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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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BOSS・裏切りの八堕天使『天』のロシエル①

 天使の出生。

 天使は、男女の交わりによって生まれるのではない。ある日突然、聖天使教会の『生誕宮殿』という特別な部屋で生まれるのだ。

 生まれるという表現は正しくない。天使は、天から光に包まれて降りてくるのだ。

 誰一人例外なく、天使はそうやって生まれてくる。

 

 今から数百年前。

 空から光に包まれ、一人の天使が生まれ落ちた。

 天使は『ロシエル』という名を与えられ、たった十年で階梯天使を圧倒する『光』を発するようになった。その光を分析し、天使は『光』を武器として操れるようになった。

 ロシエルは、天才だった。

 最強天使ミカエルを超える才能。次期聖天使教会指導者。

 全ての天使が、ロシエルに期待していた。

 だが……たった一つ、誤算があった。


 聖天使教会十二使徒『天』のロシエルは、誰よりも優しく、脆かった。


 ◇◇◇◇◇◇


 周囲からの期待。

 アルデバロン直々による過酷な戦闘訓練。

 それらすべてが、ロシエルにとって苦痛だった。

 ロシエルは、人間が好きだった。

 人の生み出す文化に興味を持った。

 様々な物語を読んだ。いろいろな種族の文化や暮らしを知った。天使にはない『冒険者』という職業や、かつての特異種が残したダンジョンなども面白そうだった。

 その思いは、少しずつ膨らんでいく。


「僕……人間の世界に行ってみたいな」


 そんな風に、ロシエルは思っていた。

 だが、それは許されることがなかった。

 ロシエルが人間に興味を持ち始めていることを察したロシエルの教育係は、軟禁に近い形でロシエルを教育した。

 人は悪。ヒトは天使が管理すべきもの。人は、ひとは、ヒトは。

 ロシエルは、限界だった。


「だったら、やめちまえばいいさ───」


 ある日。

 ロシエルの前に現れた老婆……堕天使ガブリエルは言った。

 やめちまえばいいさ、と。

 ガブリエルは、ロシエルを聖天使教会から連れ去った。

 人として生活させるため、ブルーサファイア王国の学園に連れて行った。

 天使としてではなく、人として生きていく。

 ロシエルは、満足だった。

 天使としての力を全て捨て、どこにでもいる少年として生きていく。

 友達もたくさんできた。面白い本もたくさん読めた。初めて海で泳いだりもした。

 ロシエルは、毎日が楽しかった。


 そんなある日。

 堕天使たちの前に『神』が現れた。


 ◇◇◇◇◇◇


 神は、呪術師ヴァルフレアを捕えろと言った。

 強制的に連れてこられ、話でしか聞いたことのない呪術師を捕えろと言う。

 さらに……天使たちの視線が、ロシエルに突き刺さった。

 裏切りの天使として聖天使教会から逃げ出したロシエル。

 ミカエル、ラティエルなどは心配しているように見えた。

 だが……ラーファルエル、サンダルフォン、メタトロンは違った。

 

「久しぶりだね、ロシエルくん♪」

「ら、ラーファルエル……」

「キミ、オレらと一緒に来いよ。さもないと……キミの大事な物、全部ぶっ壊してやるよ」

「……っ」


 ロシエルの大事なもの。

 それは、ブルーサファイア王国の生活。

 ラーファルエルだけじゃない。サンダルフォン、メタトロンもまた、ロシエルを利用する気だった。


「ボクたちの配下がキミの友人を狙ってるよ」

「ふふ、逆らえば……どうなるかわかるわよね?」

「え……」


 こうして、ロシエルは無理やり戦場に立たされた。

 ガブリエルや、他の堕天使に助けを求めようとした。

 だが……それらは、ラーファルエルによって妨害された。

 呪術師ヴァルフレア、ミカエル、カグヤを前に、ロシエルは『光』の力を振るう。


「『天の裁き(ジャムシード)』」


 戦わないと、大事なものを失う。

 ミカエルを前に、力を振るうロシエルは……どこまでも悲し気だった。


 ◇◇◇◇◇◇


「ロシエル……」

「姉ちゃん……ごめん。ぼく、やらないといけないんだ……」

「…………」


 ミカエルは、剣を構える。

 

「ロシエル……弱み、握られてるのね?」

「…………」

「でなきゃ、あんたが天使に従うはずない。神に会った時だってすぐにいなくなったのに……久しぶりに会えたのに、そんな顔……」

「姉ちゃん……ぼくと、戦って」

「ロシエル……」

「ぼく……闘わないと、駄目なんだ」


 ロシエルは、悲し気に笑った。

 追い詰められた者の眼だった。

 ミカエルは、そんな顔をするロシエルを見たくなかった。


「いいわ……まず、あんたを止める。そして……あそこにいる連中を拷問して、全て聞きだしてやるわ」


 紅蓮の炎が、ミカエルを包み込んだ。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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