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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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BOSS・呪闘流八極式冰種第一級呪術師ヒョウカ

 俺が黄金の炎で身体を燃やすと───ヒョウカは、そっと手で制した。


「お待ちを。戦いの前に……話しておきたいことが」

「あん?」


 ヒョウカは、キトリエルとサリエルを見て言う。


「この二人には一切の手を出させません。わらわだけでお相手します」

「「はぁ!?」」

「うおっ」


 すると、キトリエルとサリエルが仰天……え、こいつらも知らないのか。

 二人はヒョウカに詰め寄る。


「ちょちょ、何言ってんのアンタ!? アタシら呪術師捕まえに来たんっしょ!? タイマンとか聞いてねーし!!」

「そ、そうですぞ。なぜそういう『答え』になったか、説明を!!」

「うるさい……黙りなさいな。あなたたち、わらわに意見する立場にあるとでも?」

「「……」」


 おお、二人が黙りこくった。

 ヒョウカは、俺に指を突き付ける。


「フレア様。わらわと勝負を」

「……いいぞ」

「そして、わらわが勝ったら───……わらわを『妻』としてお迎えください!!」

「「「…………は?」」」


 俺、サリエル、キトリエルはポカンとした。

 そして数秒……サリエルが爆発した。


「はぁぁぁぁぁ!? ちょ、アンタ頭おかしくなったの!? つつ、妻って、妻ぁ!?」

「そうですわ。というか、うるさいですわね」

「おおお、お待ちを!! ヒョウカ様。あなた、暁の呪術師としてフレア様を捕える立場にあるのでは!? どういう『答え』を出せばこんな結論に!?」

「フレア様の拳に惚れた。それだけのことですわ」

「「えぇぇぇぇっ!?」」


 つーか、やかましいな。キトリエルとサリエル。

 すると、キトリエルとサリエルは一瞬で俺の元へ。


「ちょっとちょっと。アンタあいつに何したのよ!?」

「え、いや。ぶん殴っただけで……」

「うむむ。なぜこんなことに。フレア様、『答え』を教えていただきたい……!」

「俺に言われても。てか、お前らにも想定外なのか」

「そうに決まってんじゃん!! ああもう……」


 頭を抱えるサリエル、キトリエル。

 すると、ヒョウカは頬を染めながら言った。


「ふふ。フレア様……あなたの拳、また感じてみたいですわ。わらわが勝ったら『行為』も……いずれは『出産』も……うふふふふ」

「「「…………」」」


 なんかヤバいぞこいつ。

 というか、勝ったら妻にしろとか、どんな要求だよ。

 俺、サリエル、キトリエルは顔を寄せた。


「おい、お前らの大将だろ。なんとかしろよ……俺、やりづらいぞ」

「それはこっちのセリフ。暁の呪術師っていうからとんでもないと思ってたのに、あれじゃタダの恋する乙女じゃん」

「いやはや、望みはフレア様ですし。ここはフレア様になんとかして頂きたい」

「えー……あ、ちょっと待て」


 ヒソヒソと三人で話をして気付いた。

 俺は挙手。ヒョウカに向かって言う。


「あのさ、俺が勝ったらどうする?」

「どうぞお好きに……ふふ、この身を好きにして構いませんので」

「えー……」


 絶望的に興味ない。

 ってか、俺を捕えるんじゃなかったのかよ。

 ヒョウカは、着ていた呪道着を脱ぎ捨てる。その下には、戦闘用の呪道着を着込んでいた。長い髪を簪で結わえ、そのまま型を取る。

 表情でわかる……こいつ、本気だ。

 サリエルとキトリエルは顔を見合わせ、軽くため息を吐いて俺から離れた。

 ヒョウカは、手を揺らりと流れるように動かし、右足を前に出す。


「呪闘流八極式冰種第一級呪術師ヒョウカ。あなたの心、頂戴致します」


 相手が名乗りを上げたら返すのが流儀。

 俺は先生からそう習った。

 身体を軽く動かし、『甲の型』で構えを取る。


「呪闘流甲種第三級呪術師ヴァルフレア。お前を呪ってやるよ」

「ふふ。ご安心を───わらわ、すでに呪われています。恋という呪いに……♪」

「…………そ、そうか」


 意味がよくわからないまま、戦いが始まった。


 ◇◇◇◇◇◇

 

 (ひょう)の型。

 第二地獄炎を主体とした、蹴り技に特化した型───あ、あれ?

 俺は頭を押さえた。


「あれ、なんで知ってんだ?……冰の型って」

「フレア様?」

「あ、いや……たぶん、零式創世炎のせいか?」


 ヒョウカを見た瞬間、冰の型について頭に浮かんだ。

 第二地獄炎を脚に纏い使う、呪闘流で蹴り技に特化した『八極式』の型。だが、足技だけではない。『(サイ)』という、簪のような二本の槍みたいな武器を扱う。

 以前とは違い、ヒョウカは本気だ。

 零式を使い、七種の地獄炎で翻弄することもできる……だが俺は、第一地獄炎だけで戦う。さらに魔神器も使わないことにした。

 両手に紅蓮の炎を燃やすと、ヒョウカは言う。


「……黄金の炎は使いませんの?」

「ああ。お前には悪いけど、お前の技を身体で感じたい……」

「か、身体を感じたいなんて……ふふ、終わったらいっぱい愛してくださいな」

「……よくわかんねぇけどやめとく」


 ヒョウカは両手に『釵』を持ち、両足を青い炎で包み込む。

 これが冰の型───くそ、カッコいい。


「では───参ります!!」


 ヒョウカが足を踏み出すと地面が凍り、その上を滑るようにヒョウカは向かってくる。


「冰の型、『地滑り』!!───ッシ!!」

「うおっ!?」


 滑るように移動してからの、釵による刺突。

 ただ滑っているだけなのに、その速さはカグヤの直線ダッシュ並みに速い。さらに、氷で空中に足場を作り、その上を舞うように飛ぶ。

 上下左右、変幻自在の刺突攻撃だ。

 だが───躱せる。


「流の型───」

「冰の型───」


 ヒョウカの両足と釵が凍り、俺の両手が揺らめくように動く。

 

「『釵氷空刃(さいひょうくうじん)』!!」

「『流転掌』!!」


 凍った釵を振るうと、三又の氷が飛んでくる。

 それを流転掌で流す───だが、三又氷は大量に飛んできた。さらに、ヒョウカが動き回りながら飛ばすものだから捌くのがキツイ。

 流転掌で氷を叩き落していると───ヒョウカが接近してきた。


「はぁっ!!」

「うおっ!?」


 急接近からの、回し蹴り。

 凍った足は鋼鉄並みの硬度がある。もし直撃していたら骨が折れてた。

 だが、これでわかった。

 地面を凍らせ滑っての高速移動。釵と足技による攻撃が、第二地獄炎『冰の型』だ。

 俺は、両手を紅蓮に燃やし───ニヤリと笑う。

 ヒョウカの動きが止まり、俺と真正面から向き合った。


「楽しそうですわね」

「ああ。すっごくな」

「わかりますわ……わらわも、楽しいですから!!」


 ヒョウカが地面を蹴ると、周囲に『氷の道』が大量に形成される。

 その道を、ヒョウカが高速で移動していた。残像ができるくらい速い。呪力で身体強化しての移動だ……ふふふ、やっぱり強い。

 

「さぁ───本気で滑りますわ!!」


 もはや、ヒョウカが分裂したような速度だった。

 十人、二十人のヒョウカが釵に氷を纏わせて俺に向けている。 

 そして、全てのヒョウカが三又の氷を俺に向かって飛ばしてきた。


「冰の型『極』───『冰釵繚乱(ひょうさいりょうらん)』!!」


 三十以上の氷の釵が、俺に向かって同時に飛んできた。

 飛んでくる速度は、カグヤの蹴りよりも速い。並の奴なら、一瞬で串刺しだ。

 だが───俺には通用しない。


「甲の型『極』───『金剛夜叉(こんごうやしゃ)』!!」


 全身を一気に硬直させ硬化。

 氷の釵は俺に直撃すると、一斉に砕け散った。

 

「っぐ……!!」

「まさか『金剛夜叉』!? しまった、フレア様は四大行の『極』が───」


 俺は動いた。

 ヒョウカの動きは速い。だが───もう慣れた。

 氷の道は無数に伸びている。その内の一本に先回りすると、ヒョウカが正面から現れた。


「なっ」

「滅の型『極』!! 『破戒拳・烈火』!!」


 燃えた拳が地面を叩き砕き、止まることのできないヒョウカは飛んできた瓦礫に直撃。全身を強く打ち吹っ飛び、地面を転がった。

 冰の型。動きは速いけど、その動きを止めた瞬間を叩けばいい。

 ヒョウカは、血塗れで転がり、ボロボロのまま俺を見た。


「ぅ……ま、負けました、わ」

「ああ。お前、かなり速かった……第二地獄炎で地面を凍らせて滑るなんてな。冰の型、面白そうだ」

「ふ、ふふ……わらわ、あなたに……惚れなおし、ました。フレア様、わらわを、妻に……」

「あー……妻とかよくわかんねーけど、お前話せばわかるみたいだし、いいぞ」

「え!?」


 うお、ヒョウカがいきなり起き上がった。

 そして、負傷を無視して俺に迫る。


「そそ、それはつまり!! わらわを妻に!?」

「いいぞ。まぁ、今は無理だけどな。先生も言ってた。『女の頼みは聞け。泣いてたら慰めてやれ。求められたら応えてやれ』って」

「ほァァァァ! やったぁぁぁぁぁ!」

「変なヤツだな……」

「あ、フレア様。お聞きしたいのですが……正妻はわらわですか?」

「セイサイ? なんだそれ?」

「フレア様はおモテになるでしょう? すでに愛する女性が何人もいるのでは? 序列的に、わらわは正妻の位置で……」

「……まぁ、うん」


 なんだか面倒くさくなってきた。とりあえず適当に頷く。

 というか、そんな場合じゃない。


「あ、そうだ!! ドビエルとかいう奴を止めないと!!」

「フレア様。式はいつごろ挙げます? ふふ、楽しみ……」

「とりあえず、また後でな!!」


 俺はヒョウカを第四地獄炎で治療し、その場を離れた。


 ◇◇◇◇◇◇


「…………どうしよ?」

「うぅむ……このような結果。誰が予想したでしょうか? フレア様が出す『答え』は、小生にも予測不能……ふふ、面白い」

「…………あんた、裏切るの?」

「さぁ……ですが、小生ではフレア様に勝つのは不可能。それにサリエル殿。あなたもそうでしょう?」

「あー……まぁね。この辺が潮時かなぁ~。ウチ、あの神様どうも好きになれねーし」

「我らの創造主ですが……まぁ、あなたに同意ですな」

「とりあえず、適当にサボっていいかも。ウチらの大将も呪術師にヤラレちまったしぃ~」

「そうですな。とりあえず……お茶でもどうです?」

「ケーキある?」

「もちろん。ケーキに合う紅茶もございます」

「やりっ! あー……ヒョウカも連れてくっかぁ」


 サリエル、キトリエル、ヒョウカ───【戦闘不能】

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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