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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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天使への祈りと特異種

 俺とカグヤは、さっそく教会内へ。

 教会内は広く、のどかな村に合わない豪華な作りだった。

 半円形のドーム状で、中央に天使の像が安置されている。その周りに村人たちが集まり、右手を胸に当て、左手で十字を切るような動きをして祈りを捧げている。

 カグヤに顔を近づけ、ボソボソ言う。


「なんかさ、ヘタに話でもしたら怒られそうだよな」

「確かにね。ってか、アタシここ嫌い」

「俺も……もう冒険者ギルド行こうぜ」


 そう言って、教会から出ようとする。

 すると、純白に金の刺繍が施されたローブを着た初老の女性が立ちふさがった。

 いきなりでビビる。女性はめっちゃニコニコしていた。


「祈りは済ませましたか?」

「あ、いや、その」

「済ませましたか」

「えっと……ま、まだかな?」

「では旅の方。作法を教えますので、同じようにしてください」

「「は、はい」」


 逆らっちゃヤバい。

 俺とカグヤは同時に頷き、女性司教の言う通りにした。


「祈りを込めた右手を心臓に当て、左手で十字を切ります。この時、天使様への感謝を忘れてはいけません。いいですか?」

「「は、はい」」

「では、偉大なる『大天使ヴァラキエル』様の像の元へ」


 あの銅像、ヴァラキエルっていうのか。

 聖天使教会十二使徒の誰かだとは思うけど。けっこう厳ついおじさん天使だ。こういう奴がローブを脱ぐと、大抵がムキムキなんだよな。

 像の前に移動し、村人たちと同じ動きで祈りを捧げる。


「聖天使に感謝を」

「「「「「聖天使に感謝を」」」」」

「うおっ……せ、せいてんしに感謝を」

「聖天使に感謝をー」


 祈りを捧げると、村人や女性司教はニコニコしていた……なんか怖い。

 俺とカグヤは、女性司教に頭を下げた。


「では、失礼します!」

「お邪魔しました!」


 そのまま、逃げるように教会を出た。

 カグヤは、胸を押さえながら言う。


「なんか、魔獣とか天使とかよりも怖いわ……あんなニコニコした笑顔、仮面かぶってるみたいでキモイ」

「わかる。ホワイトパール王国は天使を崇拝してる国、か……俺とかお前、天使をかなりブチのめしてるからヤバいよな」

「あはは。確かにね」


 さて、思わぬ寄り道だった。早く冒険者ギルドへ行こう。


 ◇◇◇◇◇◇


 冒険者ギルド内は、大勢の冒険者がいた。

 こんなのどかな村にたくさんの冒険者。かなり違和感あるな。

 カグヤは依頼掲示板へ。俺は受付へ行った。


「ねぇねぇ、なんか人多いけど、面白そうなことでもあった?」

「えっと、実は……近くの森に『ダークスコーピオン』が現れて……その討伐隊が結成されたんです」

「ダークスコーピオン?」

「はい。SSレートの魔獣です。本来のダークスコーピオンはA+レートなのですが、今回発見されたのは異常成長した特殊個体で、討伐に向かった上級冒険者チームが壊滅して……」

「おお。そりゃヤバい」

「つい先ほど、先発隊が出発して、ここにいるのは第二陣です」


 なるほど。ダークスコーピオンか。

 第一陣が出発して、第二陣がここにいる。

 俺とかカグヤなら倒せると思うけど、せっかく集まった討伐隊だしな。

 俺は依頼掲示板を眺めているカグヤの元へ。


「はぁ~……ろくな依頼ないわ。討伐系は一件もなし」

「そりゃ残念。他になんか面白そうなのは?」

「なーい。薬草採取でもやる?」

「ん~……やめとく」


 ギルド内は人が多いだけで面白くない。

 それに、なんか腹も減ってきた。


「……買い食いでもするか?」

「賛成! 小さい村だけど出店くらいあるでしょ。じゃ、アンタの奢りね!」

「なんでだよ。お前の奢りだろ? 俺、お前にかなり奢ってるんだけど」

「男のくせに細かいわね」

「お前、そういう時だけ男とか言うなよ」


 カグヤと話ながらギルドの外へ。

 すると、血生臭い匂いがした。

 俺とカグヤは同時に匂いの方へ向く……そこには、血塗れの冒険者がいた。

 

「た、たす、け……」

「……っ、おい!?」


 ふらりと倒れそうになる冒険者を支える俺。

 カグヤはすぐにギルド内へ。

 冒険者は、息も絶え絶えに言った。


「だ、ダーク、スコーピオン……ぜ、ぜん、めつ、した」

「全滅……?」

「みんな、死ん、だ……ダークスコーピオン、ここ、向かって、る」

「……おい!?」


 冒険者は、ヒューヒューと呼吸が荒くなる。

 傷だらけで、血を失いすぎたんだ。

 俺は迷わず右手に第四地獄炎を纏う。


「第四地獄炎、『治癒炎』」

「───……っ、あ、あれ」


 冒険者の怪我は一瞬で治った。

 そして、ギルド内から冒険者たちとギルド職員が出てきた。

 さらに、無数の視線……そこで俺は気付いた。


「ま、まさか……い、異端者!? 異端者がいるぞ!! 天使様を汚す異端者だぁぁァァァァァァ!!」

「は?」


 村人の誰かが叫んだ。

 すると、教会からさっきの女性司教が現れた……おい、なんで槍を持ってる。

 そして、司教と似たようなローブをまとった男たちもいっぱい出てきた。


「異端者。これより裁きを始めます……」

「は? ちょ、なんだこれ?」


 槍を突き付けられる俺。

 助けた冒険者も離れ、ギルド職員や冒険者たちに連れて行かれた。

 囲まれるのは俺……え、なにこれ?

 すると、女性司教が言う。


「呪われし異端者。天使様を汚す汚らわしき者め!! その命、神に返しなさい!!」

「ちょ、どういう……」

「とぼけるな!! その身に流れているのは天使様の血!! 人間が天使様の奇跡を使うなどおこがましい!!」

「……あ、そっか。ホワイトパール王国って特異種を嫌ってるんだっけ」

「やれ!!」


 女性司教が命じると、槍が一気に突き出される。

 俺はしゃがんで槍を躱し、そのまま地を這うように部下の男たちに接近。


「流、滅の型『合』───『散葉舞踊』!!」


 流れるような連撃を男たちに叩き込み気絶させた。

 そして、女性司教の目の前に立つ。


「ひっ」

「とりあえず、後にしてくれ。さっき治した冒険者が言ってたけど、ダークスコーピオンとかいうのが村に来てる。なんとかしないと」

「い、異端者め……貴様が呼び寄せたのだろう!?」

「アホか。もういい」


 すると、冒険者ギルドからカグヤが出てきた。


「フレア、ここヤバい。アンタが特異種だって一気に広まったわよ。このダークスコーピオンの騒動、アンタが呼び寄せたことになってる」

「え」

「あー……なんでこう、トラブルばかり。とりあえず、ダークスコーピオンをブチのめしに行くわよ!!」

「あ、待てよおい!!」


 どこかウキウキしているカグヤは村の外へ。それを追い、俺も走り出した。

 ったく……いきなりトラブルだ。やっぱり面倒なことになっちまった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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