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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十章・深き森のグリーンエメラルド

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六道、地獄道

 上空数百メートル。

 透き通る青空の中、一匹の巨大ドラゴンが優雅に空を泳いでいた。

 全長三十メートル以上あるドラゴンだ。このドラゴンは、龍人族に育てられた『戦闘用ドラゴン』で、龍王国ドラゴンキングダムに住んでいる。

 そのドラゴンの背に、二人の龍人が座っていた。


「これでエルドラドも終わりだな」

「ああ。ヴァルトアンデルス様に逆らった報いだ。まぁ、本人も今頃死んでいるかもしれんがな」

「がっはっは! エルフなどと共存? そんなバカなことを言うからこうなるのだ」


 二人は、龍王ヴァルトアンデルスに直接仕える戦闘兵士。龍人の中でもトップレベルの強さを誇る。

 この二人は、ヴァルトアンデルスに命じられ、エルドラドの治めるエルフ領土を壊滅させた。

 実にいい気味である、と二人は思っていた。


「あのような甘っちょろい龍人が四天王最強とはな。まぁ……これで四天王は全滅。王は新たな四天王を作り、再びエルフの領土を取り戻すだろう」

「その次は……いよいよ」

「ああ。パープルアメジスト、そしてホワイトパール。魔道機関があるパープルアメジストは侮れんが、平和ボケのホワイトパールならすぐに堕とせるだろうな」

「ふふ、いよいよか」

「ああ……この世界を牛耳る。七つの領土を統一し、龍人がこの世界の頂点に立つ。くくく、天使や吸血鬼などと同格と言われている龍人族だが、それは間違いだと証明しよう」

「楽しみだな……」

「ああ。血が滾る───」


 と───のんきに笑い合っていた。

 次の瞬間、背筋が凍り付いた。

 一瞬で夜になった。

 

「「───!?」」


 違う。

 夜になったのではない。上空に、巨大な『何か』が現れたのだ。

 全長三十メートルを超えるドラゴンですら覆い隠すような『何か』が。


「見つけたぞ……」


 それは、巨大な『蟲』だった。

 緑色の、煙のような……煙が歪な『昆虫』になったような。言葉では表現できない『何か』だった。

 その『何か』が、第五地獄炎の魔神器『蟲翅』だとは当然知らない。

 そして、喋ったのは『何か』ではなく……その上にいる人間だった。

 この強大な『圧』は、巨大すぎる昆虫ではない。その人間から発せらていた。


『ガチガチガチガチガチガチ……ッ!!』


 ドラゴンが、震えていた。

 全身にじっとりと汗が浮かんでいた。

 あまりの恐怖に震えが止まらなかった。だが……目の前の『昆虫のような何か』が、『飛ぶのをやめる』ことを許さなかった。

 飛ぶしかなかった。だから、震えながら飛んでいた。

 そして……昆虫に乗っていた少年フレアが飛び降りた。


「お前らが、あの村を襲撃したんだな」

「「───っ」」


 声が出なかった。

 それくらい、圧倒的だった。

 フレアは、本気で怒っていた。

 かつて、ラーファルエルがフレアの目の前でブルーサファイア海軍の船を破壊したときのように。その時以上の怒りが、フレアを支配していた。

 『蟲翅』が消えた。

 そして、代わりに……フレアの五指から、黒い炎が揺らめいた。


「第六地獄炎、『地獄道』」


 フレアは、五指の炎で龍人たちの顔面を鷲掴みした。すると、黒い炎が顔面を焼く。

 熱さはなかった。痛みもなかった。声も出なかった。

 炎が収まると、そこには……ガチガチ震える龍人が二人いた。


「お、オレは……オレハ、なんてコトヲぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

「あぁぁァァァァァァーーーーーーッ!!」


 龍人二人は、『罪の意識に苛まれ』ていた。

 第六地獄炎『地獄道』は、死ぬまで燃え続ける『罪悪感』の炎。

 大量殺人をしたという『罪悪感』が、二人の心を焼き尽くしていた。

 龍人に炎は通用しない。だが……今のフレアに燃やせないものはなかった。


「永遠の罪悪感で燃え続けろ」


 そう言って、フレアは二人をドラゴンの背から蹴り落とした。

 龍人たちは、身体を抱え叫び続けながら落下。受け身を取らず地面に激突したが、少しずつ回復。怪我が治っても死ぬまで罪悪感に焼かれ、もう元の生活には戻れないだろう。

 そして、フレアはドラゴンを睨む。


「おい。お前……俺をお前の親玉がいる国へ連れて行け」

『ガチガチガチガチガチガチ』


 ドラゴンは、狂ったように首を振った。


 ◇◇◇◇◇◇


 時間は、フレアが飛び去った瞬間まで戻る。

 プリムたちは、フレアが飛び去った方向を見た。


「フレア、一人で……!!」


 プリムがそう叫ぶが、すでにフレアは飛び去った。

 我に返ったナキは、歯を食いしばる。


「クソ!! 恐らく、ヴァルトアンデルスの仕業に違いねぇ。エルドラドの野郎、何かあったんだ……!!」

「な、何かってなによ!!」

「この村が焼き尽くされるような『何か』に決まってんだろ。フレアの野郎、もしかしたら一人で乗り込むつもりかもしれねぇ」

「一人でって、まさか……」


 カグヤがハッとする。

 ナキは歯を食いしばって言った。


「龍王国ドラゴンキングダム。龍王ヴァルトアンデルスのいる国だ」

「あの馬鹿者め……クロネ、位置はわかるか」

「にゃ、た、たぶん」


 アイシェラは、珍しくフレアを心配していた。

 クロネは地図を引っ張り出す。エルドラドからもらったものだ。

 カグヤは、今にも飛び出そうとしていたが、ナキに止められる。


「ちょ、なによ!!」

「待て。行くなら万全な状態でだ」

「うぅ……フレア、抜け駆けして許さないし!!」


 プリムは……涙を浮かべ、祈りを捧げていた。


「うっ、うぅ……ひどい、ごめんなさい……わたし、なにも」

「お嬢様。お嬢様のせいでは……」


 村はもう、ただの黒い平原だった。

 死体すら燃え尽きた。ドラゴンの炎の凄まじさがあった。


「……もしかしたら龍人がいるかもしれねぇ。ここを離れるぞ」

「でも!!」

「プリム。埋葬とか考えてるなら無駄だ。もうここには何も残っちゃいねぇよ」

「!!」


 ナキは振り返り、煙管に火を点ける。

 そして……ギリギリと拳を握る。


「この落とし前は必ずつける。行くぞ」

「……っ、はい」


 一番怒っているのは、同じエルフのナキに決まっている。

 プリムはナキの後を追い、カグヤとアイシェラ、シラヌイが続く。

 そして、クロネは振り返った。


「…………にゃん」


 美味しかった魚の味を思い出し、少しだけ頭を下げた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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