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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十章・深き森のグリーンエメラルド

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BOSS・かつて師の友人だった者

 ラルゴおじさん。

 武器を使うこと、先生並みに強いこと、いっぱい弟子がいること。俺が知ってるのはこのくらいだった。

 先生の家でお酒を飲んだり、俺にお酌させたり、俺の作ったおつまみを美味い美味いとモグモグ食べたり……思い出すのは、こんなとことばかりだ。

 だから、今初めて知った。

 ラルゴおじさんが、こんなに強いなんて。


「鋼の型『九式』───『剣槍扇舞』」

「ッッッ!? っぐ───」


 剣、槍を交互に持ち替えての連撃。

 その速度、カグヤやラーファルエルなんて比じゃない。今まで戦った誰よりも速かった。

 俺は、躱すだけで精一杯。反撃なんてできない。


「っく、くそ、なんで……っがっ!?」


 躱す、躱す……だが、槍が腕を、剣が脇腹をこする。

 第三地獄炎で大地を燃やし、その鉄分から精製した武器。

 俺はこんな使い方しない。これが第三地獄炎の真骨頂。

 

「どうした? お前の『流転掌』はこんなモンか?」

「っぐぅ……だったら!!」


 流転掌や漣で流しきれない。

 だったら───全部受ける!!

 俺は、ラルゴおじさんの振りかぶる斧を右手で受ける。


「甲の型『極』!! 『金剛夜叉』!!」

「ほう」


 バギン!! と、ラルゴおじさんの斧が砕けた。

 ほんの一瞬のチャンス。

 俺は金剛夜叉を解除し、ラルゴおじさんに接近。そのまま正拳を───。


「甘い。流の型、『漣』」


 ラルゴおじさんの武器は地獄炎だけじゃない。

 呪闘流の基礎四大行。武器に囚われすぎてラルゴおじさんが使えることを忘れていた……なんてな。

 俺の拳。軌道が変わる……だが。


「流の型、『漣返し』!!」

「ぬ!?」

「からの───滅の型、『百花繚乱』!!」


 顔面を狙った連撃。

 ラルゴおじさんは驚いていた。

 このままいけば当たる。

 悪いが、遠慮しない。タケジザイテンは偽物とか言ってたが、本物だろうと俺は手加減しない。

 ラルゴおじさんは───何故か、苦笑していた。


「───っか、あ!?」


 ラルゴおじさんの顔に拳が当たる瞬間、背中に激痛が走った。

 拳が逸れる。すると、ラルゴおじさんがカウンターで俺の腹に蹴りを入れる。

 

「ごっがっ!?」


 そのまま吹っ飛び、木に叩きつけられ……俺は血を吐いた。

 背中からも血が出ている。

 まるで、杭が刺さったような怪我。

 

「う、そ……だろ」


 ラルゴおじさんの傍に、誰かがいた。

 真っ黒な長い髪。着ているのは呪道着……肩が見え、胸元まで見えている。

 足は長いスカートのような、刺繍の入ったデザインだ……ああ、見たことある。

 ラルゴおじさんは言う。


「オレがいるんだ。ったく、予想くらいしとけ」


 そして……ラルゴおじさんの隣にいた『女性』が言った。


「ごめんね、フレア」

「……ヴぁ、ヴァジュリ、姉ちゃん」


 その女性は、俺の姉みたいな師……ヴァジュリ姉ちゃんだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 動けなかった……毒か。

 久しぶりに会ったヴァジュリ姉ちゃん。顔色は良く、笑っていた。

 俺は、なぜか安心感に包まれていた。


「ヴァジュリ姉ちゃん……身体、大丈夫なの?」

「ええ。神様に造り変えてもらったから。とても元気よ」

「そっか……」


 もう、俺の知っているヴァジュリ姉ちゃんじゃなかった。

 神に造り変えられた。ラルゴおじさんと同じだ。

 すると、上空から巨大な水晶玉が落ちてきた。

 水晶玉には座布団が敷かれ、そこに一人の老婆が座っている。


「マンドラ、お婆ちゃん……」

「ヒッヒッヒ。久しいねぇフレア。元気してたかい?」


 呪術師の村。最高の預言者のマンドラ婆ちゃん……やっぱり。

 呪術師の村で、最高の使い手が三人そろった。

 マンドラ婆ちゃんが現れると同時に、いくつもの気配が集まってきた。

 その数、七人。


「お、やったか」と、セキドウ。

「あぁ、フレア様……」と、ヒョウカ。

「兄さま、やっほー」と……誰?

「フレア、久しぶり」と、ハクレン。

「ふん……」と、フウゲツ。

「あらら……やっぱりこうなったか」と、オグロ。

「残念ね、ヴァルフレア」と、ジョカ。


 暁の呪術師と名乗った呪術師たちが、揃っていた。

 全員が、俺を囲むように見ている。

 俺は痛む身体を押して立ち上がる……ワケがわからない。でも、負けっぱなしじゃいられない。


「やめておけ」

「えっ」


 そして、聞こえた。

 懐かしい声だった。

 聞き間違えるはずがなかった。

 その声は、俺が、俺が間違えるはずがなかった。

 後ろから、聞こえてきた。


「あ……」


 振り返ると、そこには。

 傷だらけの顔、素足に草履、半纏のような呪闘着を着ていた。

 俺は、身体が震えるのを感じた。


「せ、せん、せい……」

「ああ……久しぶりだな。フレア」

「先生……先生!!」


 タック先生は、笑っていた。

 どこか苦笑のような、先生の笑顔。

 俺は、目の前の先生に。


『フレア!! 奴は、奴はタックではありません!! 気を付け───』

「フレア。悪いな」

「っ」


 一瞬で目の前にきた先生の手が、俺の胸を貫いた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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