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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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追手と刺客

 岩塩湖から逃げるようにして離れ、ホワイトパール王国領にある森へ到着した。

 ナキが森の木に触れ、目を閉じる。


「……この辺りは大丈夫だな。魔獣もいないし、動物しかいねぇ。ヒトの踏み込んだ形跡もない、ありふれた森ってところだ」

「おまえ、わかるのか?」

「一応、エルフだからな。木々と会話くらいできる」

「すげぇ……ってか、そんなことできるのかよ」

「まぁな」


 エルフは、森の民。

 木々と意思疎通……というか、意思を同調?できるらしい。ぶっちゃけよくわからん。

 だが、ナキが「大丈夫」って言うし、大丈夫だろ。

 森に馬車を止め、白黒号を荷車から外してやる。

 世話をアイシェラに任せ、俺たちは野営の準備……と、ここでひと悶着。


「アンタ、何かしなさいよ」

「はぁ? ってか、なんであんたにそんなこと言われなきゃならないの?」

「……ブッ殺すわよ?」

「やってみたら? 黒焦げの肉塊にしてあげる」

「待て待てまて。なんで喧嘩してんだよ」


 俺は、カグヤとミカエルの間に入った。

 案の定。予想通り。この二人は合わなかった。

 プリムはあわあわしてるし、クロネは我関せずと馬の世話、アイシェラは頭を押さえため息を吐き、ナキは面白そうな物を見る眼でニヤニヤしていた。


「フレア。あんた、こんな女とツルむのやめなさいよ」

「あぁ? この赤毛天使、マジで殺してやろうか? アンタの顔面が陥没する瞬間が見たくなったわ」

「あら偶然。あたしも同じ考え。でも、見たいのはブタの丸焼きだけど」

「真・第六地獄炎、『黒キ鎖ノ縛リ(クロロズ・チェイン)』」


 俺の胸を覆う第六地獄炎の進化した神器、『黒ノ十字架Spec2』から、黒い鎖のような触手が何本も伸びてミカエルとカグヤを拘束した。

 一本の鎖で二人をギチギチに拘束したので、二人は身体をぴったりくっつけ、唇が触れそうなくらい密着している。


「んぁぁぁぁっ!? ちょ、フレアなにこれ、外しなさいよ!!」

「アンタ、ふざけんな!! ちょ、顔近づけないでよ!! キモイ!!」

「はぁぁぁぁ!? それこっちのセリフだし!! この銀髪女、近づくなっての!!」

「さ、飯にしようぜ。お前ら二人、仲良くなるまでそのままな」


 ちなみに、この黒い鎖は『全ての特殊能力を封じる』って効果がある。ミカエルもカグヤも能力を使えないので、バタバタ暴れるくらいしかできないのだ。

 アイシェラは、珍しく俺を褒めた。


「なかなかやるな貴様。ふふ、いつかこれでお嬢様と私を縛ってほしいものだ」

「アイシェラ、キモイです」

「はぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

「ナキ-、メシまだかー?」

「はいよ。ははは、騒がしくも面白いねぇ」

「にゃん……なんか、うちも慣れてきてるのか恐怖を感じないにゃん」

『わん!』

「あぁぁぁぁ!! この赤髪顔近づけんなぁぁぁぁぁぁっ!!」

「暴れんなっての!! んんぁぁっ!? ちょ、胸擦り付けんな!!」

「うっさい!! っひぇ!?」


 暴れるカグヤとミカエルを放置し、俺たちは食事を楽しんだ。


 ◇◇◇◇◇◇


 食事を終えると、カグヤとミカエルが「もう暴れないから許して」と懇願してきた。

 仕方ないので拘束を解く。一応警戒したけど、二人の八つ当たりは来なかった。

 ミカエルもカグヤも、互いに無視していた。ま、騒がしくないならいいや。

 ミカエルは、果実水を飲みながら話始める。


「……とりあえず、今後の予定ね。フレア、どうする気?」

「どうするって、何が?」

「あのねー……あんた、神に狙われてんのよ? あたしら天使の神様をすっごく怒らせて、聖天使教会だけじゃなくて、堕天使や黒天使も総動員してあんたを追ってるんだから」

「別に変わんねーよ。俺は俺の道を行く。邪魔するならブチのめす……でも」

「?」


 俺は、右手に黄金の炎を燃やす。


「先生たちだけは、解放したい……」

「先生って……呪神?」

「天使はそう呼んでるんだっけ。そう、タック先生だ。あと、マンドラ婆ちゃん、ヴァジュリ姉ちゃん、ラルゴおじさん……あの神様が言ってた。先生たちの魂を改良して、新しい肉体に宿したとか。改良されても、先生たちの魂であることに変わりない……気持ちの整理は付けたけど、やっぱりあれは先生たちなんだ。あの四人だけは、俺がこの手で倒したい」

「…………」

「それと、あの三人……神。あの三人だけは、俺がこの手でブチのめす。先生たちの魂を弄んだ報いを受けてもらう」

「……そう。じゃあ、当面の目標は『死ヲ刻ム四影(フォー・ゲイザー)』の解放と三柱の討伐ね。でも……神なんて倒せるのかしら」


 ミカエルは、少し緊張したように呟いた。


「ま、なんとかなるって。それより、ミカちゃんも一緒に冒険してくれるんだよな!」

「そうね。あたしはもう裏切り者だし、聖天使教会には戻れない。あんたと同じ、狙われる立場ね。まぁ……後悔はしてない」

「そっか。ありがとな」

「…………ん」


 ミカエルは、赤くなってそっぽ向いた。

 ここでアイシェラが口をはさむ。


「さて、これからどうする? まさか、天使と神を探して戦いを挑むのか?」

「それでもいいけど……ミカエル、どう思う?」

「やめときなさい。やるなら、支配下の天使を片付けてからね」

「えー? でも俺、天使に喧嘩売りながら旅なんかしたくないぞ」

「でも、行く先々で天使に襲われたら、周囲は大迷惑よ」

「むー……」


 すると、クロネが言う。


「だったら……この先にある『水晶渓谷』に行くのはどうかにゃん? ここからそう遠くないし、あそこは隠れた観光名所にゃん。普段、誰もいないはず……にゃん」

「確かに。クロネの言う通りだ。あそこはかつて宝石の原石が採れる産地だったが、今は枯渇している。だが、その景色だけは美しい……行く価値はあるな」

「おお、いいね。おもしろそうじゃん」


 というわけで、次の目的地は『水晶渓谷』となった。


 ◇◇◇◇◇◇


 その日の夜。

 ナキとクロネが野営。残りは全員テントで寝ていた。


「……水晶渓谷ねぇ。どんなところだ?」

「さっきも言った通り、宝石の原石が採取された渓谷にゃん。今はもう枯渇して、ただ景色のいい渓谷になってるけど」

「ふぅん。ま、自然は嫌いじゃねぇよ。というか……まさか、天使と旅をすることになるとはな」

「にゃん。うち、ミカエルと少しだけ旅したことあるにゃん。庶民っぽくていい奴にゃん」

「ふーん。でも、カグヤと相性最悪だけどな」

「同族嫌悪ってやつにゃん。あの二人、なんとなくそっくりにゃん」

「それ、絶対言うなよ……ふぁぁ」


 ナキは大きな欠伸をした。

 同時に、クロネも欠伸をする。


「にゃぁぁぁふぅぅ……にゃ」

「…………」


 ナキとクロネは、気付いていなかった。

 静かに、静かに……二人の周りを、『紫色の煙』が取り囲んでいることに。

 煙が充満し───ナキとクロネは気を失った。


「ふふ───よく寝てるわ」


 そして、ナキの背後から現れたのは、一人の女。

 かつて、パープルアメジスト王国でフレアと戦った『暁の呪術師』の一人、ジョカだった。

 ジョカの身体は、紫色に燃えていた。


「幻の型、『眠リ姫(ネムリヒメ)』……ふふ、ぐっすり寝てる」


 ジョカは、眠りこけるクロネのネコミミを軽く撫でる。

 そして、煙が充満しているテントへ近づいた。

 そのテントには、フレアとシラヌイが寝ている。


「あとは、フレアを回収して……おしまい。ふふふ、私に部下は必要ないわ。この『幻』のジョカの眠りから逃れることなんて、呪術師にだってできないんだから」


 第七地獄炎の幻、そして呪闘流幻種第一級呪術師としての技。

 幻の型では、製薬術を武器として使う。

 呪術師たちが長年研究してきた毒物を、第七地獄炎の幻と組み合わせて使うのだ。

 その睡眠毒に、全員が寝入ってしまう。

 後は、フレアを回収するだけ。

 ジョカは、フレアの眠るテントをゆっくり開けた。


「さぁ、お出かけの時か「滅の型、『百花繚乱』!!」 っぶげ!?」


 だが───テントを開けた瞬間、フレアの拳がジョカの顔面を殴打した。

 ジョカは吹っ飛び、地面をゴロゴロと転がる。

 

「くっせぇ匂い……お前の仕業か」

「な、ば、ばんべ……!?」


 鼻血のせいで、うまく話せない。

 ジョカは立ち上がり、顔を押さえ驚愕していた。

 フレアは、首をコキコキ鳴らす。


「寝てたら変な甘ったるい匂いがした。それと、第七地獄炎が燃えてるの感じた。怪しいと思ってたら、お前の気配を感じた。んで、俺が狙いってわかったから、テントの前で構えてただけ」

「な……」

「さーて。お前は敵だな……覚悟しろ」


 フレアは腕をグルグル回し、構えを取る。

 ジョカも、顔を拭い構えを取った。


「呪闘流甲種第三級呪術師ヴァルフレアだ。よろしくな」

「呪闘流幻種第一級呪術師ジョカ。穏便に済ませようと思ったけど……後悔しても遅いわよ」


 仲間が何も知らず眠る中、フレアとジョカの戦いが始まった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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