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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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BOSS・裏切りの八堕天使『博』のコクマエル②

「さて、次のゲーム……」

「待った」


 と、クロネが止めた。

 コクマはクロネを見る。ネコミミと尻尾が揺れていた。

 クロネは、アイシェラをどかせて座る。


「もう一回、ウチと勝負にゃん」

「んー、同じゲームはしないつもりだったけど……きみ、自信ありそうだし、いいよ」

「にゃん」


 クロネは頷く。

 すると、ナキが背後から言う。


「大丈夫なのか?」

「にゃん。こういうのは駆け引きにゃん。パスは二回まで使えるし、あいつの感情を読み取ってやるにゃん……」

「クロネ、すごい自信です!」

「私は何も言わん……敗北者だからな」

『わん』


 アイシェラを慰めるようにシラヌイが鳴いた。

 コクマは、面白いのかクックと笑い、口元を押さえる。

 

「ふふ、楽しくなってきたね。血なまぐさい殴り合いなんかより、こういう運を競うゲームはとても楽しいよ」

「にゃん……あんた、変なやつにゃん」

「よく言われる。ああ、ちなみにだけど、このポーカーってゲームを生み出したのは人間なんだ。ほんと、人間の想像力は天使なんかとは桁が違うよ!」


 コクマは楽しそうに笑う。それは本心からの笑いだった。

 アルミサエルは興味がないのか、カードをシャッフルして並べる。部屋の隅では、プルエルとカスピエルが、興味なさそうにしていた。どうにも、仲間意識が薄いようだ。


「では、お先にどうぞ」

「…………」


 クロネは、この瞬間から表情を殺した。

 暗殺者としての顔───感情を殺し、対象を殺すためだけの顔だ。

 プロの暗殺者であるクロネは、心を揺らさないためのメンタルトレーニングを積んでいる。

 自分のカードが何なのか。気にはなるが顔には出さない。


「じゃ、ボクも……」


 コクマがカードを額に。

 数は10。クロネは迷うことなく言った。


「降りるにゃん」

「お? 早い決断だね」


 カードをテーブルの上に。

 クロネのカードはなんと13。


「あはは。パスはもったいなかったね」

「…………次、にゃん」


 クロネは、悔しがることはない。

 淡々と、アルミサエルに次のカードを要求する。

 そして、コクマに言う。


「次はそっちに譲るにゃん」

「ご親切に」


 コクマはカードを額へ。数は……7だ。

 なんとも微妙な数。クロネもカードを額へ。

 

「さ、どうする?」

「…………」


 コクマの表情は余裕があった。

 7。半分より上。パスはもう一度可能。

 勝負に出るか。


「───……降りるにゃん」


 クロネはカードを下ろす。

 数は……4だった。


「うん。なかなかいい勘してるね。ボクの表情、どうだった?」

「…………」


 クロネの表情は変わらない。

 だが、内心は違った。

 コクマの表情から、何も読み取れなかったのだ。

 クロネより数字が高いにも関わらず、余裕など感じられなかった。むしろ、人形のように静かで、心が穏やかだったのだ……クロネは、一筋の汗を流す。


「さ、もう一回だけパスできるよ。でも、パスしたら次は強制的に勝負だけどね」

「…………」


 アルミサエルがカードを並べ、コクマが「どうぞ」と言う。

 クロネは、真ん中のカードを引こうと手を伸ばす。


「手、大丈夫?」

「ッ」


 ビクッと手を引いてしまった。

 クロネの手は、汗で滲んでいた。

 コクマは、そっとハンカチを差し出す。


「い、いらないにゃん」

「そう? ま。いいけどね」

「…………」


 クロネは、カードを引いた。

 コクマもカードを引き、額へ。

 コクマの数は……6だった。

 どうするべきか。


「…………」


 たらりと、汗が流れる。

 勝てる可能性は高い。だが、コクマの表情が気になる。

 強気なのか。そう見せているだけなのか。微笑を浮かべているだけ。

 勝負すか、否か。


「く、クロネ……」

「……っ」

「……っく」


 プリム、ナキ、アイシェラも手に汗握る。

 助言はできない。そもそも、何を言えばいいのかわからない。

 暗殺者としての表情は、崩れていた。

 そして───クロネは、叫ぶ。


「っっ───勝負、にゃん!!」

「ん、じゃあ勝負」


 コクマは、ゆっくりカードをテーブルの上へ。

 クロネも、叩き付けるようにカードをテーブルの上へ。

 そして───。


「───っ、あ」

「はい。ボクの勝ち。いやー、なかなか緊張したよ」


 クロネの数は───1、だった。


 ◇◇◇◇◇◇


「面目ない、にゃん……」

「だ、大丈夫です! なでなでしちゃいますよー!」

「にゃん……ごろごろ、って撫でんにゃ!」


 クロネを慰めようとしたプリムだったが、拒否された。

 これで二敗。

 残りはプリムとナキ。

 コクマは、カードをアルミサエルに全て渡した。


「おーいカスピエル。次のゲーム持ってきてー」

「む、承知した」


 残り二戦。

 カスピエルが持ってきたのは、黒いコップと二つのダイスだった。


「じゃ、次はこのゲームで勝負しよっか」


 コクマエルのゲームは、まだまだ終わらない。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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