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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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BOSS・憎悪する者たち②

 ラーファルエルが『神玉』を飲み込んだ瞬間、圧が増した。

 それだけじゃない。風の規模が以前より強力になり、いくつもの竜巻がラーファルエルの周囲に生み出されていた。

 俺は、右足に第二地獄炎、背中に第五地獄炎を纏い飛ぶ。


「へぇ~っ、複数同時に地獄炎を……」


 ラーファルエルは、メガネをくいっと上げて笑っていた。 

 以前と同じだ。こいつ、俺を侮っている。

 俺は、背中の第五地獄炎を燃やし、羽のように広げた。

 トンボのように広がる翅は、正直気持ち悪い……もっとこう、鳥みたいな翼がよかった。


「真・第五地獄炎、『緑翅』!!」


 俺は、空中で複雑な軌道を描きながら飛んだ。

 トンボのように、トンボよりも速く。

 パワーアップした第五地獄炎は、炎の形状を蟲のようにしなくても使えるのだ。

 

「荒ぶれ、『神風の祝福槍ゲイル・オブ・ゴスペル』」


 ラーファルエルは、神器を自分の周りに浮かべた。


「え……? な、七本?」

「ま、そーいうこと」


 ラーファルエルの周りに浮かんでいた槍は、なんと七本。

 以前は三本だけだったのに、増えていた。

 ラーファルエルは、竜巻と槍を同時に操作する。


「『荒ぶる風の輪舞ダンシングゲイル・ロンド』」

「ッ!!」


 竜巻と槍が空中で踊る───……速い。

 俺は、右足を凍らせて薙ぎ払う。


「真・第二地獄炎、『アイシクル・チェイン』!!」

「はっ」


 凍った足から伸びた氷の鎖が、槍を叩き落す───……ことはなかった。

 なんと、全ての槍が氷の鎖を避けた。それだけじゃない、氷の鎖に向かって正確に飛び、鎖そのものを破壊した。


「パワーアップした『神風の祝福槍ゲイル・オブ・ゴスペル』は、オレに向かってくる攻撃を自動で撃墜する。飛び道具は効かないよ」

「だったら───……直でブン殴る!!」

「だよねぇ?」


 ラーファルエルに接近しようとした瞬間、竜巻が俺に向かって飛んできた。

 俺は、全ての竜巻を華麗に回避───してるのだが、ラーファルエル自身も動くせいでなかなか接近できない。

 完璧な遠距離戦……ラーファルエルの野郎。


「すごく強くなったみたいだけど、頭の方は相変わらずだね。キミの拳は怖いから、もうオレから近づくことはないよ」

「この野郎……!!」

「さ、続けようか。それと───……敵はオレだけじゃないよ」

「えっ」


 竜巻の間を縫うように、フウゲツが俺より速く飛んできた。

 全身に第五地獄炎を纏っている。さらに、手には二本の剣を持っている。

 

「嵐の型───『天牛斬(カミキリ)』!!」

「あっぶねぇ!?」


 俺は右手を反らし、隠しブレードを展開。

 剣の一本を受け止め、もう一本はフウゲツの手を掴んで止めた。

 フウゲツは手を捻り、一瞬で抜け出す。

 第五地獄炎を身に纏っているのかと思いきや、フウゲツの全身に『トンボ』が止まっていた。


「そうか、そのトンボがお前の身体を……」


 第五地獄炎の蟲を身体に付けて飛んだり、四肢にくっつけたトンボを操作して高速で剣を振るう。

 空中高速戦闘。それが、呪闘流『嵐』の型。

 フウゲツは、両手の剣をくるくる回して構えを取る。


「風の如く貴様を斬る」

「やってみろ」

「おっと、オレも忘れないでくれよ?」


 二対一。俺は首をコキコキ鳴らして気合を入れた。


 ◇◇◇◇◇◇


 サンダルフォンとメタトロンは、すでに神器を出していた。

 サンダルフォンの『白銀ノ鋼(アン・オブ・タニウム)』と、メタトロンの『マニピュレイ・ギア』だ。

 ドロドロした液体が空中に広がり、メタトロンは両手に嵌めた手袋でそれを操る。

 カグヤは、つまらなそうに言った。


「ねぇ、こんなもん?」

「「……は?」」

「アンタら、つまんないのよ」


 カグヤの周りには、鉄の杭や剣、槍などが突き刺さっている。

 全て、二人が飛ばしてきたものだ。だが……ただ飛んでくる槍や剣など、カグヤにとっては何の脅威でもない。

 カグヤの足技を警戒しているのか、ラーファルエルと同じ遠距離戦法だった。

 

「アタシにビビる気持ちはわかる。はっきり言ってあげる。アンタら程度、今のフレアにかすり傷一つ付けられないわよ」

「「…………」」


 サンダルフォンとメタトロンは真顔だった。

 そして、メタトロンは言う。


「ま、そういうと思った」

「そうね。人間らしいわ」

「姉さん、やる?」

「いいわ。今ならできる」

「うん。じゃあやろう」

「ええ、メタトロン」


 サンダルフォンは、メタトロンの頬に手を添えた。


「我が名はサンダルフォン。そしてあなたは半身たるメタトロン」

「我が名はメタトロン。そしてあなたは半身たるサンダルフォン」

「愛と」

「心と」

「魂と」

「命を」

「「そして、全てを一つに」」


 サンダルフォンとメタトロンがキスをした。

 そして、空中に浮かんでいた『白銀ノ鋼(アン・オブ・タニウム)』が、二人を包み込む。

 『白銀ノ鋼(アン・オブ・タニウム)』がぐにゃぐにゃと形を変え……。


「……わお」


 そこに、一人の『戦乙女』が現れた。

 銀色の鎧を纏った女騎士だ。

 手には剣と盾を持っている。長い金髪が風になびいていた。

 戦乙女は、カグヤに言う。


「「これが、ボク(わたし)の最終形態。『ヴァルキリー・ソウル』だよ」」


 サンダルフォンとメタトロンの声が重なっていた。

 ヴァルキリーと名乗った戦乙女は、カグヤの前にゆっくり降り立つ。


「「さぁ、やろうか」」

「わざわざ地上に降りてくるなんてね。ま、いいわ……どんな姿になろうと、ブチのめせばいいだけ」


 カグヤは右足を掲げ、構えを取った。


「神風流七代目皆伝『銀狼』カグヤ。言っとくけど、泣いたって許さないからね」


 戦いが、始まった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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