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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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BOSS・聖天使教会十二使徒『夜』のドビエル②

 ドビエルの生み出した『量産型天使』こと『夜天光(やてんこう)』は、黒い槍や剣をミカエルに向けて飛んできた。

 ミカエルは炎を帯びた赤い剣を振り、夜天光を焼き尽くす。

 だが、少し離れた場所に浮かぶドビエルは、特に表情を変えない。

 ドビエルの傍に浮かぶ試験管。『黒く悪しき試験管ヘルメス・トリスメギストス』から黒いドロドロした液体があふれ、一瞬で夜天光を形成する。


「このっ……ウザったいわね!!」

「なら、あなたの炎で一帯を焼き払えばいいでしょう?」

「……ッ」

「それをしないのは、あなたの甘さだ。人間どもなど吐いて捨てるほどいるのに、気を遣う理由がわかりませんね」

「ドビエル……ッ!!」


 ミカエル、ドビエルがいるのは岩塩湖の上空。

 ミカエルなら、炎で一気に夜天光を焼き払える。だが、炎の出力を上げると、すぐ真下の岩塩湖も炎で燃えてしまう可能性がある。

 なので、大技は使えない。

 それだけでもハンデなのに……ドビエルの作りだした夜天光が、単純に面倒だった。


「っく、この雑魚!!」


 ミカエルは剣を振るう。

 だが、夜天光の一人が剣を盾で受け止めた。

 さらに、ミカエルの背後から数人の夜天光が槍を構えて特攻、少し離れた場所では、弓矢を構えた夜天光が何人かミカエルを狙っていた。

 一体一体が、階梯天使並みの強さ。それが、十、二十、三十……どんどん増えている。


「『烈火皇(エンジン)』!!」


 ミカエルの翼が広がり、全身が一気に燃え上がる。

 接近していた夜天光が一気に燃え上がり、飛んできた矢も蒸発した。

 だが、これが限界。これ以上火力を挙げるのは危険だった。


「ふむ。弱い……今のあなたなら、『神玉』を飲むほどでもなかった。あの聖天使教会十二使徒最強のミカエルの弱点が、まさか人間だとは」

「…………」


 違う。

 以前のミカエルなら、迷わず大火力でドビエルを焼いただろう。

 だが、今のミカエルはできない。人間のことを知った今、人間を殺すなどできなかった。

 ミカエルは、全身を燃やしながらドビエルを睨む。


「なら、少し戦法を変えましょう。今の夜天光なら……」


 試験管から、ゴボゴボと黒いモヤがあふれだす。

 モヤは夜天光となり、規則正しく横一列に並んだ。


「『量産型天使隊列(ブラックスクラム)』」


 夜天光は肩を組み、ミカエルに向かって突進してきた。

 その数、実に二千。

 ミカエルは翼を広げて上空へ。だが、夜天光が先回りして行く手を阻む。

 そして、ついに。


「う、あぁっ!?」


 夜天光の一人が、ミカエルの翼を掴んだ。

 そのまま、一気にがや群がる。ミカエルの首を、足を、腕を、身体を押さえつける。火力を上げようとしたが、翼を押さえつけられ上手く火力が上がらない。


「殺すな。せっかくだ。聖天使教会十二使徒最強の『炎』を、この手で解剖してやろう」

「はな、せっ!! 離せ離せ離せっ!!」


 ミカエルは暴れる。

 だが、燃えるたびに別の夜天光がミカエルを押さえつける。

 ミカエルは歯ぎしりする。ドビエル程度にいいようにされるとは。

 一時的に神に匹敵する力を得られる『神玉』が、これほどとは。

 

「その前に……ミカエル。あなたには呪術師への餌に」


 と、次の瞬間。

 ドビエルの頭上に、拳を振りかぶったフレアが現れた。


「!?」

「烈の型『極』───『火炎龍焱舞(ひえんりゅうえんぶ)』!!」

「何ッ!?」


 四肢が真っ赤に燃えていた。

 いつものように燃え上がるわけではない。炎を凝縮した四肢は赤くなり、強烈な熱を帯びている。

 フレアは、零式創世炎の『知識』から、烈の型『極』を習得した。

 零式創世炎は『世界』の始まり。いつ、どこで、どんなことがあったのかアクセス可能なのだ。だが、膨大な情報量はフレアの脳をパンクさせる。フレアが本当に必要な知識だけダウンロードできるようになっていた。

 フレアの灼熱拳が、ドビエルの顔面に突き刺さる。


「ギャァっつづぁぁぁぁぁ!?」


 連続攻撃の『桜花連撃』と、顔面を狙った集中打である『百花繚乱』、そして関節部分だけを狙った『登楼牡丹』の組み合わせによる灼熱の演武。それが烈の型『極』である『火炎龍焱舞(ひえんりゅうえんぶ)』だ。

 フレアの連続攻撃を受けたドビエルは地面に激突。同時に、夜天光が煙のように消えた。


「フレア……」

「とどめ、どうする?」

「やる」


 解放されたミカエルはフレアを見て赤面。だが、ニヤッとしたフレアが指さしたドビエルを見て、一瞬で怒りが沸き上がった。

 ドビエルは、全身火傷を負ったがなんとか逃げようと這いずっている。

 ミカエルは、ドビエルの目の前に降り立った。


「ひ、ヒィィィィィィッ!? みみ、ミカエル、その」

「黙れ。それと、神に伝えて。あたし、フレアと一緒に行くから。いくら創造主でも、心までは従うつもりないってね」

「あ、あ、あ……」

「じゃ……ぶっ飛べ!! 『炎鶴波(メガクレーン)』!!」


 ミカエルの剣から火玉が生み出され、巨大な『鶴』となってドビエルを飲み込んだ。

 そのまま、炎の鶴は彼方に飛び去った。


「おぉ~……」

「ふん。ドビエルのくせに」

「お、黒い天使みんな消えたぞ。あいつを倒したからかな?」

「そうね。っと……そんなことより、いろいろ話すことあるわ。あんたの仲間もいるんでしょ? 場所変えて話をするわよ」

「ああ。へへ、やっぱりな」

「……なにが?」

「おまえ、俺と冒険する運命だったんだよ。な、ミカちゃん」

「…………っ」


 ミカエルは、赤くなってそっぽ向いた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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