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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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特異種という存在

 ホワイトパール王国領土に入った俺たちは、アイシェラの操作する馬車で街道を走っていた。

 馬車の中にはプリム、シラヌイ、クロネ。アイシェラの隣にナキが座り、屋根の上には俺とカグヤがうつ伏せになり並んで寝転がっていた。

 俺は、馬車の屋根から顔を出す。


「なーアイシェラ、どこ向かってんだ?」

「この近くにある村だ。今日はそこで宿を取る。明日、北上して『岩塩湖』へ向かうぞ」

「がんえんこ……?」

「ホワイトパール王国の名所の一つだ。塩の湖と呼ばれて……まぁ、到着すればわかる」


 と、ここでカグヤが挙手。


「はいはーい。そんなとこ行ってどうすんのよ」

「観光に決まっているだろう? フレア、お前は珍しいものを見たいんだったな。ホワイトパール王国領土の案内は任せておけ」

「おお! さっすがアイシェラ」

「ふ……一応、この辺りは庭のようなものだ」


 ナキは煙草をふかしながら空を見上げる。なんだか煙草が似合う奴だな。


「で、ホワイトパール王国ってのはどこだ?」

「……ここから北上した先にある。それがどうした?」

「いや、行くのか?」

「…………」


 アイシェラは無言だった。

 いちおう、プリムはもうホワイトパール王族じゃないはず。ガブリエル様とかいう堕天使の養子になったみたいだし、書類上の手続きも終わってるとか。

 でも、この国から逃げ出したことに変わりない。

 俺はアイシェラに聞いた。


「アイシェラ、ホワイトパール王国に行って大丈夫か? 捕まったりしないか?」

「……わからん。だが、お嬢様の王位継承権はすでに放棄しているし、ブルーサファイア王国で養子の手続きもした。ホワイトパール王族とはもう関わりないはずだ。もし顔が露見しても、いきなり捕まるということはない……はず」


 アイシェラは自信なさげに言う。

 ナキは煙草の灰を小さなケースに入れ、煙管を懐へしまう。


「国内情勢がわかればな。次期国王の候補は何人かいたんだろ?」

「お嬢様のご兄弟が何人か……」

「それと、国王は病気だったんだよな?」

「ああ。内臓の病でな……余命一年か二年と医者が言っていた」

「あ、今のプリムなら治せんじゃね?」

「…………かもな」


 アイシェラは、どこか複雑そうだ。

 すると、カグヤが俺の肩を叩く。


「ねぇ、天使も来るんじゃない? あんたの身内もさ」

「かもな。あ、身内ってのやめろよ。もうあれは先生たちじゃないし」

「……ごめん」


 暁の呪術師。

 正確には、神が作った肉体に、改良した先生たちの魂を定着させた『人形』だ。ココロの切り替えはできたから、次に襲って来た時は容赦しない。

 というか、あのクソ神……魂を改良とか、ナメやがって。


「……ねぇ、アタシがやろうか?」

「え?」

「その、師匠とか、知り合いなんでしょ? やりにくいなら……」

「お前じゃ勝てねーよ」

「あぁん!?」

「……悪い。これはマジだ。先生はたぶん、ミカちゃんとか今までの天使が束になっても勝てないと思う。やれるのは俺だけ……お前には、天使の相手をしてもらいたい」

「……まぁ、いいけど」

「悪いな。ちゃんと礼はするよ」

「……お礼ね。アタシが求めるのは決まってるわ」

「ん?」


 カグヤは、俺の目をしっかり見て言う。


「天使とか神とか呪術師とかの戦いが終わったら……フレア、全てを賭けてアタシと戦いなさい」

「…………」

「アタシも、全てを賭ける。アンタとの戦いには、それくらいの価値がある」

「……マジだな?」

「当たり前。いい?」

「……わかった」


 カグヤの、闘士としての願いだった。

 これを受けないのは、戦士としてカグヤに失礼に当たる。


「……なんマジな話してるな」

「放っておけ。フレアとカグヤにしかわからないことだろう」


 ナキとアイシェラには、どうも理解できないようだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 アイシェラの言っていた村に到着した。

 のどかで小さな村だ。家が二十軒くらいで、畑や牧場とかもある。村の中を小さな川が流れており、子供が木剣を振り回して遊んだり、冒険者っぽいのが集団で歩いていた。


「ここにも冒険者ギルドがあったはず。フレア、カグヤ、ナキ、行ってみたらどうだ?」

「面白そう。俺、行こうかな」

「オレはパス。宿でのんびり寝たいね。馬車の揺れでケツがいてぇ」

「アタシは行く!」


 と、馬車の窓が開く。


「うちは情報収集にゃん」

『わん!』


 クロネとシラヌイは、俺たちが何か言う前に馬車から飛び出した。

 シラヌイ、いつの間にかクロネの部下みたいになってやがる。

 そして、プリムがそっと窓から顔を出した。


「……ホワイトパール王国。来ちゃいました」

「お嬢様。大丈夫です」

「アイシェラ……うん、ありがとう」


 そして、馬車は宿屋へ到着。

 二階建ての、簡素な宿だった。

 アイシェラが受付し、二部屋確保。部屋に到着するなりナキはベッドで昼寝、アイシェラは馬の世話をするため厩舎へ。


「プリム、お前はどうする? 俺とカグヤは冒険者ギルドに行くけど」

「んー……大丈夫です。わたし、アイシェラと一緒にいます」

「そっか。まぁ狭い村だし、何かあったら呼べよ?」

「はい。ありがとうございます」

「じゃ、行くわよ!」


 カグヤが俺の襟を掴んで引っ張る……こいつ、なにすんだよ。

 宿の外へ出ると、カグヤが言う。


「プリム、やっぱり不安みたいね」

「そうか?」

「鈍感なアンタにはわかんないでしょうね。あの子、やっぱりまだお家のこと引きずってんじゃない?」

「お家って……ホワイトパール王国のことか?」

「それしかないでしょ。書類上ではもう王族じゃないけど、血のつながりは残ってんのよ。あの子、末っ子でしょ? やっぱり寂しいんじゃないの?」

「でもよ、俺たちに何ができる? 兄貴とか姉ちゃんに会わせればいいのか?」

「それはプリムが決めることでしょ。とりあえず、あの子が家族に会いたいって言ったら、ちゃんと会わせてあげましょ」

「……お前、たまにはいいこと言うな」

「はぁ!?」


 カグヤと冒険者ギルドへ向かう。

 小さい村なのですぐ見つけた。だが、意外にもギルドは大きい。

 さらに、近くには大きな教会もあった。


「教会かぁ。そういや、こういう建物見るの久しぶりだな」

「グリーンエメラルドじゃなかったもんね」


 ギルドに入る前に、教会を見学する。

 近くに行くと、かなり立派な建物だった。こののどかな村に合ってない建物だ……ぶっちゃけ、異物感がすごい。

 教会を見上げていると、村人のおじいちゃんが寄ってきた。


「あんたら、旅人かい?」

「ん、あ、はい。いやー、立派な教会っすね」

「ほっほっほ。そうじゃろそうじゃろ? この辺境の村にも『聖天使教会』ができてのぉ……いやぁ、天使様に毎日祈りを捧げることができるわい」

「天使……」

「うむ。我々人間を導いてくださる至高の存在じゃ。いやーありがたい」

「はぁ……天使ねぇ」

「お前さんたち、せっかくだし祈っていきなさい。天使の御利益があるぞぉ?」


 天使の御利益とか。

 俺たち、かなりの数の天使ブチのめしてます。御利益とかより呪われてそうだな。

 ちょっと曖昧な笑みを浮かべていると、おじいちゃんの顔つきが変わった。


「それともお前さんたち……まさか、『特異種』じゃなかろうね?」

「「…………」」

「ははは。そんなはずないか。卑しき呪い子なわけないなぁ」


 そう言って、おじいちゃんは鍬を担いで去って行く。

 俺とカグヤは、なんとなく顔を見合わせた。


「そういやアイシェラが言ってたな……ホワイトパール王国って、特異種に対する差別がものすごいって」

「……アタシ、キレたらどうしよう」


 ホワイトパール王国。ここもけっこうめんどくさそうなところだ。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
[気になる点] 283話以外にも何箇所かありますが、「改良した魂」と「改造した魂」の2つの表現は、主人公側から見た視点では「改造した魂」に統一した方がいいのではないでしょうか 「改良」だと肯定的な捉え…
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