BOSS・聖天使教会十二使徒『風』のラーファルエル④
蒼い炎。
俺の全身が蒼く燃える。不思議だ……なーんかひんやりする。
いつもの赤い炎は全てを燃やすがこれは違う。この炎はあらゆる物を『凍』らせる。
俺は、凍った海水の上に立っている。数メートル四方の浮島だが、一歩進むたびに海が凍り付く。海水は蒼い炎で燃え、ところどころが凍っている。
「ありがとう、青いおばさん……なんかいけそうな気がする!!」
俺は全身を蒼く燃やし、周囲を忙しく見渡してるラーファルエルを見る。
「な、な……なんだ、これは? あ、蒼い炎って、地獄炎は全てを燃やす炎じゃないのかよ!?」
「俺が知るか。青いおばさんが力貸してくれたんだよ」
「あ、青いおばさん?」
「ああ。第二地獄炎の炎は、『この世の全てを凍てつかせる絶対零度の炎』だって」
「な、なんだと!? き、聞いてないぞ!!」
「いや、言ってねーし」
ラーファルエルは頬をピクピクさせ、すぐに軽薄な表情に戻った。
「ふぅ~……まぁいい。炎が氷になっただけ。それ以上でも以下でもない。というか、もう遊びは終わったしオレは帰らせてもらうよ。はは、じゃあねー♪」
「逃がすと思ってんのかこの野郎!!」
ラーファルエルは手をフリフリして背中を向ける。
オレは凍った海の上、ラーファルエルは上空。海の上に立てたはいいけど、地形の不利は変わらない。
逃げようとするラーファルエルを追おうとジャンプした時だった。
なんと、踏み出した足の場所が凍った。
そのまま一歩、さらに一歩踏み出す。まるで階段のように海面から氷柱が形成され、俺が踏み出すたびに空中を歩くことができた。
「んなにぃぃっ!?」
「え……お、おぉぉっ!? マジかこれ、すっげぇぇぇっ!!」
驚くラーファルエル、そして俺。
歩くと氷の足場が形成される。これだと飛んでるのと変わらない。
俺は逃げたラーファルエルを追い、空中を走る……よし、俺のが速い。
「第二地獄炎、呪炎弾!!」
「くっ……!?」
ラーファルエルを追いながら両手から蒼い炎を撃ちまくる。当然、風邪や口内炎の呪力をこれでもかと練り込んで。
ラーファルエルは振り返り、後ろ向きに飛びながらエメラルドグリーンの風を円形に回転させ盾とした。
「『風の盾』……この、しつっこいんだよ!!」
「てめーをぶちのめすまで追うからなぁぁぁぁぁっ!! ふんぬがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」
俺は呪力で身体強化を施し、呪炎弾を止めて走ることに集中。
そして、ラーファルエルに追いつき、背中の翼を一枚掴んだ。
「がっ!? こ、この野ろ」
「つぅぅかまぁぁえたぁぁぁぁぁぁらっしゃぁぁぁっ!!」
「ぬわっ!? が、っはぁぁっ!?」
翼を思い切り引っ張り、ガクンと体勢が崩れたラーファルエルの横顔を殴った。あ、呪力載せるの忘れた……まぁいいや。
ラーファルエルに初めてダメージを与えられた。
蒼い炎がラーファルエルの頬を凍らせる。というか、掴んでいた翼も凍り付き、翼の一枚が割れて半分ほどになってしまった。
ラーファルエルは、青くなる。
「お、オレの翼……しかも、この氷、い、痛みを感じない、血も出ない……」
距離を取られ、蒼い炎を分析される。
まぁいい。今のでわかった……この炎、水分を凍らせる炎だ。空気中の水分を凍らせたり、海を凍らせたり……試してないけど、水分ならなんでも凍らせる。たぶん血とかも。
「おい、ラーファルエル。お前が飛ぶより俺のが速い、わかるか?」
「…………」
「つまり、てめーは逃げられねぇってこった。ボッコボコにして下痢ピーピー、口内炎、虫歯、んで風使いのお前に相応しい『風邪』にしてやるよ。覚悟決めな」
「…………そうだね。何度も言ったけど遊びは終わりにする。ちょっと驚いたけど、凍らせるだけなら捕まらなきゃいい」
「できるかなー? ふふふ、ここからは俺の見せ場だ」
「いや、そうはならない。光栄に思いなよ、オレの本気の本気を見せてあげる」
「???」
すると、ラーファルエルの周囲にエメラルドグリーンの風、いや竜巻が巻き起こる。
「マルシエルくんから聞いてると思うけど、第八階梯以上の天使は『神器』を持つ。この聖天使教会十二使徒『風』の神器、見せてあげるよ」
「…………」
俺は空中で構えたまま、全身から蒼い炎を出す。
さりげなーく試してみたが、どうやら蒼い炎を出してる時に赤い炎は出せないようだ。蒼い炎を解除すると空中を凍らせて歩けなくなるし……このまま殴るしかない。
「荒ぶれ……『神風の祝福槍』」
「おぉ……か、かっけぇ」
ついつい声が出てしまう。
それくらい、ラーファルエルの出した『デカくてゴテゴテした三本の緑色の突撃槍』は圧巻だった。
いいな、格闘技が主体の俺だけど、武器が欲しい。仕込みナイフとかじゃなくて、エリザベータおばさんが使ってたジュウとか。
三本の突撃槍は、エメラルドグリーンの風を纏いながらラーファルエルの周囲を回ってる。
「おふざけはおしまい。聖天使教会十二使徒の名の下に、キミを断罪する」
「じゃあこっちは……プリムとエリザベータおばさん、ついでにアイシェラの仇だ!!」
三本の突撃槍を操るラーファルエルと、蒼い炎を纏う俺。
最後の攻防が始まった。




