れて行かれたのが拷問部屋なんてのはシャレにならん。行くなら、ちゃんと安全を確認してからだ」

「ナキさん……わかってます。ありがとうございました」

「わかってんならいい」


 と、ここでドアが静かに開く。

 ナキの『ヤカの矢』がふわりと浮かび……ネコミミが見えた。


「戻ったにゃん」

「クロネ、お疲れ様です」

「にゃん。喉乾いたにゃん……」

『わん』


 シラヌイが水のボトルを咥え、クロネに渡した。

 水を一気に飲み干すと、クロネはソファに座る。


「とりあえず、怪しい奴はいないみたいにゃん。でも……厄介な連中が増えてきたにゃん」

「厄介な連中、ですか?」

「にゃん。『血溜組』……特級冒険者序列五位、『血溜組組長』ゼンジュウロウ・チダマリ。あの冒険者最大の組織が動きだしたなんて……莫大な金が動いてるにゃん」

「血溜組か……騎士団にいた時、聞いたことがある。騎士団は騎士道に乗っ取た正義の剣。だが、血溜組の剣は『武士道』に乗っ取った剣だと」

「で、どうするにゃん? このままここに引きこもっても、見つかるのは時間の問題にゃん」


 クロネがしみじみ言うと、ナキが煙管を取り出し煙草をふかす。


「オレが行くぜ」

「「「え?」」」

「少し、騒ぎを起こしてみる。フレアやカグヤが、戦いの匂いを嗅ぎつけるかもしれねぇ」


 ナキは立ち上がり、煙管をしまう。

 

「特級冒険者……顔バレしてるみたいだしな。少し、オレに注意を引き付けてみるか。安心しな、ここの居場所は絶対に悟られないようにする」

「ナキ、貴様……」

「このまま隠れてるわけにもいかねーだろ? 多少の危険は覚悟しねーとな」

「ナキさん……」

「安心しな、お姫様。フレアやカグヤがバケモノ級だから目立たねーけど……オレもなかなか強いんだぜ?」

「……うちも行く。お前が騒いでる間、フレアたちを探してみるにゃん」

『わん! わんわん!』

「シラヌイ……あなたも行くのね?」

『わん!』


 ナキ、クロネ、シラヌイは外の扉へ向かって歩き出す。


「アイシェラ、お姫様を頼むぜ。ついでにそっちのメガネもよ」

「メガネって、ひどいなぁ」

「……任せろ。その代わり、無事に戻って来い」

「ああ」


 ナキは軽く手を振り、外へ出て行った。


 ◇◇◇◇◇◇


 クロネ、シラヌイと別れたナキは、マントをかぶり町を歩いていた。

 煙管を咥え、町を見る。


「……ふーん」


 けっこうな賑わいだ。

 道行く人は全員が小ぎれいで、暮らしに不自由しているような感じはしない。ウィンダー国王の政治は、国民の生活を豊かにしたのは間違いない。

 そんな王が、プリムを消そうとしている。

 

「やだやだ。妹だろ?」


 ナキに、家族はいない。しいて言うなら、グリーンエメラルド領土にいる部下たちだ。

 今頃、龍人族から解放された領土で、復興作業をしているに違いない。

 

「付いて行くって決めたのはオレだしな……」


 最初は、借りを返すつもりだった。

 でも今は、このパーティーに入って心底よかったと思っている。

 天使の襲撃はある。でも……冒険が楽しかった。

 だから、仲間のピンチには身体を張る。それがナキの考えだ。

 ナキは、くっくっくと笑いながら、路地へ入る。


「こう見えてもよ、オレはエルフ族最強だって自負してる……特異種の力、八百年の研鑽、それらは全部オレの力だ」


 腰から、数本の矢が浮かぶ。

 特異種としての能力。『群体制御(コントローラー)』の力で、矢を浮かしているのだ。

 ナキは、路地の行き止まりで止まる。

 いつの間にか、目の前には数人の男たちがいた。


「楽しいね」


 目の前の男たちは、「刀」と呼ばれる剣を抜く。

 ナキは首をコキコキ鳴らしながら言った。


「男同士ってのもアレだが……ま、踊ろうぜ?」


 ナキの『ヤカの矢』が、一斉に浮かび上がった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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