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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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BOSS・裏切りの八堕天使『博』のコクマエル①

 プリム、アイシェラ、クロネ、ナキ、シラヌイ。

 そして、コクマことコクマエル。

 プリムたちは、コクマから逃れるために、コクマと勝負しなければならない。戦いではなくゲームで。

 大きなソファに座ったコクマは、ルールを説明する。


「じゃ、ルールを説明するよ。きみたちは四人だから、勝負は四回。そのうち一回でもボクに勝てれば、きみたちの勝ち。ここから解放してあげる」


 つまり、勝負は最高で四回。一対一の勝負だ。

 これに、ナキが反応する。


「内容は? 天使であるお前に有利な勝負じゃねーだろうな」

「安心して。公平な勝負をするつもりさ。腕力や特殊能力がものを言わない勝負をね」


 コクマはにっこり笑う。

 ナキは「ふん」と鼻を鳴らし、腕を組んだ。

 クロネは周囲を警戒する。部屋の間取り、出口、窓、物の位置から、いざという場合どうすれば効率よく脱出できるかを計算していた。

 シラヌイは……大きな欠伸をして、床で丸くなる。


「じゃ、最初の勝負は……ポーカーだ」

「「「「ポーカー?」」」」

「うん。まずは小手調べ。運試しさ」


 コクマが手をパンパン叩くと、ドアが開いた。

 そして、手に四角い箱を持った青年が入ってきた。

 水色のローブ、水色の髪、水色の眼。そして顔に刺青の入った青年だ。歳は二十代後半ほどで、何やらブツブツ呟いている。


「ご苦労様、カスピエル」

「まったく。吾輩にこんな下働きをさせるなんて……ブツブツ……コクマエル。約束は覚えているだろうな?」

「もちろん。人間が設計した《天体望遠鏡》の図面だろう? ちゃんと後で書き起こしてあげるよ」

「うむ!! ふふふ。今は失われし《星》を観測するための技術!! 天使の技術では作れない人間だけが生み出せる至高の道具!! ははははは!! 楽しみである!!」


 いきなり高笑いをした青年ことカスピエルは、持っていた木箱をテーブルの上に置く。

 コクマは、苦笑しながら説明した。


「ああ、彼は『裏切りの八堕天使(ブリューゲル・エイト)』の一人、『星』を司る堕天使カスピエル。見ての通り、空に浮かぶ『星』のことしか頭にない奴でね……まぁ、害はないよ」

「は、はい……」


 カスピエルは、何やらブツブツ呟いていた。

 そして、メモを取りながら部屋の片隅に移動。そのまま何かを書き始めた。

 コクマは、カードを手に持って広げる。


「このカードには、1から13までの数字が書かれている。これをシャッフルして、並べる」


 机の上に、1から13までの数字が書かれたカードが並ぶ。

 だが、表面ではなく裏面に並べたので、どれがどの数字だかわからない。

 コクマは、その内の一枚を手に取り……額に持ってきた。


「ぼくにはこの数字がわからない。でも、きみたちは見える。さ、キミも同じようにやってみて」

「は、はい」


 プリムは、言われた通りカードを手に取り、数字を見ないように額に持ってきた。


「あとは簡単。このままカードを出して、数字が大きい方が勝ち。自信がない場合は勝負を降りることができる。パスは三回までで、三回目のパスを使い切ったら強制的に勝負することになる。じゃ、いくよ……」

「え、あの」

「あはは。これは練習だから」


 カードをスッとテーブルの上に。

 プリムのカードは5、コクマのカードは3だった。


「これで、きみの勝ち……簡単だろう?」

「チッ……確かに、これは運のゲームだな」

「じゃ、ルール説明はおしまい。誰が勝負する?」


 すると、アイシェラが挙手。


「私がやろう」

「アイシェラ……」

「お嬢様。私は勝ちます。私が勝ったら結婚しましょう」

「嫌」

「ふぅっ……よし。気合が入った。勝負だ」


 一瞬悶えたアイシェラをプリムは嫌そうに見て、ソファから離れた。

 アイシェラは、ソファにどっかり座る。

 そして、再び手をパンパン叩いた。

 ドアが開き、入ってきたのは……和服を着た美女だった。

 長い桃色の髪は丁寧にまとめられ、簪が刺さっている。どこか妖艶な雰囲気がある美女だった。


「彼女はアルミサエル。ゲームの審判を任せようと思って呼んだんだ」

「待てよ……天使が審判だと? 納得できると思うか?」

「んー、大丈夫だよ。彼女は絶対に不正しない。だって、神にも天使にも人間にも興味がないからね」


 と、アルミサエルは頷いた。


「その通りや。うちは俗世に興味なんてあらへん……興味あるのは『花』だけや。コクマエル、約束破ったら、どうなるかわかっとるやろね……」

「わかってるって。植物用栄養剤のレシピ、わたしてあげるから」

「ふん……」


 アルミサエルは、冷たい目でコクマを見た。


「ま、見ての通り。彼女は『花』にしか興味がない。神の命令も同族の天使も人間も、彼女にとってはどうでもいいことなんだ。ボクの利益に繋がることはやらないよ。だって、彼女になんの得もないからね」

「……まぁ、いいぜ。とりあえず納得してやる」


 アルミサエルは、ナキのことなどどうでもいいのか、顔すら向けない。

 そして、カードをシャッフルし、テーブルの上に並べた。


「さ、お好きなのをどうぞ」

「…………」


 アイシェラは、十三枚のカードを一通り見て……真ん中のカードを掴む。

 コクマは、特に悩みもせず、右端のカードを掴んだ。


「では……用意」


 アルミサエルが呟き、アイシェラとコクマはカードを額に。

 アイシェラのカードはプリムたちにも見えない。

 すると、アルミサエルが言った。


「当然だけど、会話は禁止。破ったらお仕置きがあるからね」


 プリムたちは、ようやく気付いた。

 カスピエルの隣に、水浸しの女が立っていることに。プリムたちをここまで連れてきたプルエルが、ルール違反をしないようにジッと見ていた。

 アイシェラは、コクマの表情を見る。


「…………っ」


 見た。

 一瞬だけ、目元が大きく開いた。

 口が空いた。だが、すぐに閉じられる。

 アイシェラは、コクマのカードを見た……数は4。

 ニヤリと笑う。


「勝負する?」

「当然!!」

「えっと……あー、うん」


 コクマは、自信なさげに乗った。

 そして───カードがテーブルの上に開かれる。


「えっ」

「うん、ボクの勝ち」


 コクマの数字は4。

 アイシェラの数字は……1だった。

 つまり、アイシェラの敗北。


「表情で騙すなんて初歩の初歩じゃないか。きみ、面白いくらい簡単に騙されたね……まぁ、素直で可愛いというか、騙されやすいというか」

「なななな……っ!! こ、この私が……っ!!」

「じゃ、この勝負はボクの勝ち。次の勝負といこうか」


 コクマはにっこり笑い、自信満々に腕を広げた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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