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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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ミカエルとカグヤ

 さて、これから向かうのは水晶渓谷だ。

 メンバーは、俺、シラヌイ、プリムとアイシェラ、カグヤ、クロネにナキ、そしてミカエル。けっこうな大所帯だなぁ。

 ミカエルは、意外にもプリムと仲がよかった。

 馬車の中で、ミカエルが持参したカードゲームをやっている。クロネ、ナキも混ぜて四人で遊んでいるようだ。アイシェラは手綱を握りながら羨ましそうにしている。

 俺とカグヤは、馬車の屋根でのんびり横になっていた。


「むぅ……あの赤毛め」

「お前なぁ、あんまりミカちゃんを怒らせるなよ? ぶっちゃけ、お前より強いぞ」

「うるさい。言われなくてもわかってる。でも、ムカつくのはムカつく」

「俺的には、カグヤとミカエルって似てる気がする」

「はぁ!?」


 というか、そっくりだよ。

 短気なところとか、強気なところとか。

 カグヤはムッとしながら、仰向けになる。


「まぁいいわ。それより、後で組手に付き合いなさいよ」

「ああ。わかった」

「ん……」


 カグヤはそのまま欠伸をすると、仰向けのまま眠りだす。

 俺が隣にいるのに寝た。以前だったら、こんな無防備な姿は見せなかった。

 ま、別にいいや。俺も少し寝よう。


 ◇◇◇◇◇◇


 それから数時間、馬車はのんびりと進んだ。

 途中。ミカエルが野良魔獣をやっつけたり、すごく綺麗な景色を眺めたり、川で一休みしながらお昼を食べたりと、平和な時間が過ぎて行く。

 水晶渓谷までもう少し。

 今日は、川沿いで野営をすることになった。

 少し早く野営地を見つけ、野営の支度をする。

 テントを建て、かまどを組み、薪を拾い……夕方前には全ての支度が終わった。

 早くした理由は、カグヤと組手をするためだ。

 俺とカグヤは、野営地から少し離れたいい感じの広場で向かい合う。

 

「フレア、行くわよ」

「おう。炎なし、能力なしな」

「ええ……じゃあ、開始!!」


 カグヤの猛ダッシュ。

 ほぼ一瞬で距離を詰められ、前蹴りが飛んでくる。

 俺はカグヤの前蹴りを半回転で躱し、そのまま裏拳を叩き込む。

 だが、カグヤは足を突き出したまましゃがんで躱す。足を引き戻し、手を地面に付けて器用に回転蹴りを繰り出した。


「っと」

「神風流、『風車』!!」


 手を地面に付け、足で勢いを付けて回転した。

 カグヤは回転だけで浮き上がり、四回転くらい回る。そのまま足をバタつかせ立ち上がる。


「神風流───『飛空礫(ひくうつぶて)


 カグヤは、小石を蹴り上げ俺に飛ばしてきた。

 首をひねって躱す。この野郎、遠慮なく顔面狙ってきやがった。

 そろそろ、俺も反撃する。


「甲の型、『鉄槌』!!」


 身体を呪術で硬化させた踵落とし。

 避けるのかと思いきや、回し蹴りで受けやがった。


「アタシに蹴り技見せるなんて、ねっ!!」

「うおっ!?」


 弾かれた。

 急ぎ、体勢を整えると、カグヤの回し蹴りが首を狙ってきた。

 だったらこっちの番だ。


「神風流、『凪打ち』!!」

「甲の型、『鉄丸』!! からの───」


 全身を硬化させ、カグヤの蹴りをクビで受ける。

 かなりの衝撃だが耐えた。

 そのまま足を掴み、拳を顔に叩き込む。

 だがカグヤも動いた。俺の首に叩き込んだ足をそのまま曲げて身体を掴み、もう片方の足で俺の頭を蹴り飛ばそうとした。

 そして。


「「───……」」


 拳と足を寸止めする。

 カグヤの力が緩み、俺の力も緩む。

 そのまま、カグヤと正面から向かい合い、互いに一礼した。


「ふぅ……やっぱり、アンタとの組手はいい刺激になるわ」

「同感。ってかお前、また強くなったな。蹴りの鋭さが違うぞ」

「ふふん。ま、堕天使を倒したのがいい経験になったみたいね。あーあ。もっと出ないかなー」

「…………」


 すると、ミカエルが腕組みしてこっちを見ていた。

 ミカエルが見ていたのはカグヤ。


「なかなかやるわね……人間のくせに、十二使徒レベルじゃない」

「……覗き見なんて、趣味が悪いわね。なに? アンタもやりたいの?」

「興味ない。あたしは水浴びしに来ただけよ。終わったなら消えなさい」

「はぁ~? アンタが消えれば?」

「……うっざ。たかが人間のくせに」

「そのたかが、ってのやめてくんない? たかが天使のくせに」

「……は?」

「……は?」


 うっわぁ……またかよ。

 この二人、絶望的にそりが合わない。

 俺はため息を吐き、二人の手を掴んだ。


「真・第六地獄炎、『嘆キノ手枷(ナゲキノテカセ)』」

「「は!?」」


 黒い炎の鎖が、二人の手に絡みついた。

 前の全身グルグル巻きとは違う。二人の左手だけを拘束した。

 鎖は一メートルもない。さらに、天使と特異種の能力を完全に封じる、進化した第六地獄炎の呪いだ。

 俺は、めんどくさそうに言った。


「能力を封じた。しばらくこのままな。ああ、殴り合いの喧嘩もできるぞ。怪我しても俺とプリムがいるから治してやる。一度、思いっきり殴り合えば友達になれるだろ」

「「はぁぁぁぁぁぁっ!?」」

「じゃ、俺は戻るから。水浴びしたいなら仲良く脱がし合えよ~」

「「ちょ!?」」


 さて。メシはまだかな~♪


 ◇◇◇◇◇◇

 

 カグヤとミカエルは、しばらく茫然としていた。

 カグヤが左手を引くと、ミカエルの腕が持ち上がる。

 イラッとしたミカエルが腕を引くと、カグヤの左手が持ち上がった。


「痛い。動かすな」

「こっちのセリフ。ってか離れてよ」

「アンタが離れなさいよ」

「うるさい。ってか、あんた汗臭い……きったないわねぇ」

「はぁぁ!? ふざけんなこのっ!!」

「いったぁ!? 何すんのよこの銀髪!!」

「あいたっ!? このっ……」


 ミカエルのビンタがカグヤの頬を打つ。

 すると、カグヤの額に青筋が浮かび、ミカエルの顔面に拳が突き刺さった。

 ミカエルが鼻血を出し、歯をギリギリ食いしばり……膝蹴りがカグヤの腹に突き刺さる。

 カグヤは腹を押さえて蹲り……そのまま飛び上がるように頭突きした。


「「…………」」


 互いに顔を見合わせ───プツンと切れた。


「「ブッっっ───殺す!!」」


 カグヤとミカエルの殴り合いが始まった。

 カグヤは当然だが、ミカエルも聖天使教会で体術を習得している。二人とも髪を引っ張り、顔や腹を殴り、服や鎧も脱げ、とんでもない姿になっていく。

 そして、二人は地面をゴロゴロ転がり、そのまま川にドボンと落ちた。


「おっ、っがぼっ!? がぼぼっ!?」

「っぷはぁ!! ちょ、アンタなにやって」


 ミカエルは、川の深い部分に足を取られ、おぼれかけていた。

 カグヤも引っ張られる。このままでは二人とも溺れる。


「ああもう、仕方ないわね!!」


 カグヤは鎖を引き、ミカエルを抱きしめるように支えた。

 ようやく水中から顔を出したミカエルは、苦しそうに息を吐く。


「っぷあぁ、あっ……し、死ぬかと思ったぁ」

「ほら、上がるわよ」

「ぅ……」


 カグヤはミカエルを支え、ようやく川から脱出した。

 ずぶぬれになり……ミカエルは、ポツリと言う。


「……助かったわ」

「別に、気にしなくていいわよ。あのままだったら、アタシも溺れてたし」

「…………」

「はぁ……もうやめた。ねぇ、一時休戦しましょ。アンタはアタシが気に喰わない。アタシもアンタが気に喰わない。今はそれでいいとして……フレアの邪魔にならないくらいは、喧嘩するのなしで」

「…………わかった」

「うし。じゃあ、アイツ呼んでこの鎖外しましょ。その前に……少し、水浴びしたいわ」

「同感……服、脱いでいい?」

「ええ。アタシも脱ぐ」


 ミカエルとカグヤは、ずぶ濡れの服をなんとか脱いだ。

 二人とも、打撲の跡が痛々しい。

 まずは、打撲を冷やそうと川に向かう。今度は、二人そろってゆっくりと。


「お、随分と仲良くなったじゃん」

「「え」」

「ははは。素っ裸で何してんだ? ああ、水浴びか」

「「…………」」


 フレアが現れた。

 振り向いた二人は、フレアに全てを晒してしまう。

 そして、わなわなと震え……。


「ははは。案の定、喧嘩してたか。大丈夫、ちゃんと怪我治して───」

「「地獄に落ちろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」

「えっぶはぁぁ!?」


 ミカエルとカグヤの前蹴りが、フレアの顔面と腹に突き刺さった。

 フレアは吹っ飛び、地面をゴロゴロ転がって気絶した。

 

「自業自得……にゃん」


 この様子を見ていたクロネが、ポツリと呟いた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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