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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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ミカエルの異変

 ラーファルエルたちは逃げ出した。

 もう二度と天使としての力は使えないそうだ。使うと全身に焼かれるような激痛が走り、神に救いを求めても炎で焼かれるらしい。肉体はもちろん、魂をミカエルの炎で包み込んでいるみたいだ……簡潔に言うと、『炎の呪い』みたい。

 ミカエルは、右手を軽く握って開く。そこには、透明な玉があった。


「《神玉》……ロシエルが持ってたの」

「それが、さっきのパワーアップの正体か」

「ええ。天使の力を高める神の力……」


 ミカエルは、勝ったのに全く嬉しそうじゃなかった。

 なんとなく察した。カグヤもだ。


「ロシエル……ごめんね」


 ロシエル。

 あの光を使ってた天使がいない。

 どんな戦いがあったのか見ていないが、悲しい結末だったのだろう。

 俺もカグヤも、そのことに関してツッコむことはなかった。

 俺は、カグヤとミカエルに言う。


「とりあえず、プリムたちの元へ戻るか」

「そうね。いつまでも待たせちゃ悪いわ」


 カグヤが頷き、ミカエルを見た。

 ミカエルは───……。


「…………ぅ」


 そのまま、ばたんと倒れた。

 いきなりのことで、俺もカグヤも反応できなかった。

 そして、俺は慌ててミカエルを抱き起す。


「お、おい!? どうしたんだよ!!」

「ぅ、ぁ……はぁ、はぁ、はぁ」

「見せて。……すごい熱よ。アンタ、どうしたのよ」

「……たぶ、ん……《神玉》の、副作、よう……か、も」


 息が荒く、熱が高い。それに、ミカエルの翼から羽がパラパラ落ちていた。

 俺の左足に『天照如意具足』が白い炎と共に顕現する。元は羽衣だったが、ゼロにより改良され、今は左足を覆う具足と化している。


『これは……ふむ、天使の力と神の力が混ざりあってますね。水と油のような力がぶつかり合い、肉体に影響を及ぼしています』


 左足から聞こえてきたのは、『天照皇大神』の声。

 俺は、ミカエルを抱きながら言う。


「どうすれば治せる?」

『ふむ……私の力を体内に流し込んでください。私の炎で、トリウィアの力を焼き尽くしましょう。ですが……すぐに完全な状態には戻りません。しばしの休息が必要かと』

「わかった。で、体内に流すって? 鼻に指を突っ込めばいいのか?」

「アンタ、こいつも一応女なんだから、配慮しなさいよ……」


 カグヤが呆れていた。

 だったらどうしろってんだ。口に指を突っ込めばいいのか?

 すると、天照皇大神が言う。


『ならば、接吻で。口移しで炎を流し込んでください』

「わかった。ミカエル、口開けろ」

「え、ちょ、アンタ」

「むっぐ」


 俺は、ミカエルの口に吸いつき、炎を流し込んだ。

 ミカエルの全身が白い炎に包まれ、ミカエルは目を見開く。

 口を離すと、カグヤが俺の頭をブッ叩いた。


「いっで!?」

「こ、こ、こ……この馬鹿!! 何してんのよ!?」

「え、治療……」

「ああもう!! アンタってやつは、アンタってやつは……!!」

「でも見ろよ。ミカエルの呼吸、落ち着いてきたぞ。まだ熱はあるけど……とりあえず、このままプリムたちのところまで運ぼう」

「…………バカ」


 そっぽ向くカグヤを無視し、俺はミカエルを担いで歩きだした。


 ◇◇◇◇◇◇


「「……あれ?」」


 プリムたちと別れた洞窟に戻ると、そこには誰もいなかった。

 プリムたちだけじゃない。馬車も白黒号もない。

 まさか、洞窟を間違えたのか?


「ここ、だよな?」

「え、ええ。間違ってないと思うけど……あれ?」

「ん、どした?」

「あれ、見て」


 カグヤが指さしたところに、一枚の羊皮紙が落ちていた。

 それを拾い、カグヤが読み上げる。


「えーっと。『仲間は預かった。返してほしければ取り返しに来てください。場所は、きみたちが向かうところであってると思う。じゃ、そういうことで。コクマ』…………はぁ!? こ、コクマぁ!?」

「うおっ、デカい声出すなよ。知り合いか?」

「レッドルビー王国で会った学者。なにあいつ、なんでこんな……あ!! もしかしてあいつ、天使!?」

「んなことより。プリムたちはどこだって?」

「……『きみたちが向かうところ』って」

「どこだよ」

「アタシが知るわけないでしょ」

「…………」

「…………」


 しばし、向かい合う俺とカグヤ。

 え、やばくね? 荷物も地図もなにもないし。


「……どうする?」

「……とりあえず、少し休むわよ。戦いで疲れたし、ミカエルも休ませないとダメでしょ」

「だな。ミカエル、下ろすぞ」


 ミカエルを下ろし、横たえる。

 毛布とか気が利くものもない。悪いけど地べたで我慢してくれ。

 

「腹減ったなぁ」

「同じく……狩りでもする?」

「いいけど。でもよ、俺らの戦いでこの辺の動物とか魔獣とか逃げちまったぞ」

「じゃあ、果物とか」

「それしかないな。どっちがいく?」

「アンタに任せる」

「わかった」


 俺は立ち上がり、洞窟の外へ出た。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 カグヤは、ポケットからハンカチを取り出し、ミカエルの汗を拭う。


「ったく。手間かかるわね」

「…………ぅ」

「起きた? 調子はどう?」

「……最悪。身体が重い……頭痛いし、なんか熱っぽい」

「風邪みたいな症状ね。水……あ、水ない。その辺で汲んでくる」

「……ありがと」

「…………」


 素直にお礼を言うミカエルに、カグヤは少し驚いた。

 そして、聞いてみた。


「ねぇ、さっきの覚えてる?」

「え……?」

「アンタの身体。フレアが治したのよ」

「そう、なの? あったかい力が流れ込んできたのは覚えてるけど……」

「それ、どうやったかわかる?」

「…………聴きたいような、聞きたくないような」


 カグヤは、にんまりと笑い、自分の唇に指をあて、そのままミカエルの口元を指さす。ミカエルは怪訝な表情をして……意味を理解した瞬間、一気に赤くなった。


「ま、まさか」

「そういうこと。ま、フレアに感謝するのね」

「~~~~~~っ!!」


 すると、果物をどっさり抱えたフレアが戻ってきた。


「おーい。うまそうな果物見つけたぞ」

「おかえり。あーお腹へったぁ」

「…………っ」

「お、起きたかミカエル。果物食えるか?」

「…………」

「おーい?」

「今はそっとしておきなさいよ。それより、早く果物ちょーだい」

「お、おう。なんだよ一体……?」


 フレアは、意味が分からず首を傾げた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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