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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第二章・風のラーファルエル

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愛の炎は蒼く輝いて

「…………あれ?」


 真っ暗だった。

 そして、ぼや~っとした感覚。ああこれ、地獄門の中にいた時と同じ感覚。

 そうか……俺、死んじゃったのか。


「……プリム、アイシェラ」


 ラーファルエルのクソ野郎、プリムとアイシェラを殺しやがった。

 それだけじゃない。俺……なにもできなかった。

 俺の炎はあいつに届かなかった。しかもラーファルエルのクソは言った……俺の炎はヌルイって。

 雑魚天使は骨も残らず燃えた。天使の槍も溶けたし、どんな魔獣相手にも負けたことはない。

 でも、ラーファルエルのクソには届かなかった。


「はぁ~あ……せっかく生き返ったのに、ここで終わりかよ」


 闇の中、俺は呟く。

 これからどうなるのかな……このまま魂が闇に溶けちゃうのかな。

 ブルーサファイア王国、行ってみたかった。レッドルビー王国とか言うところも気になるし、まだまだ冒険したかった。

 プリムとアイシェラ……あぁ、シラヌイも。あと船長のおばさん。

 みんな、いい人だった。


「……守れなくて、ごめん」


 そう呟き、俺は意識を闇に委ね─────。




『いい!! 実にいいわぁ~♪ 女の子のために嘆き悲しむその心!! はぁ~……美しい。そして尊い!! 愛、そう愛!! 愛の心!!』

「……は?」




 突如、そんな甲高い声が闇に響く。

 闇に沈みかけた意識を覚醒させて意識を前に向けると─────。


「……だれ? おばさん」

『誰がおばさんだクルァァァッ!! この『第二地獄炎』の女王!! わらわを呼ぶのなら『アヴローレイア・コキュートス・フロストクィーン』様とお呼び!!」

「長っ……」


 アヴなんちゃらと名乗った『青いおばさん』は、青いギラギラした豪華な椅子に座っていた。

 見た目は、とにかく青い。

 青白い肌、青い髪、青い目、青いギンギラドレス、青い宝石……目が痛い。目はないけど。

 おばさん呼びにキレたのか立ち上がり、地団駄を踏んでる。年齢は二十代くらいかな……若いし、おばさん呼びはちょっと悪かった。

 

『んふふ。そなたの少女を想う気持ち!! 実に美しい……わらわ、感動しちゃった♪』

「うわっ……」

『おい、なんじゃ『うわっ……』って』

「いや、感動しちゃった♪ってキツイなーと」

『素直すぎる餓鬼じゃな。まぁそんなところも悪くない』

「は、はぁ……」


 なんだこの青いおばさん……キャッキャしながら落ち着きなく動いてる。

 

『むふふ。いろいろ質問していいかの? そなたとあの少女のなれそめは? 初体験はいつじゃ?』

「は? 初体験ってなに?」

『初心なのね♪』

「…………??????????」

『はぁ~……あのクソ焼き鳥野郎と違って初心な男子は可愛いのぅ。わらわ、恋しちゃいそうじゃ』

「…………」


 駄目だ。付いていけない。

 身体をくねくねさせる青いおばさんは、アイシェラみたいにだらしない顔をしてる。

 もうめんどくさいな……さっさと寝たいんだけど。


『ふぅ~……さて本題じゃ。おぬしのぴちぴちした純情な恋心を堪能させてもらった礼に、わらわの炎をくれてやろう。どうじゃどうじゃ? 第二地獄炎の炎じゃ。クソ焼き鳥野郎の炎より使いやすいぞ?』

「いやいらねーよ。俺、死んじまったみたいだし」

『アホ抜かせ。おぬしが死んだら同化したわらわも死んでおる。まだ生きてるぞ』

「え、そうなの? でも、ラーファルエルのクソは強いし、倒せるかどうかわからんしなぁ」

『ふん、あのような雑魚天使に負けるほうがどうかしておる。わらわの力あげちゃうからワンモアトライ!! なのじゃ』

「わ、わんもあ? あとさ、恋心ってなんだ?」

『おぬしがあの少女を想う気持ちじゃよ。つまり……愛じゃ!!』

「あ、愛!? うそ、愛って船を動かす力じゃねーのかよ!?」

『……何を馬鹿なことを言っておる。とにかく、おぬしはまだ生きておる。愛の力で天使をやっつけるのじゃ!!』

「…………そうだな。よーし、ここからはプリムとアイシェラとシラヌイの弔い合戦だ!!」

『レッツゴーなのじゃ!!』

「おおー!!」


 青いおばさんが俺に向かって手を伸ばすと、俺の魂が蒼く輝いたような気がした。

 そして、全てを理解する。これが第二地獄炎の炎……アヴロ、アヴ……えっと、名前なんだっけ。


『アヴローレイア・コキュートス・フロストクィーンじゃ!!』

「そう、それそれ。長いから青いおばさんでいいや」

『なんじゃとこの餓鬼!? あ、待てーーーーーッ!!』


 俺の意識が覚醒する─────。


 ◇◇◇◇◇◇


「ふぁぁぁ~……なーんだ、大したことないじゃん。地獄門の呪術師っていうから期待したけど、所詮はこんなもんかぁ……やれやれ、こんな連中に追い詰められたなんてね」


 ラーファルエルは、船の残骸の上で大きく伸びをして欠伸をする。

 フレアが海に沈んだのを確認し、ついでに船も全て沈めた。第七王女プリマヴェーラも死んだようだし、モーリエの失敗と呪術師の始末を両方片付けたことで気分がよかった。


「さーて帰ろっかな。アルデバロンの旦那に報告して、人間の女でも抱こうっと」


 ラーファルエルはもう一度欠伸をして、天使の翼を出す。

 あとは帰るだけ。

 帰るだけなのだが……まだ、終わっていない。


「……ん?」


 ふと、異変に気が付く。

 

「…………っ」


 ブルリと、ラーファルエルは震えた。

 恐怖から来る震えはある。だが、ラーファルエルは生まれてから一度も恐怖などしたことがない。ならば、この震えの正体は……実に単純だった。




「……さ、寒い(・・)




 外気温が、急激に低下。

 吐く息が白くなり、身体が熱を求めてガタガタ震える。

 あり得ないことに、ラーファルエル周囲の海が……ピキピキと凍り始める。


「な、なんだ……こ、氷?」


 そして、ラーファルエルは見た。

 海が、蒼く燃えていた(・・・・・・・)

 海面を、蒼い炎が燃えていた。


「…………」


 思考が追いつかない。

 そこに、さらなる衝撃がラーファルエルを襲う。

 いつの間にか、ラーファルエルの背後に誰かが立っていた。

 凍った海の上に立つのは……。




「第二地獄炎、『グランド・フリーズ』」




 そこに立つのは、全身が蒼い炎で燃える呪術師の少年だった。

 ラーファルエルを見る目は、最初から変わっていない。


「なっ……なんで、噓だろ!?」

「嘘じゃねーよ。さぁて……続き、やろうぜ」


 フレアは指をコキコキ鳴らし、甲の型で構えを取る。


「呪闘流甲種第三級呪術師ヴァルフレア。ラーファルエル……お前を呪ってやるよ!!」


 第二ラウンド、いや……最終ラウンドの始まりだった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[良い点] まだまだ強化レベル1段階の状態の相手にイキられてもまぁ、こうなりますよねーとしか。 こっちがあと何回変身残してると思ってんだ。
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