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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十二章・白き愛の国ホワイトパール

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ホワイトパール王国、貧民街

「とりあえず、肉はこんなもんか」

「う、おぉぉ……すげぇ」


 ガッシュは、俺が仕留めた巨大なクマにビビっていた。

 全長二十メートルくらいかな。いきなり現れたからラッキーだ。

 すると、カグヤが大蛇を狩ってきた。


「いい蛇肉も手に入れたわ。ってか、デカすぎて運ぶの面倒ね」

「それなら平気。ね、アブディエル」

「……まぁ、いいけど」


 アブディエルが指を鳴らすと、クマと大蛇が浮かび上がる。

 そうか。こいつ、魔法使いだっけ。なかなか便利じゃん。

 すると、子供たちがアブディエルに群がった。


「お姉ちゃん、魔法使えるの!?」

「すっげ! おれ、初めてみた!」「あたしも!」

「ちょっと、寄らないでよ……ったく」


 アブディエルは面倒になったのか、もう一度指を鳴らす。

 すると、群がっていた子供たちが全員浮き上がった。

 そのまま、魔獣と一緒に運ぶ……アブディエルは、子供がうっとおしかっただけなのだが。


「すっげー!」「あははっ、楽しいっ!」

「わーい! 飛んでる!」「ふわふわーっ!」


 子供たちは、ひたすら喜んでいた。

 ガッシュは、俺の隣でグッと食いしばる。


「あんなに子供たちが笑ってるの、久しぶりに見た……本当に、ありがとう」

「気にすんなって。それよりさ、貧民街ってどんなとこだ?」

「……あそこは、地獄だ」

「地獄?」

「ああ。貧民街は、ホワイトパール王国市民や貴族たちにとって、クソの掃きだめみたいな場所さ。定期的に、貧民街の子供たちを奴隷として連れて行ってはオモチャみたいに扱って殺す……先日も、何人か連れて行かれた」

「マジか……」

「ああ。オレたちには自衛の手段もない。ただ、上の連中にされるがまま。この国にくる商人を狙って追いはぎしたり、ホワイトパール王国の残飯を漁ってメシにありついてる」

「おいおい。ひっでぇな」

「酷いのさ。オレらは、貴族や市民が奴隷に産ませた子供の集まりだしな……生きることしかできない。搾取されるだけの存在。でも……生きてるんだ」

「…………」


 ガッシュは、諦めていない。

 すると、カグヤが言う。


「戦いなさいよ」

「えっ……?」

「搾取されるだけ? 生きてるだけ? 違う。アンタらは死んでるのと変わらない。生きてるなら、自分に降りかかる災いくらい、自分でなんとかなさい」

「……手厳しいな。でも、見ての通り、オレらには何もない」

「あるじゃない。立派な手と足が」

「……え、どういう」


 すると、カグヤは俺たちから数歩先に進み……近くにあった岩を蹴り砕いた。

 ギョッとするガッシュ。


「敵が来たら蹴る。腹が減ったら獲物を蹴り殺して食う。肉いっぱい食べて力付けて、向かってくる奴らなんてブチのめせ!!」

「…………」


 すると、ミカエルが言う。


「それ、いいかもね」

「おいおい、お前もかよ」

「アブディエル。この中に、素質ある子は?」

「…………この子、あとこっちかな」

「じゃ、あんたが『育て』なさい。実戦で使えるくらいにね」

「いいけど、私のやり方でいいの?」

「ええ。人間相手なら十分でしょ」

「お、おいおい。お前ら何を……」


 俺がミカエルの肩に手を置くと、ミカエルは振り返る。


「悪いわねフレア。三日だけ時間ちょうだい」

「え」

「弱き者に手を貸すのは、天使の役目だからね」


 そう言って、ミカエルはニヤッと笑った。


 ◇◇◇◇◇◇


 ホワイトパール王国が見えてきた……が、王国には入らず近くのごみ溜めへ。

 正確には、ごみ溜めのように見えるだけで町のようなところだ。

 廃材で建てたようなボロ小屋、ゴミが散乱した道、ぼろきれを着た住人……住人、こどもばっかりだな。

 ガッシュたちが戻ると、子供たちが群がってきた……が、浮かぶ大蛇やクマを見て一気に逃げ出した。


「ま、待ってくれ!! 大丈夫、この魔獣たちはみんなのご飯だぞ!!」


 ガッシュがそう言うと、子供たちは恐る恐るこっちを見た。

 ミカエルは、アブディエルに言う。


「アブディエル、解体しちゃって」

「ん、わかった」


 アブディエルが指をクイクイ動かすと、蛇とクマの皮が綺麗に剥け、腹が割れて内臓が全部零れ落ち、一瞬で細切れになった。

 

「ガッシュ。大鍋くらいはあるでしょ? 準備して」

「あ、ああ……なぁフレア、これはユメか?」

「現実だって。ほれほれ、俺も手伝うからさ。せっかくだし、ゴミとか燃やそうぜ」


 ガッシュは大鍋を準備。

 アブディエルが水魔法で鍋を満たし、鍋に肉をブチ込んでいく。

 竈はないので、燃えそうなゴミをいっぱい集め、それに火を点ける。

 味付けは塩のみ。というか塩しかない。

 でも、蛇とクマの出汁がいい味だ。臭いかと思ったがそうでもない。

 俺は、お玉とフライパンをガンガン叩く。


「さぁ、飯の時間だぞー!」

「「「「わぁぁぁぁっ!!」」」」


 子供たちは、お腹いっぱいご飯を食べることができた。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 食事を終え、アブディエルは周囲の子供たちを見た。


「あなたと、あなた……あと、あなた。こっち来て」

「「「え?」」」


 アブディエルは、女の子二人と男の子一人を指さす。

 子供たちがアブディエルの前に立ち、首を傾げた。


「これから、あなたたちの『魔炉』を開く。魔力があふれだすから、しっかり押さえてね」

「「「え……?」」」

「じゃ、解放」


 トントントン、と……アブディエルは子供たちの額を指で付く。 

 次の瞬間、子供たち三人が光り出した。


「ちょ、何してんだ!?」


 慌てて止めようとする俺。だが、ミカエルはのんびりいう。


「大丈夫、アブディエルに任せておきなさい」

「いや、何してんだあれ?」

「あの三人の魔力を解放したの。アブディエルは天使最高の魔法使い。人間の潜在能力を解放して魔法使いにするなんて朝飯前よ」


 子供たちの光が収まると、アブディエルは言う。


「これから、あなたたちの脳に『魔法コード』を刻む。そうすれば、念じるだけで魔法が使えるから。ついでに、魔炉も拡張して第二階梯天使くらいの魔力量にしておく。いい? この力をどうするかはあなたたち次第。力に溺れるようだったら、炎の天使が粛清に来るってことを忘れないで」


 そう言って、アブディエルは子供たちの頭をポンポン叩く。

 三人はペタンと座り込み、ぽけーっとしていた。


「終わったわ。この三人なら、第五階梯天使くらい蹴散らせるでしょうね」

「お疲れ。さて、次はあたしたちの番。フレア、カグヤ。素質ありそうなやつを鍛えるわよ」

「え、俺も?」

「アタシもやるの?」

「当然でしょ。カグヤ、あんたは偉そうに説教したんだから、やることやりなさいよ」

「むぅー……ま、いいけど。神風流の修行法、伝授してあげる」

「俺、誰かに教えられるほど立派じゃないけどなー」


 こうして、貧民街の子供を鍛えることになった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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