BOSS・裏切りの八堕天使『力』のエゼキエル
「神風流、『流星杭』!!」
「ぐっ!?」
カグヤの飛び蹴りが、エゼキエルの防御に直撃する。
両腕を交差させた十字受け。それだけで岩をも砕くカグヤの蹴りを防ぐこと自体不可能だ。だが、エゼキエルの両腕が青白く発光し、なんとか防御できた。
エゼキエルは、流星杭の着地の瞬間を狙って蹴りを放つ。
「だらぁっっしゃ!!」
「っぐ!? この……ッ!!」
着地の瞬間。それが弱点となることはカグヤにはわかっている。だからこそ、着地の瞬間を最も警戒していたのだが、エゼキエルの蹴りは鋭く、身体を捻ってようやく回避できた。
互いに距離を開け、肩で息をしながら構えを取る。
「あんた、人間のくせにやるね……あたしの『闘気』を貫通しかける蹴りなんて、人間でここまでの強さ、数百年ぶりかも……!!」
「アンタこそ……そのオーラとかいうの、なに?」
「これ、あたしの天使としての力。元聖天使教会十二使徒『力』のエゼキエルとはあたしのことよ」
「ふーん……十二使徒」
「元、ね。今は裏切って堕天使だけど」
「裏切って、って……なんで?」
「決まってる。聖天使教会じゃ私闘禁止だから。強いやつと戦いたいのに、アルデバロンの奴はそれを許してくれない。だからガブリエルの誘いに乗って聖天使教会辞めたのよ」
「わお……アタシ、アンタみたいな奴けっこう好きかも」
「やっぱり。あんたも?」
エゼキエル。
カグヤは、なんとなく嫌いになれなかった。
足を合わせてわかった。この力は、鍛錬に鍛錬を積んだ者の技であると。
「あんたのこと、嫌いじゃない。でも……あたしは呪術師ヴァルフレアと戦う。だから、あんたを倒す」
「そ……でも、それは無理。アイツを倒すのはアタシよ」
「「…………」」
互いに構え、ニヤリと笑う。
すると、エゼキエルの背から灰色の翼が開いた。
「改めて名乗る。あたしは『裏切りの八堕天使』所属『力』のエゼキエル。あんたを強者と認め、最大の奥義を放つ」
カグヤも、右足、左足を交互に掲げて構えを取る。
「神風流皆伝七代目『銀狼』カグヤ。エゼキエル、アンタに敬意を表し……アタシも全力を」
カグヤ、エゼキエルの間に、緊張が走る。
エゼキエルの全身が『闘気』に包まれ、両拳に灰色の籠手が装備された。
「破神器───『オーラ・ブレイカー』」
壊れた神器。
神と天使を裏切ったことで変異した神器。堕天使の持つ力の象徴だ。
装備すると同時に、エゼキエルのオーラが跳ねあがった。
そして、エゼキエルは翼を広げ跳躍。莫大なオーラが拳の形となり、そのままカグヤに向かって振り下ろされた。
「『力の堕天使・闘魂爆拳』!!
オーラの拳。
単純な力が、カグヤを押しつぶそうと振り下ろされる。
カグヤは、右足を掲げ───深呼吸。
「この技は───……対アイツ用に生み出した奥義」
神風流は、足技。
その足技をベースに、特異種の力を加えた裏神風流を作りだした。
対フレア用。
ずっと考えていた。フレアに対抗するには、格闘技はもちろん、呪術に地獄炎も考慮しなければならない。なら……どんな呪力も通さない、地獄炎でも焼き尽くせないとしたら?
カグヤは、左足で立ち、右足をオーラの拳に向かって全力で突き出した。
「裏神風流『地獄』奥義!! 『銀牙咬合・紅蓮咀嚼』!!
カグヤの『神風零式・甲脚』の右足が、巨大な狼の咢に変形。そのままオーラの拳を咥え、ガチガチと咀嚼した。
「喰らい尽くせぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーッ!!」
「やってみろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
カグヤの足が咀嚼するか、エゼキエルのオーラが足を砕くか。
結果は───相打ち。
「っがぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「あぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
爆発。
カグヤ、エゼキエルともに吹き飛ばされた。
カグヤは数十メートル離れた大木に激突。血を吐いた。
右足はグチャグチャに折れ曲がり、鎧も砕けていた。
エゼキエルは反対側の森に突っ込み、木々を砕きながらようやく止まった。
「っが……あ」
そして、細い枝が腹部を貫通……吐血した。
急激な眠気が襲ってきた。
死。エゼキエルは実感した。
だが……満足もしていた。
最後の最後に、こんな強い人間と戦うことができたのだ。
呪術師ヴァルフレアとは戦えなかったけど、最後の相手がカグヤでよかったと、心から満足した。
そのまま目を閉じ───襲ってくる睡魔に身を委ねる。
「こら、寝るな!!」
「え……」
すると、目の前にカグヤがいた。
カグヤは、上半身こそボロボロだが、下半身は傷一つない。
『神脚』という能力は、『下半身に限りなんでもできる』だ。カグヤの両足はもちろん、装備した物もカグヤの『足』として認識されている。なので、装備が砕けても一瞬で回復する。
カグヤは、すぐにエゼキエルの元に来ていた。
「このままじゃ死ぬわね。待ってて、アタシの仲間んとこ連れてってあげる。ちょっと痛いからね」
「う、っぎ!?」
刺さった枝を根元からへし折り、エゼキエルを担ぐ。
エゼキエルは、カグヤに聞いていた。
「な、んで……」
「助けるのか、って? そんなの決まってる。アンタが死んじゃうからよ」
「…………」
「それと、アンタは最初から戦いしか見ていない。アタシと似てるし……悪い奴には見えないの。あーもう今のなし!! ともかく、怪我の手当てするわよ!!」
「…………」
エゼキエルは敗北を感じ……そのまま静かに目を閉じた。




