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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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フレア・カグヤ・ミカエル①/さて、どこへ行く?

 果物を食べ終えると、だんだんと薄暗くなってきた。

 さすがに、今日はもう動きたくない。

 だが、焚火くらいは必要だろう。

 俺は再び洞窟の外へ出て、薪を大量に拾ってくる。そして、火力を調節して火を点けた。

 洞窟の中は、一気に明るくなる。

 ミカエルは再び寝てしまったので、俺とカグヤだけの会話となった。

 俺は、手首のブレードを展開し、大きめの角材を削る。


「ねぇ、これからどうすんの?」

「どうすんの、って……プリムたちを探すしかないだろ」

「場所。心当たりは?」

「ない。あ、そういや手紙に書いてあったな」


 カグヤは、洞窟にあった手紙を広げる。

 

「『仲間は預かった。返してほしければ取り返しに来てください。場所は、きみたちが向かうところであってると思う。じゃ、そういうことで。コクマ』……きみたちが向かうところ、だって」

「俺たちが向かうところ?……どこだよ」

「知らないし」


 カグヤは手紙を放り、焚火に向かって小枝を投げた。

 俺たちが向かうところ、か。


「俺たちが向かうのは、プリムたちのところだよな」

「その場所がわかんないんでしょーが」

「だったら、どこ行きたい?」

「んー……」


 カグヤは考え込む。

 そして、俺に言う。


「アンタはどこ行きたい?」

「そりゃ、ホワイトパール王国だろ。この領土で一番デカい国なんだろ? 面白そうだし観光してみたい」

「……アタシもよ。あれ? もしかして……」

「……俺も思った。『きみたちが向かうところ』って、俺たちが行きたいところなのかな?」

「んー、よくわかんないけど、そうだったら面白そうね」

「じゃ、行ってみるか? ホワイトパール王国」

「そうね。ここにいてもしょうがないし、先に進まなきゃ!」

「よし決まり。じゃあ、俺らの目的地はホワイトパール王国だ! ミカエル、いいか?」

「…………」


 ミカエルは寝ていた。

 だが、呼吸が荒い。

 カグヤがそっと額に触れると、表情が曇る。


「熱がぶり返してる。フレア、水ある?」

「お、おう……よしできた。木を削って桶っぽいの作ったぞ。近くの川の水汲んでくる」

「飲み水もね」

「わかった」

 

 俺は川の水を汲み、第四地獄炎で燃やす。

 こうすると、水が綺麗になるのだ。これも零式創世炎でパワーアップしたおかげだな。ゼロ、本当にありがとうございました。

 洞窟に戻ると、カグヤはミカエルの顔を拭いていた。


「身体拭くから、アンタは外で待ってなさい。覗いたら蹴る」

「はいよ。それにしてもお前、優しくなったな」

「うっさい。ま、いろいろあんのよ」


 ミカエルの世話をカグヤに任せ、俺は洞窟近くの木によじ登り、空を眺めていた。


 ◇◇◇◇◇◇

 

 翌日。

 ミカエルの体調は良くならなかった。 

 少しだけ起きて果物を齧ると、すぐに寝てしまう。

 なので、俺がミカエルを担いで移動することにした。


「ところで、ホワイトパール王国ってどっちだ?」

「アタシが知るわけないでしょ。ま、来た道戻ればデカい街道に出ると思うし、適当に進んでれば村くらいあるでしょ。そこで補給してからホワイトパール王国に行くわよ」

「だな。お前、けっこう考えてるじゃん」

「うっさい。蹴るわよ」


 カグヤは歩きだした。

 俺は、ミカエルを背負ったまま声を掛ける。


「ミカエル。俺の背中で悪いけど、ゆっくり休んでいいからな」

「…………ん」


 水晶渓谷を出て、街道へ出た。

 馬車で通った道なので、覚えている。


「こっちに戻るとあの騒ぎがあった村に行っちゃうから、今度はこっちね」


 ダークスコーピオンと戦った村には行かず、その反対方向へ。

 天気もよく、街道をのんびり歩いていると、カグヤは言った。


「そういや、アンタとこうやって歩くの久しぶりね」

「だなぁ。イエロートパーズ王国以来かな。あんときはシラヌイ入れて二人と一匹だったし」

「懐かしいわね。ダンジョンで遊んで、最上階でミカエルとアンタが戦って、アタシたちはフッ飛ばされて、ブラックオニキスの吸血鬼と戦って……」

「けっこう冒険したよな。ははは、世界って広いわ」

「んで、今は天使に狙われてる。ホント、アンタといると退屈しないわ」


 と、のんびり笑い合っていた。

 

「そういや、コクマとかいう奴、知り合いなのか?」

「ええ。レッドルビー王国でちょっとね」

「ふーん……レッドルビー王国か。ニーアの奴、元気にしてるかなー」


 レッドルビー王国を出てどのくらい経過したかな。

 こうしてのんびりホワイトパール王国を歩いているのが不思議な感じだ。

 街道をのんびり歩き、小さな林に入っていくと……。


「待ちな」


 大柄の男が、俺たちを引き留めた。

 

「……なんだお前。まさか、天使か!?」

「は?」

「フン。別にいいけどね、何度襲撃してきたって返り討ちよ」

「……わけわからん。まぁいい。ここから先を進みたいなら通行料を支払いな。それか……へへ、お前とお前の背中で寝てる赤髪のお嬢ちゃんでもいいぜ?」

「「…………」」


 俺とカグヤは顔を見合わせる。

 おかしい。なんでこんな小物っぽい返答をするんだ?

 すると、周囲の藪から大勢の男たちが出てきた。

 

「抵抗するなよ? ま、してもいいが、この数相手じゃどうなっても知らねぇぜ?」

「「…………」」

「はは、ビビったか? さ、出すもんさっさと出しな」

「おい、カグヤ……これって」

「ええ。たぶん……間違いない」


 俺とカグヤは同時に言う。


「「盗賊……!!」」

「あたり。へへ、運が悪かったな」


 俺とカグヤは、肩の力を抜いた。


「あ~~~~焦った。また天使かと思った」

「そうね~……はぁ、ただの盗賊でよかったわぁ」

「だな。ははは、まだ緊張してやがる」

「アタシも。天使ばっかり戦ってたしねー」

「だよなぁ」

「「あははははっ!!」」

「おいテメーらなに笑ってやがる!! ってか、そこの赤髪女、寝てんじゃ」


 男の手がミカエルに伸びた。

 俺は、男の手首を掴み、そのまま握り砕いた。


「いっぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「おい、触るんじゃねぇよ……殺すぞ」

「っひ」


 男は手首を押さえ尻餅をつく。

 すると、周りの盗賊たちが武器を抜いた。


「な、舐めやがって!!」「ガキ三匹だ、やっちまえ!!」

「女は残せ。男は殺せ!!」「ぶっ殺せ!!」


 俺は、カグヤに言った。


「任せていいか?」

「ええ。ミカエル、ちゃんと守りなさいね」

「当然だろ」


 カグヤは、首をコキコキ鳴らし足を掲げた。


 ◇◇◇◇◇◇


「「「「「申し訳ございませんでしたぁぁぁぁっ!!」」」」」


 ボコボコにブチのめされた盗賊たちは、俺たちに向かって土下座した。

 カグヤはどうやってトドメを刺そうか考えていたが、俺が止める。


「ちょうどいいや。いろいろ教えてくれよ」

「な、なんなりと」

「ホワイトパール王国ってどっちだ?」

「ほ、ホワイトパール王国ですか? えっと……この街道を道なりに進むと村があります。その村を北西に進むと、ホワイトパール王国です」

「お、けっこう近そうだな。カグヤ、行こうぜ」

「そーね。ところで、こいつらどうする?」

「そうだな……じゃあ、こうするか」


 俺の腰に、紫色のベルトが装着される。

 第七地獄炎の魔神器『アンド・ヴァラ・ナウトSpec2』だ。元は指輪だったが、ゼロによって腰を覆うベルトへと姿を変えた。


「真・第七地獄炎、『霊無幻視(ゴーストフォース)』」


 腰から紫色の炎が吹きあがり、実体のない浮かぶ骸骨へと姿を変えた。

 数は三十くらい。幻の骸骨は、盗賊たち一人一人にまとわりつく。


「「「「「ひっぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」

「ここから一番遠い冒険者ギルドに行って自分たちの罪をきっちり話してこい。そうすればその骸骨は消えるから。じゃ、全員走れーっ!!」

「「「「「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーッ!!」」」」」


 盗賊たちは、幻の骸骨に追われながら走り出した。

 

「よし終わり。じゃあ、ホワイトパール王国に行くか」

「そうね。その前に、途中の村でミカエルを休ませましょ」

「ああ。せっかくだし、美味いもん食おうぜ。金あるか?」

「ない。アンタは?」

「えっと……よし、財布ある。金貨も入ってる」

「じゃ、豪遊ね!」

「……後で返せよ」

「男のくせにうだうだ言わないの!」

「おまえ、そういう時ばっかり男とか言うなよ」


 俺、カグヤ、ミカエルは、のんびりとホワイトパール王国へ向かった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] 「ホワイトパール王国へ行く」って、フレア達既に王国領内に入ってんじゃん!! 王都の間違いかな?
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