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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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天使と神

 天使。

 神に作られた存在。

 ここは、聖天使教会。世界の中心にある天使の国。

 この光景は、天使という存在が始まって以来、初めてのことだった。

 聖天使教会十二使徒『炎』のミカエルは、跪いていた。


「…………」


 ツゥー……と、汗が流れる。

 自分たちを見下ろしているのは、少年。

 背中に十二枚の翼。その周囲には十三本の剣が浮かんでいる。

 存在感だけで、周囲を圧倒していた。


「こうしてみると……いろんな天使がいるね」


 少年ではない。天使でもない。

 彼の名は『アメン・ラー』……天使たちの神。

 さらに、その左右隣には、竪琴を持った女性こと『トリウィア』と、黒い鉱物のような勾玉こと『黒勾玉』が浮かんでいた。

 聖天使教会十二使徒本部には、大勢の天使が終結していた。

 翼の色がそれぞれ違う。白、黒、灰色の三色だ。

 ここに集まったのは、長年わかり合うことのなかった天使の三大勢力。

 聖天使教会。裏切りの八堕天使(ブリューゲル・エイト)懲罰の七天使アインソフオウル・セブンだ。

 ここに集まったのは、『神の命令だったから』だ。

 アメン・ラーは、にっこり笑う……端正な顔立ちなのに、顔の半分が爛れていた。


「ボクたち神から、新しい命令を出す。呪術師ヴァルフレアをブチのめして、ボクたちの前に連れてくるんだ」

「えっ……」


 ミカエルは、思わず顔を上げた。

 すると、アメン・ラーと目が合う。


「簡単なことだよ。ここにいる天使たちは全員がボクらの最高傑作。単体では難しいけど、それぞれ力を合わせればヴァルフレアに十分届く可能性がある。さらに、『暁の呪術師』たちも付けよう。ヴァルフレア、奴をここまで連れてくるんだ」


 私怨。

 ミカエルの頭に浮かんだ。

 今のアメン・ラーは、憎しみによって歪んだ笑みを浮かべている。


(あいつ、何やったのよ……!)


 ミカエルは、冷たい汗を流しながら思う。

 いかに聖天使教会十二使徒最強のミカエルでも、この頭上に浮かぶ神に勝てる気がしない。

 隣に跪いているアルデバロンも、冷や汗を流していた。


「殺しちゃ駄目。いい? ここに連れてくるのよ~? それと、みんな仲良くね♪」


 ポロロンと、竪琴を鳴らしトリウィアが言う。

 黒勾玉も、声にならない振動を出していた。


「あと……ヴァルフレアは得体の知れない『炎』を使う。奴は原初の炎とか言っていたが……クソ、あの野郎」


 アメン・ラーは顔を押さえる。

 あの爛れは、フレアによってつけられたもの。ミカエルは確信した。

 得体の知れない炎。それが何なのかミカエルには……いや、神ですら知らない炎だ。この場にいる天使がわかるとは思えない。

 決まっているのは、ミカエルは再びフレアの敵になってしまったことだ。


「……っ」


 胸が痛んだ。

 フレアと戦いたくない。そう思うと、フレアの笑顔が脳裏に浮かぶ。

 ミカエルは、フレアに恋している。

 そう思うと、胸が張り裂けそうになる。


「じゃ、よろしくね。ああそうだ、フレアを連れてきた子には、『神』に匹敵する力をあげる」


 そう言って、三柱の神は消えた。


 ◇◇◇◇◇◇


 その場で『解散!』とはいかなかった。

 アルデバロンは、すぐ近くにいた黒い翼の天使に話しかける。


「久しいな、サラカエル」

「そうだな、ヴァラキエル……いや、アルデバロンと言った方がいいか? それとも、兄者とでも?」

「ふん。神の命令がなければ、貴様と顔を合わせるなぞ」

「……私に付けられた傷が痛むのだろう?」

「…………」


 バチン!! と、黒い雷が爆ぜた。

 同時に、紫電の雷が爆ぜる。


「聖天使教会十二使徒『雷』のヴァラキエル。貴様の喧嘩、買ってやろう」

「フン。カラスの大将、情けなき『弟』のサラカエル。兄に勝てると思うのか?」


 紫電と黒の雷が大気を震わせ始めた。

 だが、ミカエルの炎が雷を一気に飲み込む。


「馬鹿が二匹。とりあえず、あたしの敵じゃなさそうね……でも、気に喰わないから焼き尽くしちゃおうかしら」


 十二枚の翼が広がり、周囲の水分が蒸発していく。

 間違いなく、アルデバロン、サラカエルよりも強かった。

 サラカエルは舌打ち、アルデバロンはバツの悪そうに矛を収める。


「馬鹿じゃないの? 普段冷静なあんたが、あんなカラスの挑発に乗るなんて」

「……すまん。奴の前ではどうもな」


 黒天使のトップであるサラカエルは、聖天使教会のトップであるアルデバロンの『弟』だった。

 サラカエルは、部下の黒天使の元へ。マキエルが帽子を取って頭を下げた。

 すると、ミカエルの肩をポンポン叩く天使が。


「おいミカエル、ミカエル」

「あ、ダニエルじゃん。どうしたのよ」

「いや、神の命令で集まったけど……どうすんだよ」

「……何が?」

「フレアだよフレア。マジでやんのか?」

「…………」


 ミカエルは、答えられなかった。

 ダニエルも迷いがあるようだ。すると、ズリエルがダニエルを見て叫ぶ。


「あー!? だ、ダニエル先輩!?」

「げっ、ズリエル……ははは。ずいぶんと寂しくなったことで」


 ダニエルは、ズリエルの頭を見て呟く。

 そして憐れんだのち、逃げ出した。

 そんなダニエルを追うズリエル……どうやら、言いたいことが山ほどあるようだ。もともと、ズリエルのやっている書類仕事はダニエルの仕事。それをすべて捨て、堕天使となったおかげでズリエルが十二使徒になってしまったのだ。禿げ上がった頭はすべてストレスによるものだ。

 ミカエルはもう見ていない。見ていたのは別なところだ。


「……久しいねぇ」

「ふん……」


 ジブリールとガブリエル。

 こちらもまた姉妹。こちらも姉妹仲はよろしくない。

 互いに睨みあうと、そのまま視線を外した。アルデバロンたちと違い、争うことはない。

 この二人に何があったのかミカエルは知らない。

 それよりも、やるべきことがあった。

 

「アルデバロン。どうするのよ……フレアと戦うの?」

「それしかあるまい。この様子を見るに、堕天使と黒天使の協力は得られまい。我々だけで」


 と、言いかけた時。

 空間に亀裂が入り、そこから十人の『人間』が現れた。


「なっ……噓!?」


 ミカエルだけではない。この場にいた全ての天使が驚愕する。

 それは、かつての敵……呪術師だった。


「好きな天使を選べ」


 その呪術師は、『呪神』と呼ばれた男だった。

 すると、呪術師たちは天使を物色する。


「あなた、わらわと来なさいな」

「なっ……あたしに言ってるの?」

「ええ。あなた、わらわと同じ匂い……ふふ、仲良くなれそう」


 ミカエルの前に現れたのは、ヒョウカだった。

 周りを見ると、呪術師たちが天使を選んでいる。


「わらわたちの下で戦ってもらうわ。拒否は不可能……これは『神』の命令よ?」

「……そういうことね」


 こうして、呪術師ヴァルフレアを捕えるために、全ての天使が『暁の呪術師』たちの下に組み込まれた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] と言うかこの状況でフレア達勝てんのかなぁ? フレアはいいとして........ プリム、アイシェラ、クロネ、カグラ、お犬様、あとはあのエルフ兄さんか ん? それぞれ相性の良い地獄炎が使え…
[一言] ミカちゃん裏切っちまえー! というかヒョウカならなんとかなりそうw
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