表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十二章・白き愛の国ホワイトパール

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

324/395

BOSS・ヴァジュリ姉ちゃん

 目の前にいるのは敵。ヴァジュリ姉ちゃんじゃない。

 俺は、何度もココロの中で自分に言い聞かせる。

 でも……やはり、わかっていた。

 ヴァジュリ姉ちゃんの言う通り。目の前にいるのはヴァジュリ姉ちゃん。魂が改良され、神の道具にされていても……やっぱり、俺の知ってるヴァジュリ姉ちゃんなんだ。


「黒の型、『千髪呪怨(せんぱつじゅおん)』」

「第六地獄炎、『黒縄羅生門』」


 俺の身体を覆う黒い炎の縄。

 ヴァジュリ姉ちゃんはピクッと眉を動かす。

 そう、この黒い炎の縄は、呪いを防御する技だ。対呪術師用の技って聞いたけど……こうして実戦で使用するのは初めてだ。だって、呪術師となんて戦ったことないし。


「悪いけど───俺に呪いは通じない!!」

「そう。だったら荒っぽく行くわ」


 ヴァジュリ姉ちゃんの髪がウネウネ動き、編まれていく。

 編まれた髪の先端に呪力が集まり、まるで槍のようになった。


「黒の型、『黒髪槍』」

「流の型、『流転掌』!!」


 ヴァジュリ姉ちゃんの髪が、俺に向かって飛んできた。

 俺はどっしり構え、両手を使って全ての髪を叩き弾く。

 ヴァジュリ姉ちゃんも一歩も動かず、数百束ある三つ編みの髪を呪力で操作していた。

 

「───っっ!!」

「やるわね。ここまで私の髪を弾いたのはタック先生以来……」


 ヴァジュリ姉ちゃんは、懐かしむように微笑む。

 その笑みを見るたび、俺は胸が痛んだ。


「……っくそ」


 ヴァジュリ姉ちゃん……病弱で、移動は車椅子だった。身体をあまり動かせないから、俺が世話をしてた。身体を拭いたり、一緒にご飯食べたり……でも、今は俺に敵意を向け、技を繰り出している。

 どうして、どうしてなんだ。


「ヴァジュリ姉ちゃん……ッ!! なんで、なんで……」


 俺は、歯を食いしばりながら叫ぶ。

 こうしている間にも、ヴァジュリ姉ちゃんの攻撃は続いている。

 でも……叫ばずには、いられなかった。


「なんで……なんで、なんで泣いてるんだよ!!」

「───ッ」


 ヴァジュリ姉ちゃんは、驚いたように目元を拭う。

 そして……攻撃が止まった。

 もう、我慢できなかった。


「ヴァジュリ姉ちゃん……ヴァジュリ姉ちゃんなんだろ!? なんで、なんでこんなことするんだよ……」

「…………」

「ずっと思ってた。ラルゴおじさん、マンドラ婆ちゃん……ヴァジュリ姉ちゃん。みんな、俺と本気で戦ってなかった。まるで、稽古を付けるみたいに」

「…………」

「なぁ……本当はヴァジュリ姉ちゃんのままなんだろ? 俺の知ってるヴァジュリ姉ちゃんの」

「……そこまで、よ」


 ヴァジュリ姉ちゃんは、そっと俺に向かって手を向けた。

 

「悪いわねフレア。戦いはここまで」

「戦いじゃない……こんなの、戦いじゃないよ」

「…………ごめんね」

「あっ……」


 ヴァジュリ姉ちゃんは、黒い炎に包まれ……そのまま消えてしまった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ヴァジュリ姉ちゃんがいなくなった方を見ていると、背後から数人の気配がした。

 振り向かなくても、誰だかわかる。


「こっち! こっちで戦ってる!」

「待ちなさいよラティエル! あいつなら負けないから大丈夫だって!」

「お、おい待てって……オレ、怪我人だぜ? ったく、フレアのやつ、うまい具合に仮死状態にしやがって」

「んなことより、アイツ戦ってるんでしょ!! アタシもやりたい!!」

「……騒がしいわ」


 ラティエル、ミカエル、ダニエル、カグヤ、アブディエルだ。

 俺は深呼吸して振り返った。


「よう。戦いは終わったぜ」

「あー!! もう、アタシの分も残してよー」


 文句を言うカグヤ。

 すると、ラティエルとダニエルが頭を下げた。


「フレア、ありがとな。てっきり死んだと思ったけどよ……まさか、仮死状態とはな」

「第六地獄炎の呪いの応用だよ。死んだように見せかけただけ」

「フレアくん……助けてくれてありがとう」

「気にしなくていいよ。な、ミカエル」

「え、ええ。まぁ……その、ラティエルを助けてくれて感謝してるわ」

「ふふ。ありがと、ミカちゃん」


 なんか一気に騒がしくなったな。

 すると、ラティエルがコホンと咳払いをする。


「あの……少し、状況を整理しましょう。たぶん、あなたたちの仲間について、話さないといけないから」

「仲間……プリムたちどうなってるか知ってんのか?」

「ええ。彼女たちは今、ホワイトパール国王のウィンダーに追われてる。刺客も送られているみたい」

「ま、マジか!?」

「マジです。たぶん、ウィンダー国王は彼女たちを捕まえて始末すると思われます」

「始末って……」

「捕まえるのは、たぶん……最後に妹とお話したいから、だと思います」

「……ミカエル、カグヤ。ホワイトパール王国へ急ぐぞ!」


 俺はホワイトパール王国へ向けて走り出そうとする、が。


「待って! 彼女たちの位置なら、わたしが調べられます。少しだけ時間をください」


 ラティエルは、自信たっぷりに頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ