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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十章・深き森のグリーンエメラルド

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世界という名の観客

 そこは、真っ白な空間だった。

 ぬるま湯のような、じんわりとした温かさを感じる。

 そう、ここはさっきも感じた場所だ。


『相棒……聞かせてもらうぜ』

「あ、焼き鳥」

『焼き鳥……あーもういい。オレらですら頭おかしくなりそうなんだ』


 親切な焼き鳥こと『火乃加具土命』だ。

 焼き鳥だけじゃない。この白い空間に、地獄炎の魔王が勢ぞろいしていた。

 なぜ、みんな集まったのか。


『集まったんじゃないよ。ボクらの魔王宝珠が一つになったんだ。おかげで、プライバシーもなにもない、まっしろな空間だけの世界……』

『わらわのプライベートが……』


 タケジザイテンとアヴローレイアだ。

 他の魔王たちも困惑してる。こいつらのこんな顔初めて見た。

 白いお姉さんこと天照大御神が、顔に手を当てて言う。


『聞かせてくださいな。フレア、あなたは一体……?』

「うーん。俺もよくわかんないよ。あの『黄金の宝石』のせいなのは間違いないと思うけど」

『黄金の宝石……以前も言っていましたが、何のことですか(・・・・・・・)?』

「何のこともなにも。俺が地獄門に入って、お前たちの魔王宝珠を取り込んだときにあった宝石だって。俺は魔王宝珠を八個(・・・・・・・)取り込んだんだぞ?」

『……ああ、わからない。魔王宝珠は七つしかないはずです』


 天照大御神は頭を抱えてしまう。

 モグラのガイアとキモイ蝉の空蝉丸も互いに顔を見合わせているし、そんな二匹をティル・ナ・ノーグがツンツン指さしていた。

 すると、火乃加具土が言う。


『埒が明かねぇ。とにかく、事実は一つ。相棒はその『黄金の炎』で蘇ってここにいるってこった』

『そうだね。大正解!』


 と───いきなり聞こえてきた。

 ギョッとすると、俺たちの中心に黄金の炎が燃え上がり、まるで人のような形になる。

 だが、人間じゃない。炎がヒトをかたどっただけだ。

 黄金の炎は、どこか楽し気に言った。


『久しぶりだね、地獄炎の魔王たち。まぁきみたちはボクのことなんて知らないだろうけど。ボクはきみたちの産みの親だからよーく知ってるよ』

『お、親……だと?』

「そうだよ、火乃加具土命。ぼくは始まりの炎、世界を創り、きみたちを造った炎そのものさ』


 零式創世炎のゼロは、人形のような手をクイッと上げた。


 ◇◇◇◇◇◇


『とりあえず、ボクはこの世界を創った炎ってことにしておいて。すぐに信じられないだろうけど事実だし、少しずつ受け入れてほしい。それと、今回は力を貸したけど、もう何もしないよ。ボクはあくまでも傍観者……いや、世界だからね。こうして喋っているのも、フレアの中に残った炎に、世界の意志を載せているにすぎない』

「滅茶苦茶喋るなお前……で、結局お前は……いや、俺ってなんだ?」


 俺は質問した。

 俺は、人間なのか。そこが気になった。


『きみは零式創世炎の残り火から生まれた『人間』だよ。ここにいる地獄炎の魔王たちが地獄門に入った時に、燃え残った零式創世炎が門から漏れ出たんだ。十六年前にその炎が世界に触れ、ヒトとして新しい形になった。それがヴァルフレア、きみだ』

「……俺、びっくり人間だったのか」

『ま、そうだね。きみが地獄の業火に焼かれ続けても魂が消滅しなかった理由はそこにある。というか、呪術師としての素質は最高なのは間違いないね。というか魔王たち……少しは疑問を持とうよ。フレアの冒険を面白がるばかりで、肝心なことはすっかり忘れてる』

『『『『『『『うぐ……』』』』』』』


 おお、魔王たちが『うぐ……』って唸ったぞ。

 ゼロは、ケラケラ笑いながら言う。


『じゃ、伝えることだけ伝えて退散しようかな。まずフレア、きみに与えた『零式創世炎』の効果だ。黄金の炎で身体を包むと、全ての地獄炎を同時に扱える。さらに、魔神器も改良しておいたからね。七つの魔神器を鎧のように装備して戦えるよ。それと、魔神器の覚醒状態(オーバドライブ)は形状変化に伴って使えなくなったから気を付けてね』

「おう。さっき使ったけどすっげぇよな。すげぇ力湧いてきたし」

『うんうん。ちょっと強すぎるかもだけど、今のフレアには必要なはず』

「……なんで?」

『そりゃ決まってる。最後の戦いが近いからさ』

「…………?」


 ゼロは黄金に燃え上がり浮かんだ。

 俺、魔王たちを見下ろすような感じで。


『さぁ!! 七つの魔神器と七つの地獄炎が究極の姿へと至った。地獄の業火に焼かれ続けた少年は最強の炎使いへ、そして最後の戦いが始まろうとしている。敵は三柱の神、アメン・ラー、トリウィア、黒勾玉!! 恐らく彼らは命じている……天使、黒天使、堕天使、そして暁の呪術師たちに『フレアを始末しろ』と!! それを迎え撃つは最強の呪術師とその仲間たち!! 向かうはホワイトパール王国、国王の死は近く、王座を巡る争いも最終局面へ!! さぁヴァルフレアよ、全ての決着を付けて、平和な世界を取り戻すことができるのか!? ふははははは!! 楽しみにしているよ……じゃぁね』


 そして、黄金の炎は燃え尽きた。

 残された俺たちはポカンとする。焼き鳥は俺を見て言う。


『……なんだあれ』

「知らね。でも……あの神様たち、天使たちの親玉なんだろ? あいつの言う通り、全ての天使が俺を狙ってくるかもな……まぁ、今なら負ける気しないけど」


 そのために、ゼロは力をくれた。

 零式創世炎。黄金の炎。進化した魔神器。

 ゼロのやつ、ほんとうに観客として見てるだけのようだ。


「とりあえず、これからもよろしくな」

『お、おう……オレらはオレらで話し合ってみるわ。相棒』

「ああ。じゃ、またな」


 ゆらりと世界が揺れ───。


 ◇◇◇◇◇◇


「あ、起きた」

「フレア!? 大丈夫ですか!!」

「……カグヤとプリム」


 カグヤとプリムが俺の顔を覗き込んでいた。

 まだ頭がぼーっとする……なんか温かいと思ったら、プリムが癒しの力を俺に使用していた。

 なんか、まだ実感ないな。


「ん~~~……」


 手を伸ばし、カグヤとプリムの頬に手を添えた。


「ふわわっ!?」

「ひぇっ!? ちょ、なにすんの!?」

「……あったかいしスベスベだな。ああ、現実だ」


 プリムとカグヤは顔を赤くして離れた。

 俺は起き上がり確認する……どうやら俺、寝てたようだ。

 ナキとアイシェラが何やら話し、クロネは馬車の上でキョロキョロしてる。


「お、起きたか。ねぼすけ」

「ナキ。悪い悪い、寝てたわ」

「それで、何がどうなった? ブチ切れたお前を追ってここまで来たら、なぜかお前は爆睡してるときたもんだ」

「あー……とりあえず、もうエルフの里は大丈夫。いろいろ話したいことあるけど……」


 と、ここで俺の腹が盛大に鳴った。

 アイシェラは苦笑し、クロネも馬車から降りてきた。


「とりあえず、メシにしようぜ」

「貴様は全く……」

「やれやれにゃん」


 まずはメシ食ってから、だな!

魔神器のオーバードライブ形態は、ゼロが魔神器を造り変えたことで使えなくなりました。強いけどデメリットのが多く使いにくそうだとゼロが判断したからです。

フレアが直接装備し、その能力を向上させることで更なる強化をしました。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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