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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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ホワイトパール国王ウィンダー

 ホワイトパール領土。

 七つの王国で最も豊かで、鉱山資源が豊富で宝石の国とも呼ばれている王国。

 ホワイトパール領土の中心にある、最も豊かな国が、ホワイトパール王国だった。

 この国を治める王の名は、ウィンダー。


「なに……? それは本当か?」

「はい。間違いないかと」


 ウィンダーは、王城にある立派な執務室で、飼い猫を抱きながら紅茶を啜っていた。

 ふさふさした猫はご機嫌なのか、尻尾が揺れている。

 ウィンダーは、紅茶のカップを机に置き、報告に来た部下を見た。


「最初から、詳しく話せ」

「はい。先日、貴族街に数名の男女の出入りを確認。『監視者』の情報によると、その中に聖騎士アイシェラ、第七王女プリマヴェーラが確認されたとのことです」

「…………ほう」

「こちらが、『監視者』の描いた絵です」


 部下は、一枚の羊皮紙をウィンダーへ。

 それは、超精巧に描かれたプリムとアイシェラが、コクマエルの屋敷に入っていくところを描いていた。

 『監視者』……特異種による模写だ。


「逃げ出して死んだと思っていたが……ふぅん、戻ってきたんだ」


 生きている可能性は高かった。

 このまま、ホワイトパール王国を忘れ他国で暮らすのかと思っていたが……ウィンダーは、猫を撫でる。


「監視を付けろ」

「はっ……監視だけでよろしいので?」

「んー……そうだな、ちょっかい出してもいいぞ。何が狙いか知らないけど、今の国王はボクだ。今さら、全てを捨てた末っ子お姫様が来たところで、何も変わらない」

「わかりました。では」


 部下は頭を下げ、執務室を出て行った。

 ウィンダーは、残った紅茶を一気に飲み干した。


「さて、どうなるかな……感動の再会か、永遠のお別れか」


 ◇◇◇◇◇◇


「で、これからどうするんだい?」


 コクマエルは、紅茶を飲むプリムに聞いてみた。

 

「うぅ……えっと」


 プリムは小さくなる。

 ウィンダーに会う。そう決めたのだが、どうすればいいのか。

 とりあえず、コクマエルの屋敷を拠点としていた。

 クロネは情報を集めに出て、ナキとアイシェラはプリムの護衛。

 屋敷にいた堕天使や天使は、コクマエルを除いて全員いない。気を遣う心配がなく、ほんの少しだけホットする一行だった。


「お嬢様。やはり、ウィンダーに会うのは危険では……」

「でも……」

「待て待てアイシェラ。プリムの嬢ちゃんが会うって決めたんだ。オレらがどうこう言うことじゃねぇだろ?」

「む……」


 ナキの正論に、アイシェラはムッとする。

 プリムは、家族との因縁に決着を付けようとしている。ナキは、その覚悟が気に入り、どんなことがあろうとプリムを守ることを決めていた。

 アイシェラは、純粋にプリムを心配していた。


「アイシェラ、心配してくれてありがとう。でも……やっぱり、ちゃんとしたいから」

「……お嬢様」

「アイシェラ。アイシェラは家族に会いたくないの?」

「ええ。全く」


 すっぱりとアイシェラは切り捨てた。

 もう、家族に未練などない。

 しばし、沈黙……すると、部屋の窓が音もなく開き、クロネが戻ってきた。


「ヤバいにゃん」

「クロネ?」

「ここ、監視されてる。しかも、監視してるの……特異種にゃん」


 クロネは、青くなりながら話す。


「城下町で、ウィンダー国王に関する情報を集めてたにゃん。ウィンダー国王の評判、すごく

高い。町では『歴代最高の王』とまで言われてるにゃん。現に、ウィンダー国王になってから、民の生活はとても豊かになったみたいにゃん」


 クロネは、ナキが手渡した水を飲む。


「黒い噂を集めてたら、纏わりつくような気配をいくつも感じたにゃん。うちと同じアサシンかと思ったら……違った。あれは、特異種」

「特異種……? 馬鹿な。人間の紛い物と国内では忌み嫌われている存在だぞ」

「にゃん。間違いないにゃん……あれは、ホワイトパール王国の闇にゃん」


 クロネは、呼吸を整える。

 窓をチラリと見て、ナキに言う。


「警戒をしておくにゃん。追跡者は振り切ったけど、ここがバレたら面倒なことになるにゃん」

「ああ。わかった」


 ナキの腰から『ヤカ』が何本も飛び、窓から出て行った。

 コクマは、ソファに深く座って言う。


「そういえば、聞いたことあるな。ホワイトパール王国の特異種部隊『心無き天使』部隊」

「「「え……」」」

「ウィンダー国王が作った部隊だよ。ま、存在は隠匿されてるけどね」

「おいおいおい、そんな連中がいるのかよ?」

「うん。ボクも噂でしか知らないよ」

「貴様、堕天使だろう。知らないのか?」

「知らないよ。キミだって、天使の町ヘイブンで流行してるドーナツ屋の定番商品のこと知らないだろ?」


 コクマはおどけた。

 そして───ナキがバッと窓を見た。


「伏せろ!!」


 次の瞬間、窓ガラスが砕け散った。


「きゃぁっ!?」

「お嬢様!!」


 部屋に飛び込んできたのは、両手にトンファーを持つ、マスクを被った青年だった。

 トンファーをクルクル回し、プリムに向かってきた。


「貴様───誰を狙っているのかわかっているのか? 実装!!」

『ウェアライズ』


 アイシェラがキレた。

 部屋の隅で待機していたブルーパンサーが、アイシェラの音声に反応。一瞬でアイシェラの元まで移動し、ボディを展開。合体した。


「!?」

「はぁぁぁぁっ!!」


 アイシェラは、腕部に搭載されている『スタンバトン』を展開。

 バチバチと紫電を帯びたバトンが、襲撃者の腹を叩いた。


「───っ!!」

「ダァッ!!」


 そして、そのまま前蹴り。

 襲撃者は吹っ飛び、床を転がって壁に激突した。

 そして、クロネが音もなく近寄り、腕と足を固めて小さな針をクビに刺す。


「筋弛緩剤にゃん。意識を保ったまま身体だけが硬直する、うち特製の薬……にゃっ!?」


 だが、襲撃者は動いた。

 ぐにゃりと、全身がゴムのように伸びたのだ。柔らかい身体でクロネの拘束から抜け出し、再びトンファーを構える。

 クロネは、舌打ちした。


「こいつ……特異種にゃん!!」


 ホワイトパール王国特殊部隊『心無き天使』が、プリムたちを襲い始めた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] 「領土」と「王国」が混同されていて分かりにくいし、この表現だと国が7つ以上あるように見えます。 ホワイトパールが連合王国(国家)で、その盟主が(同名の)王国ならまだ分からなくもないですが… …
感想一覧
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