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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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BOSS・かつて師の友人だった者

 マンドラ婆ちゃんは水晶玉から降りた。

 改めて見ても小さい。身長は俺の胸より下くらいで、腰が曲がったおばあちゃんだ。

 俺は構えたまま、汗を流す。


「どうしたんだいフレア。こんなよぼよぼのおばあちゃんが恐いのかえ?」

「…………」


 よぼよぼのおばあちゃん?

 馬鹿言うな。目の前にいるのは、先生クラスの怪物だ。

 呪術師の村、最強の四人の一人。

 先生、ラルゴおじさんの師。 

 予言者。第七地獄炎の使い手……マンドラ婆ちゃん、呼び名がいろいろある。

 俺は、こんな状況なのに……震えていた。


「……まさか、炎を使わないつもりかえ?」

「…………」

「やれやれ。タックの大馬鹿者め……育て方を間違えたのかのぉ」


 マンドラ婆ちゃんは苦笑。

 俺は全身に呪力を漲らせ、懐から呪符を取り出す。


「『速く駆けろ(シュバーン)』、『硬くなれ(カタタク)』、『殴り壊せ(クラシュ)』、『鳥の如く(アイビー)』!!」


 呪符は一瞬で燃え尽き、俺の身体が呪術で強化される。

 俺は拳を握り締め、マンドラ婆ちゃんに向かって走り出した。


「甲の型、『激震』!!」


 ダッシュしながらの肘鉄。

 呪力で強化した状態なら、岩なんて簡単にブチ砕ける。

 だが───……マンドラ婆ちゃんは、懐から一枚の呪符を取り出した。


「『止まれ(スタプ)』」

「ッ!?」

 

 俺の動きが急停止。

 地面に縫い付けられたように足が動かない。

 呪術による足止め───初歩中の初歩。

 俺はもう一枚呪符を取り出し、呪いを解こうとした。


「滅の型、『打厳』」

「───ッお、っが!?」


 だが、マンドラ婆ちゃんの拳が鳩尾に突き刺さる。

 呪力が解除され、地面を転がった。


「あ、っが……っくぉ」

「おねんねはまだ早いよ」

「ッ!!」


 マンドラ婆ちゃんは、地面に転がる俺に拳を打ち下ろした。

 俺は転がって回避。立ち上がり態勢を整える。 

 呼吸を整え、マンドラ婆ちゃんに向かって走り出した。


「甘いね」

「───」


 再び、呪符を取り出したマンドラ婆ちゃん。

 だが、一瞬だけ眉をぴくっと動かし、呪符をしまう。

 そして、俺を迎撃する。


「滅の型───『捻打厳』」

「だりゃぁぁぁぁっ!!」

「───っ、ちょこざいな」


 俺は、マンドラ婆ちゃんの拳を腹で受けた。

 だが……マンドラ婆ちゃんの拳から血が噴き出す。


「甲の型『極』───『金剛夜叉』!!」

「っち……痛いねぇ。そういやあんた、四大行の『極』を習得してたっけねぇ」

「悪いね。俺、負けるつもりねぇし!!」

「ふん。生意気なガキめ……お尻ぺんぺんしてやろうかねぇ」


 マンドラ婆ちゃんは、全身を第七地獄炎で包み込む。

 そして、炎が分裂……数十人のマンドラ婆ちゃんが、俺を包囲した。


「幻の型、『幻老(げんろう)』」

「だったら俺も!! 第一、第六、第七地獄炎『TRINITY(トリニティ)FIRE(ファイア)』!!」

 

 右手に『火乃加具土』、胸に『黒ノ十字架』、腰に『アンド・ヴァラ・ナウト』が装備される。

 マンドラ婆ちゃんは目を見開いた。


「魔神器……地獄炎の呪術師の秘宝」

「これ、もう俺のだし。マンドラ婆ちゃん、俺……婆ちゃんと素手で戦えてよかった。でも、もう終わりにする。マンドラ婆ちゃんの魂を解放させてもらう!!」


 アンド・ヴァラ・ナウトから紫色の炎が噴き出し人の形に、ヒトの形をした炎が全身に黒い呪いの炎を帯び、右手が真っ赤に染まった。


「零式創世炎、『MIX(ミックス)Δ(デルタ)EXPLOSION(エクスプロージョン)』!!」

「行け、幻老たち!!」


 分身したマンドラ婆ちゃんの第七地獄炎と、三種の融合した炎がぶつかり合う。

 勝負は、初めから決まっていた。

 魔神器を全て持つ俺が、炎の戦いでマンドラ婆ちゃんに負けるわけがなかった。

 あっという間に、マンドラ婆ちゃんの第七地獄炎は消滅。

 残ったマンドラ婆ちゃんは、零式創世炎の攻撃を受け、半身に火傷を負う。

 俺から距離を取り、大汗を掻いて肩で息をしていた。


「っち……やりおる」

「マンドラ婆ちゃん……ごめん」

「謝ることはないよ。悪いが……まだ死ぬわけにはいかないんでね」

「え」


 マンドラ婆ちゃんは、呪符を投げる。

 呪符は発光───目くらまし。 


「マンドラ婆ちゃん!!」


 光が消えるとそこには……誰もいなかった。


 ◇◇◇◇◇◇


 マンドラ婆ちゃんを退けた俺の傍に、カグヤたちが来た。


「逃げられたわね」

「ああ……」

「でも、何しに来たのかしら」


 カグヤが首を傾げる。 

 すると、ミカエルが言う。


「まるで、あんたの様子を確認しに来たみたい。それと……あいつ、本気じゃなかったわ」

「俺もそう思う。マンドラ婆ちゃんの拳なら、俺の『金剛夜叉』を破ることだって……」

「……とにかく、考えるのは後に」

「ああ……」


 ミカエルが歩きだし、アブディエルが続き、カグヤが俺の背中をパシッと叩いて歩きだす。

 

「…………」


 俺は、なんとなくわかっていた。

 マンドラ婆ちゃんは……まるで、俺に稽古を付けに来たようだった。

 考えたくはない。

 考えたくはない。でも……思ってしまう。


「先生、ラルゴおじさん、マンドラ婆ちゃん、ヴァジュリ姉ちゃん……」


 もしかしたら、みんなは昔のままかもしれない、なんて。

第十一章はここまで。

次回から新章。ホワイトパール王国編です。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] お疲れさまです。 神殺しのために育成してる可能性…? 今後楽しみです!
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