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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十二章・白き愛の国ホワイトパール

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貧民街の戦士たち

「と、こんな感じかな」

「いい? この鍛錬法、毎日欠かさず行うこと」

「「は、はいぃ……」」


 俺とカグヤは、素質のありそうな子供を一人ずつ選び、ぞれぞれ習った鍛錬法を伝授した。

 さらに、俺は一つだけ技を教える。


「いいか? 正式な呪術師じゃないお前に技を伝授することはできないけど……一個だけ、特別に教えてやる」

「は、はい……」

「しっかり構えて……こう」


 俺は、子供に構えを教える。

 そして、ガッシュを呼んだ。


「ガッシュ。この子に向かって軽く突きを放ってくれ」

「え、でも」

「いいから。ほれほれ」

「わ、わかった」


 ガッシュは、軽く突きを放つ。

 子供は目を閉じようとしたが、俺は耳元で言う。


「目を閉じるな。肌で感じろ……見ろ、突きはまっすぐだ。その突きの『流れ』を変えるんだ」

「あ───……」


 俺は、子供の手を取り、ガッシュの突きの側面を叩き、攻撃を流す。


「流の型、『漣』……これは、全ての攻撃を受け流す技だ。基本中の基本。まずは、これを極めるんだ」

「───はい」


 子供は、何かを掴んだのか、手を握ったり開いたりしている。

 十年後。この子供は『万物流転』という冒険者として名を馳せることになるなんて、今の俺には想像もつかなかった。


 ◇◇◇◇◇◇


 子供たちの指導を終え、晩飯の支度に取り掛かろうとしていると。


「はいはい~い! 子供たち、仕事の時間だぞぉ~!」


 どこか甘ったるい、猫なで声の男たちが貧民街にやってきた。

 数は十人くらい。リーダーっぽい男が鼻をスンスン鳴らすと、大鍋に煮立っている魔獣の肉を見つけた。


「おいおいおい、今日はご馳走かなぁ? こんな豪勢な肉、どうしたんだ?」


 すると、ガッシュが前に。

 子供たちは怯えてしまい、物陰に隠れてしまった。


「お、オレたちが捕まえた。それで、何の用事だよ」

「お仕事さ。きみら貧民街のガキ使って、貴族たちがゲームすんだとよ。ははは、よかったなぁ? うまい残飯いっぱい食えるぜぇ?」

「い、嫌だ!! もう、オレたちはお前たちに従わない!! オレたちはオレたちで生きて行くんだ!!」

「…………はぁ?」


 リーダーは、怒りで顔を歪めた。でも、笑っていた。


「馬鹿言うんじゃねぇよ? いいか? お前ら貧民街のガキは、オレたち大人の道具なんだよ!!」

「違う!! オレたちは……オレたちだって、生きてるんだ!!」

「ッチ……めんどくせぇ。おい!! ガキを十人ほど連れていけ!!」


 このままだとヤバいな。

 ガッシュの男っぷりを眺めていたかったけど、そろそろ出番か。

 最初に出たのはカグヤ……あーあ、やっぱりこいつ笑ってるよ。


「おぉ? なんだ、上玉がいるじゃねぇか」

「一つ忠告。アタシに触れようとしたらそれが合図……ここにいる全員、骨を五十本へし折る」

「あぁ? へへへ、やれるもんなら───……」


 男の手がカグヤに触れようとした瞬間、男の両腕が曲がってはいけない方向に曲がった。


「え?」

「はい、まず二本。あと四十八」


 ベギベギメギボギグシャッ!! と、派手な音が聞こえ、軟体動物のようになった男が崩れ落ちた。

 口から泡を吹いた男……憐れなり。

 俺は、稽古を付けた子供たちに言う。


「実戦を見るのもまた勉強だ。いいか、よく見てろよ?」


 そういって、俺は飛び出す。

 呪いや炎を使わず、純粋な体術のみで賊を蹴散らす。


「てめぇ!!」

「くらいやがれっ!!」

「流の型、『漣』」

「あっ」


 賊のパンチを受け流し、振り下ろされた剣をも受け流す。俺が教えた子が反応した。

 ちゃんとわかっているようだ。この『漣』は、極めればどんな攻撃だって受け流せる。

 受け流した後、体勢が崩れた瞬間を狙い、顔面に拳を叩き込む。


「って感じだ」

「あ───……は、はい!!」


 見取り稽古はこんな感じか。

 懐かしいな……俺も先生からこんな風に習ったっけ。まぁ、優しいのは最初だけで、後から地獄の修行だったけどね。

 のんびりやっていたせいで、賊の残りはカグヤとミカエルが倒してしまった。


「終わり。ったく、来るならもっと人数揃えてから来なさいよ。こんなの準備運動にもならないわ」

「同感……それより、こいつらどうするの?」


 カグヤは、賊のリーダーの足を踏み砕いた。


「っっぎぇァァァァァァーーーーーーッ!?」

「ねぇ、二度とここに近寄らないって約束できる?」

「ひ、ひ……で、でも、貴族が」

「貴族ね。その貴族の顎を蹴り砕けばいいのかしら?」

「ち、ちが……お、オレたち、貴族に依頼されただけなんだ!! ホワイトパール王国内にいる、死んだはずの第七王女を探すから、使えそうなガキ集めて来いって」

「……おい、その話詳しく」


 カグヤを押しのけ、俺はリーダーの胸倉を掴んで睨んだ。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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