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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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悪意の洗礼

 村に戻ると、大勢の兵士が俺とカグヤを取り囲んだ。

 

「は? おい、なんだこれ」

「アタシが知るわけないでしょ」

  

 よく見ると、兵士だけじゃない。

 さっき倒した神官もいるし、女神官もいた。

 それだけじゃない……農具を持った住人だろうか、敵意を向ける連中も多かった。 

 わけわからん。せっかくダークスコーピオンを倒したのに。


「異端者め!! さっさとこの村から去れ!!」

「そうだそうだ!!」「天使様を汚す愚か者め!!」

「異端者……そういや、そんなこと言われてたな」

「特異種を嫌うんだっけ? 面倒ね……」


 カグヤは面倒くさそうに周囲を見回す。

 

「ねぇ、プリムたちはどうする?」

「ナキもアイシェラもいるし、大丈夫とは思うけど。とりあえずダークスコーピオンのことだけ報告してみるか」

「そうね。あ、ちょうどギルド職員いるわ。おーいそこの、おーい!」


 カグヤが手を振ると、ギルド職員の受付嬢さんが「ひっ」と喉を鳴らす。

 武器を向けられていたので、動かずに叫んだ。


「あっちにダークスコーピオンの死骸あるから。片付けよろしくな」

「ほらどきなさいよ。蹴り殺すわよ」

「異端者!!」「出て行け!!」「村に入るな!!」


 う、うるせぇな……なんだこいつら。

 ダークスコーピオンを倒したのに礼もなしかい。

 兵士も神官も、武器を向けるだけで特に襲い掛かってこなかった。だが、女神官は言う。


「一刻も早く出て行け。さもなくば、聖なる鉄槌が貴様らを襲うだろう」

「なんだそりゃ。わかったわかった、出てくからもう喋んなって」

「胸糞悪い村ね。ダークスコーピオンなんて放っておけばよかったわ」


 そう言って、カグヤと一緒に宿へ向かった。


 ◇◇◇◇◇◇


 宿屋の前では、何人か兵士や神官が倒れていた。

 アイシェラ、ナキが前に出て、プリムが真ん中、その後ろにクロネがいる。シラヌイが全身を真っ赤に燃やして威嚇し、ブルーパンサーもバチバチ放電していた。

 ああ。こりゃ何かあったわ。


「おーい。何してんだ?」

「フレア!! あの、大丈夫でしたか!?」

「お、おう。プリムたちも大丈夫か?」


 近づくと、兵士と神官が俺に武器を向けた。

 面倒くさい……そう思った瞬間、カグヤの蹴りが兵士一人の顎を叩き割った。


「邪魔。全員、顎ブチ砕くわよ」

「「「「「ひっ……」」」」」


 兵士と神官はズリズリと離れ、そのまま逃げて行った。

 カグヤは、転がった兵士を一瞥。


「ホントに何なの? こうも敵意剥き出しだなんて」

「……ホワイトパールは、特異種に対する差別が酷いところにゃん。天使崇拝国家で、聖天使教会と最も密接な関係を持つにゃん。住民も、このように天使を崇拝してる。特異種は天使を汚す存在として憎まれてるにゃん」


 クロネがそう言うと、プリムは俯く。

 そういや、プリムも特異種だ。いろいろあったのかねー。

 アイシェラは舌打ちする。俺はアイシェラに聞いてみた。


「ッチ……相変わらずの腐敗っぷりだ」

「なぁアイシェラ。特異種差別ってそんなに酷いのか?」

「……私とお嬢様、貴様の三人で旅をしていた場所は、比較的差別の少ない場所だった。だが、本国に近ければ近い場所ほど、特異種の差別は強い」

「ふーん」

「…………シラヌイ、手伝え」

『くぅん』


 ナキは余計なことを言わず、シラヌイと厩舎へ。

 クロネも察したのか、宿へ入って荷物を回収した。


「買い物済ませといてよかったにゃん……」

「…………」

「お嬢様。気にすることはありません」

「うん……わかってる」


 プリムは俯いたまま、ナキが運んできた馬車に乗り込んだ。


 ◇◇◇◇◇◇


 結局、一泊もすることなく村を出た。

 出発したのは夕方前だったので、ほんの数キロ進んで野営の支度をする。

 テントを張り、かまどを作り、ナキとクロネが食事の支度をした。

 食事を終え、全員で焚火を囲んでいると……プリムが言う。


「わたしは……この特異種の力を、ずっと秘密にしてきました」

「アイシェラ、水く「黙ってろ」……」


 どうやらプリムの語りを邪魔しちゃいけないらしい。

 すると、シラヌイはプリムの膝に飛び乗り甘えた。


「初めて能力を使ったのは、乳母が怪我をした時。その時、乳母は「誰にも言うな」って言って……その意味がわかって、わたしは家族にも能力のことを秘密にしてきました」

「よく隠せたわね」

「ええ。なんとか……アイシェラもいたから」

「ふ、お嬢様のためなら」

「……で? プリムの嬢ちゃん、続きを」

「はい。お父様が病気になって、次期国王の話が出始めて……お兄様やお姉さまたちが、どんどん険悪になって……わたし、怖くなったんです。もしこの能力のことが知られたら……」


 すると、アイシェラが言う。


「お嬢様に国を捨てるように言ったのが私だ。王位継承権を放棄し、王族から除名、そのまま平民となり、新天地で私と愛を育むようにとな」

「愛は育んでいない。でも、国を出て正解でした」

「そこで、俺と出会ったってわけか」

「はい。おかげで、とっても楽しい旅ができました!」


 プリムは笑った。

 ナキは煙管を取り出し、煙草に火を点ける。


「ところで、プリムの嬢ちゃん……父親には会いたくないのか? 病気なんだろ?」

「…………わたし、末っ子でしたし。小さい頃から挨拶くらいしか。それに、十歳を超えてから殆ど会ってません。それに、お父様はわたしに冷たかったから……」

「そうかい……まぁ、別にいいが」

 

 ナキは煙を吐きだした。

 すると、カグヤが大きな欠伸をした。


「ともかくさぁ、ホワイトパール王国行くんでしょ? 王族とか関係なしに、観光して楽しみましょうよ」

「賛成。まずは、岩塩湖だな。アイシェラ、案内頼むぞ」

「貴様ら、お嬢様の話を聞いてなんとも……いやいい、お前たちには言っても無駄だな」

 

 アイシェラは首を振って諦めたように言う……それはそれでムカつくな。

 プリムは、シラヌイを撫でながら明るく言った。


「暗い話をしてごめんなさい。今は、お父様や兄弟たちに対する感情はとくにありません。一人の旅人として、ホワイトパール王国を冒険します!」

「だな。じゃあもう寝るか……カグヤ、俺と見張りだから先に寝ようぜ」

「はーい。くぁぁ~……水浴びしてから寝よっと」

「あ、わたしも」

「お嬢様の身体を洗うのはこのアイシェラで「いらない」はうっ!?」

「うち、見張りするにゃん」

「じゃあオレも。フレア、起こすからゆっくり寝な」

「ありがとな、ナキ」


 プリムもいろいろ大変だけど、まずは岩塩湖を観光しますか!

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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