表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

299/395

BOSS・憎悪する者たち①

 風、というか第五地獄炎の炎が強くなってきた。

 木々が揺れ、強い圧力に白黒号が尻込みしてしまい、そのまましゃがみ込んでしまう。

 俺たちは馬車から降りる。

 近くに、ちょうどいい洞窟があったので、馬車をそこに移動させた。

 俺は、プリムに言う。


「プリム、お前はここで待ってろ。アイシェラ、ナキ、クロネも」

「……仕方ないな。お嬢様、ここは待ちましょう」

「うん……フレア、気を付けてくださいね」

「おう。ナキ、クロネ、怪しい奴来たらブチのめせよ」

「いや、お前と一緒にすんなよ……」

「同感にゃん」


 俺は、カグヤとミカエルを見た。


「俺たちは、あそこにいる呪術師を倒すぞ。たぶん、天使もいる」

「またいっぱいいるのかな!」


 カグヤはワクワクしていた。

 戦闘狂のこいつにとって、天使との戦いは何よりも楽しいみたいだ。

 ミカエルは、腕組みをしつつ言う。


「恐らく、配下の天使が何人かいるはず。フレア、あんたは呪術師を叩いて。雑魚はあたしが倒すから」

「ちょっとちょっと、独り占めは許さないわよ」

「はいはい。じゃ、人間のあんたでも倒せる弱い奴譲ってあげる」

「上から目線ムカつくし!」


 カグヤはキーキー騒ぎ、ミカエルはニヤニヤとながらおどける。

 二人の変化に、俺たちは驚いていた……いつの間にか仲良くなってんじゃん。

 仲良くするために、席を隣同士にしたり、テントを同じにしたり、鎖でつないだり、一緒に水浴びさせたりと地道な努力が実ったようだ。

 ナキの持ってたテントが燃えるというハプニングはあったけど……ま、よかった。


「じゃ、行ってくる。あ、クロネ、晩飯の献立考えといて」

「これから呪術師や天使と戦う奴が言うセリフじゃないにゃん……ま、考えておくけど」

「勝利の肉で!」

「あら、気が合うわね。あたしも肉がいい!」


 カグヤとミカエルは互いにハイタッチ。

 ここまで仲良しだとかえって怪しいぞ……まぁいいや。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 第五地獄炎の竜巻が燃える地に、俺たち三人は到着した。

 そこにいたのは……見覚えのある四人。


「来たか、ヴァルフレア」

「おまえ、フウゲツだっけ?」

「そうだ……ここで貴様には死んでもらう」


 フウゲツ。

 全身を緑色の炎で燃やした、長髪の男だ。

 俺よりちょっと年上かな。身体は鍛え抜かれ隙がない。目はギラギラした殺気を滾らせ、俺を凝視……というか、俺しか見ていない。

 すると、メガネをかけた長身の天使が言う。


「待ちなよ。そいつには借りがあるんだ。オレにもやらせてくれない?」


 ラーファルエル。

 俺がブルーサファイア行きの船で戦った天使だ。

 こいつも、俺を見る眼が憎悪に満ちている。メガネの奥にある眼がギラギラしていた。

 すると、ラーファルエルとフウゲツを押しのけるように前に出る双子。


「姉さん、やっと会えたね」

「ええ。ようやく……しかも見て、あの銀髪のメスブタもいるわ」

「本当だ……ククク、あのブタにも借りを返せるね」

「ええ。楽しみね……どうしてくれようかしら」


 サンダルフォン、メタトロンだ。

 俺にやられた三人の天使が揃っていた。

 カグヤは、首をコキコキさせながら言う。


「あの双子、アタシを狙ってるみたいね。二対一ってのも悪くないわ」

「大丈夫か?」

「ええ。アタシもあの頃より格段に強くなった。アンタならわかるでしょ?」

「まぁな。じゃ、双子はお前に任せる」

「ええ」


 俺は、ずっと黙りこくっているミカエルを見た。

 ラーファルエルもメタトロンたちも、ミカエルがいるのに全く見ていない。マジで俺しか見ていない。

 ミカエルは、目を見開いていた。


「……ロシエル」

「…………」


 ロシエル?

 ミカエルの視線の先にいたのは……子供だった。

 金髪の、えらい整った顔立ちの少年だ。半ズボンにワイシャツという格好で、ミカエルを見てすぐに視線を逸らす。

 ロシエル……そういえば、ミカエルが「戦うな」とか言ってたっけ。

 ミカエルは、一瞬で燃え上がった。


「あんたら……なんでロシエルを!!」

「あれ、ミカちゃんってば忘れたの? オレらの使命はそこの呪術師くんを神様の元へ連れてくことだよ? ま、多少痛めつけてやらないと気が済まないけどね」

「ボクは腕をもらうよ」

「わたしは足をいただくわ」

「…………友の仇を取らせてもらう」


 ミカエルは、これまでにないくらい凶悪な殺気を滾らせる。

 ギリギリと歯が砕けるくらい噛みしめた。


「ロシエル……こいつらに、弱みを握られてるのね?」

「…………」

「ロシエルくぅ~ん?」

「…………」


 ロシエルは、ポツリと呟いた。


「ごめん。お姉ちゃん」


 そして、手を俺たちに向ける。


「『天の裁き(ジャムシード)』」

「ロシエル!! やめ───」


 次の瞬間、緑色の炎が消し飛び、空から眩い『光の剣』が降り注いだ。


「なっ!? だ、第一地獄炎、『渦巻焱』!!」


 俺は第一地獄炎を両手に燃やし、渦を巻くように空へ向けて放つ。

 炎は丸い渦となり、光の剣を相殺した。


「『降り注ぐもの(ヴォウルカシャ)』」


 四角い《光の塊》が、いくつも落ちてきた。

 俺たちはバラける。いきなりの攻撃に出遅れた。

 そして、俺の目の前には。


「やぁ、呪術師くん♪」

「ラーファルエル……っ!!」

「遊ぼうぜ?」


 ラーファルエルはペロッと舌を見せる。そこには、ドビエルが飲み込んだ《神玉》があった。

 それを飲み込むと、ラーファルエルの翼から爆発的な台風が巻き起こる。

 

「くははははっ!! ようやく、ようやく復讐できる!! さぁ、遊ぼうぜ!!」

「やってやるよ……言っとくけど、俺は一度勝った奴に負けたことないからな」


 俺は、右足を青い炎、右手を赤い炎で燃やした。

 

 ◇◇◇◇◇◇


「メスブタだよ、姉さん」

「ええ、臭い銀髪のメスブタ。あぁ、内臓引きずりだしてやりたい……!!」

「ボクも同じだよ、姉さん……こいつ、殺してやろう」


 サンダルフォンとメタトロンは、ポケットから《神玉》を取り出す。

 カグヤは構えを取る。


「姉さん」

「メタトロン」

「「さぁ、見せよう。ボク(わたし)の力を」」


 そして、互いの口に《神玉》を入れると、爆発的に力が向上した。

 サンダルフォンの周囲には『液体金属』が舞い、メタトロンはその金属を操る。

 カグヤは、楽しそうに言った。


「さぁて……どのくらい強くなったのか、確認してやるわ!!」


 ◇◇◇◇◇◇


 ミカエルは、ロシエルの前に立っていた。


「ロシエル……弱み、握られてるのね?」

「…………」

「でなきゃ、あんたが天使に従うはずない。神に会った時だってすぐにいなくなったのに……久しぶりに会えたのに、そんな顔……」

「姉ちゃん……ぼくと、戦って」

「ロシエル……」

「ぼく……闘わないと、駄目なんだ」


 ロシエルは、悲し気に笑った。

 追い詰められた者の眼だった。

 ミカエルは、そんな顔をするロシエルを見たくなかった。


「いいわ……まず、あんたを止める。そして……あそこにいる連中を拷問して、全て聞きだしてやるわ」


 紅蓮の炎が、ミカエルを包み込んだ。


 ◇◇◇◇◇◇


 プリムたちは、爆発的な光が降り注ぐのを見ていた。


「おいおい……マジでどうなってんだ?」

「にゃん……」

「フレア……」

「大丈夫。あの馬鹿が負けるのはありえませんよ、お嬢様」

「うん、わかってる。だから胸触らないで」

「あんっ!」


 アイシェラを押しのけ、フレアたちを心配するプリム。

 

「ナキさん。わたしたちにできること……ナキさん?」

「…………」


 ナキは、空ではなく、真正面を見ていた。

 クロネも、アイシェラも、目の前を凝視している。


「え……?」


 プリムたちの目の前に───びしょ濡れの女が立っていた。


「みつ、けた……」


 ずるずると、びしょ濡れの髪を引きずっていた。

 口元が、三日月のように裂けていた。

 濡れた身体から、ポコポコと『泡』が出ていた。


「人間、遊びましょ……?」


 懲罰の七天使の一人、プルエルがプリムたちに迫っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ