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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第一章・地獄の業火で焼かれ続けた少年
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出会い

 よく考えたら俺、この世界のこと何も知らない。

 生まれて、両親が死んで、村のみんなから食料をもらって、先生から呪術と格闘技を教わるだけの生活だった。

 俺にあるのは、いくつかの呪術と格闘技の腕だけ。先生お手製のグラブとレガースには呪術が刻まれているから、これも使えそうだ。


「さーて、どっちに行こうかな……」


 村から出て半日。鈍った身体をほぐそうと走っていたが、全く疲れない。

 どういう原理か知らないが、白い炎から造られたこの身体、かなり性能がいい。筋力も体力も元の身体以上だ。

 でも、腹は減るし眠くもなる……ほんと、どういう原理で作られたんだろう。

 先生の家にあった鞄には、畑に生っていた芋を入れてある。生で齧りながら歩くと、分岐点があった。


「お、この先に町があるのか……」


 目の前には大きな森があり、その先には村がある。反対方向は『行き止まり』の文字が書かれていた。なら、答えは一つ。


「森を抜けて、町を目指すか。廃村になってからどれくらい経過したのかわかるかもな」


 俺は迷わず森の中へ。

 なかなか深い森だ。日の光があまり差さない……。

 

「えっと、確か……あったあった。先生の家にあった呪符」


 呪術師は、『呪符』と呼ばれる紙に文字を書き、そこに呪力を込めて奇跡を起こす。

 俺も呪術師の端くれ。呪符を造ったり初歩的な呪術なら楽に発動できる。


「『さっさと照らせ(ヒカリ・トモシビ)』」


 呪符が燃え、代わりに白い光球がふわふわ浮く。

 俺の頭上で『灯』が照らし、俺は森の中を進んでいく。このくらいの暗さなら『灯』を使うまでもなかったな。村に住んでいた時は夕方になると真っ暗だったし、先生と一緒に夜間格闘訓練で夜目を鍛えたこともある。


「…………ん?」


 ふと、妙な声が聞こえた。

 魔獣のような……いや、違う。


「おぉ……まさか!!」


 俺は喜んだ。

 これ、人間の声かも。まさかこんな森の中で人間に会えるなんて!!

 俺は声のほうへ走った。喜びを抑えきれず、誰だか知らないけど人の声や姿を見られるのは、とても嬉しく感じた。


「あのー!! 誰かいますかー!? あのー!!」


 そう叫びながら、声の方向へ。

 そして─────。


「……なんだテメェ!!」

「あ、あれ?」

「おい、こんなところで何してやがる……テメェ、誰だ!!」

「え、えっと……人、ですよね?」

「あぁん!? ふざけてんじゃねぇぞゴラァ!!」


 筋骨隆々の男が十人ほど、そして……。


「だ、だれ、ですか?」

「……下がって!!」


 少女を守るように、女の騎士が剣を構えていた。

 状況がよくわからん。

 壊れた馬車、死んだ馬、十人の男が女の子と女騎士を囲んでいる……で、全員が俺を見て敵意を振りまいている。

 

「え、えっと……俺、ヴァルフレアっていいます。その、ちょっと聞きたいことが」

「見られたからには生かしちゃおけねぇ……殺せ!!」

「えぇぇぇっ!?」

「死ねガキッ!!」

「うわっ!?」


 男の一人が、剣を振りかざして襲い掛かってきた!!

 いや待て、俺は質問したいだけで……ああもう!!


「ごめんなさいっ!!」

「ぶっごぉぉぉっ!?」


 掌底破。

 剣を躱し、右掌を男の腹に食らわせる。すると男は嘔吐し、そのまま気を失ってしまった。

 手加減したけど、大丈夫かな……?

 というか、見られたから殺せとか、物騒だな。


「あ、あの……」

「この餓鬼……おめぇら、こいつ素人じゃねぇ!! 囲んで殺せ!!」

「ちょっ、あの、俺は聞きたいことがあるだけで!!」

「やれっ!!」

「……はぁ~」


 仕方ない。

 どうやら話をする気がないようだし、戦うか。

 先生が言ってたっけ。乱戦ではつねに死角に注意せよ。そして一撃でかならず仕留めよ、だっけ。


「このやらぁぁぁっ!!」

「だっ!!」


 剣の振りでわかる。この人たちは素人だ。

 武器を振り回すだけで隙も多い。懐に潜り込んで一撃を加えればいい。

 なかなか侮れないのもいるけど、先生のがよっぽど強かった。


「『腹下せ、クソが(ゲーリゲーリ・ブロウ)』!!」


 呪力を込めた一撃が男の腹に直撃。

 すると、男は真っ青になり腹を押さえ、ケツからピーピー音がし始めた。

 腹痛の呪いを拳に込めてやった。これで三日はお尻が大洪水ってね。


「『胃潰瘍になっちまえギュール・イッヅ・ブロウ』!!」

「っご……ぉぉ、ぉぉ……」


 腹痛の呪力。

 これで激痛が一週間は続く……ごめんね。

 呪撃を加えながら男たちを倒し、残り一人。


「な、な、なんだ、てめぇ……」

「いやだから、話を聞きたいって言ってるだけです」

「く、くっそ……ごぁぁっ!?」

「え」


 すると、男が突然倒れた……ああ、女騎士さんが斬ったのか。

 女騎士さんは俺に剣を向けるが、連れの少女が騎士を押さえた。


「やめて!! この方は私たちを救ってくれたのですよ? 剣を収めなさい」

「しかし、この死の森に人間が立ち寄るとは思えません。お下がりください」

「なりません!!」

「お下がりください!!」

「なりませーんっ!!」

「あ、あの……」


 このままでは、女騎士と女の子の戦いになってしまう。

 俺は両手を上げ、二人に近づき─────。


「─────危ないっ!!」

「え?」


 女騎士に斬られた男が立ちあがり、女の子を斬りつけようとした。

 女騎士は動けなかった。だから、俺が動いた。

 呪術は間に合わない。なら……受け、いや……掴む!!


「ふんがっ!!……っづぁっ!?」

「なっ……!?」


 すると、摑んだ男の剣が燃え上がり、ドロドロに溶けてしまった。

 俺の手が、燃え上がった。

 真っ赤な炎が手を包みこむ。でも、全然熱くない。むしろ……。


「この、危ないだろうがっ!!」

「ぶっがぁぁっ!?」


 男をぶん殴ると、そのまま炎が燃え移ってしまう。

 しまったと思うがもう遅い。炎はあっという間に男を包み……骨すら残さずに燃やし尽くしてしまった。


「…………な、なんだ、これ」


 赤い炎。

 まるで、俺を飲み込んで殺した地獄の炎……。

 まさか、俺の身体に、地獄の炎が残って……いや、燃えているのか?

 もしかしたら、あの八色の炎……バカな、そんなわけない。

 と、考えるのはあとにしよう。せっかくの情報源を見つけた。


「あ、あの……」

「お下がりください、姫様!!」

「え、ひめさま?」

「あっ……ばば、ばかばか、アイシェラ、姫様って呼んじゃダメって言ったじゃない!!」

「しし、しまった……おのれ貴様!!」

「え、俺のせい?」


 姫様、そして女騎士。

 この二人との出会いが、俺の冒険の始まりだった……かもしれない。


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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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