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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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タイフーン・バトル

 馬車でのんびり進むこと数日。

 カグヤとミカエルはたまに喧嘩し、俺が二人を拘束し、アイシェラとクロネはため息を吐き、プリムはあわあわと慌て、ナキはゲラゲラ笑う日が続いた。

 このメンバーでする旅はなかなか面白い。

 野営に慣れたミカエルは、洗濯したりテントの設営をしたりと、手伝いをするようになった。

 俺は、テント設営をするミカエルに言う。


「随分と慣れたな」

「まぁね。ってか、こういうのけっこう好きかも」

「天使は野営とかしないのか?」

「しない。人間のお金使って、人間の町に泊まることもあるし、基本的にヘブンに住む天使はみんな家持ってるし」

「ヘブン……なんだっけ?」

「天使の町よ。七つの大陸の中心に、天使の住まう大地がある。そこに三柱の神はいる」

「あ、じゃあ冒険前にそこ行って神を殴るか」

「あのね……天使の総本山よ? 十二使徒レベルの天使や階梯天使が集結してんの。いくらあんたでも、数万の天使相手に戦えるわけない」

「むー……いけると思うけど」

「駄目。やるなら、せめて戦力の天使は削らないと」


 テントのペグを打ち付け、ミカエルはハンマーを置く。

 クロネとプリムは調理、アイシェラは馬とシラヌイに餌をやり、カグヤとナキは薪を拾いに行っている。

 ミカエルは、近くの岩に座った。


「厄介なのは……アルデバロン、サラカエル、ジブリール、ガブリエルね。単体ならともかく、もしこの四人が手を組んで襲って来たら、あたしでも対処できない」

「なんか強そうだな」

「強そうじゃなくて強いの。アルデバロンなんて、あんたの師匠に手傷負わせたこともあんのよ」

「え、そうなのか? 先生に傷とかすげぇな」


 俺はミカエルの隣の岩に座った。

 ミカエルは大きく伸びをする。


「あたしの考えだけど……たぶん、全ての天使が神の言うことを聞いてるわけじゃない。確かに、あたしたちの創造主である神の命令よ。でも、創造主だからって納得できないことはある。フレア……全ての天使を倒すんじゃなくて、仲間にできそうな天使は引き入れた方がいい。たぶん、聖天使教会へ神を倒しに行くとなると、総力戦になる」

「仲間ねぇ……」

「うん。まず、ラティエル、あとダニエルね。この二人は説得すればなんとかなる。それと、一つだけお願い」

「ん?」


 ミカエルは、俺をまっすぐ見て言う。


「ロシエル。この子が出てきたら……倒さないで」

「……?」

「お願い」

「……わかった」


 真剣そうな眼で言うミカエルに、俺は「わかった」と答えるしかなかった。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 もうすぐ水晶渓谷へ到着する……そんな時だった。

 馬車が止まり、アイシェラが言う。


「…………なんだ、あれは」

「ん~?」

「なに……くぁぁ」


 馬車の屋根で寝ていた俺とカグヤは、アイシェラが見ていた遥か前方を見た。

 そして……何度か目をこすり、ようやくこれが夢でないと知る。


「……あれ、なんだ?」

「た、竜巻……?」


 そう。遥か前方に竜巻が発生していた。

 ただの竜巻じゃない。俺は気配を探り気付いた。


「あれは……第五地獄炎?」


 第五地獄炎の、緑色の炎だった。

 アイシェラが言う。


「あそこは、水晶渓谷……まさか、先回りされたのか!?」

「確定ね」


 馬車の窓が開き、ミカエルが言う。


「どうやら、あたしたちの位置が知られている。探知系の神器が使われている……こんなことできるの、ラティエルくらいしかいない」

「ラティエルって、ブラックオニキスで会ったあいつか?」

「ええ。ラティエル……どうして」


 ミカエルは少しだけ俯き、歯をグッと食いしばる。

 カグヤは、フンと鼻を鳴らした。


「で、どうすんの? あれ、どう見ても誘ってるわ」

「行くしかないだろ。な、アイシェラ」

「……危険すぎるぞ」


 アイシェラが難色を示すと、ミカエルが言う。


「たぶん、逃げられないわよ。ここで逃げたらあの竜巻がこっちに向かってくるか、逃げた先に別の天使が待ってるかも。ま、あそこに向かったら向かったで天使はいるけどね」

「…………覚悟を決めるか」

「にゃん。うち、偵察……」

「やめとけ」

「んにゃっ!?」


 窓から飛び出しかけたクロネの尻尾をナキが掴む。


「危険すぎる。ここは全員で固まってた方がいい」

「し、尻尾掴むにゃぁ!!」

「おっと、悪い」

「……フレア」

「ん?」


 プリムが、心配そうに言う。

 そりゃ、こう何度も天使と遭遇して戦ってればこうなるわな。

 

「ま、負けないでください!! わ、わたし……わたしがいます!! 怪我しても大丈夫です!!」

「お、おう」

「皆さん!! か、覚悟を決めましょう!! いざ決戦です!!」

「「「「「「…………」」」」」」

「あ、あう……何か言ってくださぁい……」


 全員がポカンとしていると、プリムがしおしおと縮んでいった。

 ま、プリムがやる気ならこっちも元気百倍だ。


「じゃ、行くか。あそこにいる邪魔者を排除して、水晶渓谷眺めながらメシ食おうぜ」

「お前は変わらんな……まぁいい、行くぞ」


 アイシェラが白黒号の手綱を引き、馬車はゆっくり進み始めた。


 ◇◇◇◇◇◇


「来い、ヴァルフレア……友の仇、取らせてもらう」

「さ~て、オレも復讐させてもらおうかな」

「姉さん、ようやくこの時が来たね」

「ええ。やっとあいつをグチャグチャにできるわ」

「…………」


 炎の竜巻の中にいたのは、五人。

 暁の呪術師フウゲツ。

 ラーファルエル、サンダルフォン、メタトロン。

 そして……今にも泣きそうな顔をしている、十四歳ほどの少年だった。


「…………」

「ふふ、ロシエルく~ん? やりたくない気持ちはわかるけど、ちゃんとやった方がいいよ?」

「…………わかってるよ」


 『裏切りの八堕天使』の一人ロシエルは、ラーファルエルのニヤついた笑みを見ずに答えた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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