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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十一章・暁の呪術師

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森を抜けて、旅をする。

 グリーンエメラルド領土を抜け、ホワイトパール王国領へ入った。

 日が傾く前に野営をするため、いい感じの川が流れている林の中へ。

 馬車を止め、馬を休め、野営の準備……すっごく手慣れてるな。プリムでさえ、捕まえたヘビを華麗にさばいては串に刺している。

 みんなでしてきた旅も、けっこうな場数を踏んだ。

 俺はナキとテントを組み終えた。


「さて、料理はオレとネコミミちゃんに任せな」

「ネコミミちゃんって言うにゃ。クロネって呼ぶにゃん」


 クロネとナキは調理を始め、プリムはシラヌイのブラッシング、アイシェラは馬の毛繕いや蹄の手入れ。俺はカグヤに誘われ、みんなから少し離れた場所で向かい合っていた。


「行くわよ……」

「おう」


 カグヤは俺に向かって突っ込んで来た。

 そのまま回転、回し蹴り───……俺は受けることなく躱し、カグヤの腹めがけて拳を振るう。

 だが、俺の拳はカグヤに躱された。こいつ、身のこなしが先生並みに上手い。

 少し距離ができた。


「甲の型、『鉄芯甲』!!」


 全身を固め、肘撃ちの体勢でダッシュ。

 避けられることを想定していたが、カグヤは避けなかった。

 

「フンッ!!」


 前蹴りで、俺の肘を受け止めた。

 でも、俺の『鉄芯甲』のが威力、速度共にある。カグヤは押し負ける……だが、カグヤは押しまけた反動を利用して後方へジャンプ。そこからダッシュし、飛び蹴りを放った。


「神風流、『流星杭』!!」

「───っく」


 こいつ、『鉄芯甲』を止めることじゃなくて、速度を落とさせるのが狙いだったのか。『鉄芯甲』の速度が落ち、技の終わりめがけて飛び蹴りを放つとは。

 俺は両腕でカグヤの飛び蹴りを防御……だが、威力が凄まじく、背後にたたらを踏む。

 カグヤは見逃さなかった。


「神風流、『連撃蹴打(れんげきしゅうだ)』!!


 高速の連蹴り。

 なかなかやる───……俺は試してみることにした。


「零式創世炎、『SEVENS(セブンス)FLARE(フレア)』」


 俺の身体が黄金の炎に包まれる。

 不思議と温かいんだよな、この炎。


「第一、第二、第三地獄炎、『TRINITY(トリニティ)FIRE(ファイア)』」

「はぁ!?」


 俺の身体から、三種類の炎が上がる。

 左手から第三地獄炎が上がり大地から板のように土が盛り上がり、それを第二地獄炎が凍らせる。

 カグヤの足下が泥化し体制を崩し、第一地獄炎が氷を砕き、礫のようにカグヤに襲い掛かった。


「あいたたたっ!? あっちちちちっ!?」

「ほい、俺の勝ち」

「あっ」


 俺は一瞬でカグヤの懐へ潜り込む、胸をポンと叩いた……あ、やべ。


「って、胸触んなっ!!」

「あ、悪い」


 カグヤは胸を押さえ後ずさる……しまった。こいつと戦ってると《女》ってこと忘れそうになるんだよな。胸とか足を触ると怒るんだよ。

 だが、今日は少し違った。


「……まぁいいわ。それにしてもアンタ、反則じゃないそれ」

「は?」

「その黄金の炎、他の地獄炎も同時に使えるんでしょ?」

「まぁな。かなり面白いぞ」

「ふーん……はぁ、アンタ、やばいくらい強くなったわね」

「そうか?」

「ええ。くやしいけど、今のアタシじゃ勝てないわ」


 カグヤは悔しそうに俺を睨む。

 でも、カグヤも相当な強さだ。十二使徒レベルだと俺は思う。

 

「確かにそうかもだけど、お前はかなり強いぞ。お前、俺とずっと一緒に旅してるからな。お前がどういう奴で、どういう攻撃するとか、なんとなくわかる。お前もだろ?」

「まぁね……」

「俺とお前、身体の相性いいしな」

「はぁ!? ななな、何言ってんのアンタ!! かか、身体の相性って」


 なんだこいつ。急に赤くなって……わけわからん。身体の相性って、模擬戦やる上での相性って意味だぞ?

 カグヤは赤くなったまま、俺を軽く蹴る。


「まぁ……アタシでよければ、とことん付き合ってやるわ。アンタとの決着、まだ付いてないしね」

「おう。頼むぜ、カグヤ」

「ええ……ふふ、なんか変な感じね」

「だな」


 カグヤと笑い合う。こいつともすっかり打ち解けた。

 たぶん、天使や神との戦いにカグヤの力は必要だ。頼りにしてるぜカグヤ。


 ◇◇◇◇◇◇


 晩飯は、ヘビ料理だった。

 満足した俺たちは、水浴びと片付けに分かれる。

 俺とナキは片付け、女性陣とシラヌイは水浴びへ。


「覗きたい!! って思わねぇの?」

「なんで?」

「いや、年頃の女のハダカ、見たくねぇの?」

「いやべつに?」

「……枯れてるっていうか、価値観の違いかねぇ? どういう生活してたんだか」


 ナキは左右に首を振る。

 片付けも終わり、今は二人で焚火を囲んでお茶を飲んでいる。

 

「ま、それは置いといて。フレア、ホワイトパール王国のこと知ってるか?」

「プリムとアイシェラの故郷だろ?」

「ま、その程度か。いいか、ホワイトパール王国は《特異種》への差別が激しい。オレ、お前、カグヤ、プリムのお嬢ちゃんは気を付けねーとな」

「差別……なんで?」

「ホワイトパール王国は、天使を崇拝してるんだよ。だから、特異種は『天使の血が混ざった出来損ない』って見られるんだ。神聖な天使を汚す存在ってな」

「ふーん」

「とにかく、気を付けようぜ」


 特異種への差別。

 俺は、俺たちは……身をもって知ることになる。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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