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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十章・深き森のグリーンエメラルド

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龍の宴

 宴となった。

 浮遊石を中心に櫓を組み、燃やす。

 そして、その周りをテラエルフたちが伝統的な衣装を着て舞い、俺たちは上座に座り、ここの領土で作られた野菜や肉の料理をいっぱい食べていた。

 俺は、カグヤと一緒に肉を喰っていた。


「うんめぇぇ!! この肉すっげぇうめぇぞ!!」

「あ、それアタシの!! 取らないでよ!!」

「はっはっは。肉はまだまだたくさんある。喧嘩しないで食べてくれ」


 エルドラドは、薬酒というテラエルフが作る薬草の酒を飲んでいた。

 アイシェラは、テラエルフがお酌する薬酒を飲み上機嫌だ。


「おじょうさまぁ~~~……ああ、柔らかおっぱいぃぃ~~!!」

「きゃぁぁぁぁ!? アイシェラ、何してるの!?」


 アイシェラ、プリムの胸に顔をうずめてフガフガしている。

 隣に座るクロネは魚に夢中で無視。ナキはというと、テラエルフの美女に囲まれてさらに上機嫌だった。

 

「お兄さん、いい身体してるわねぇ~」

「そうだろ? 今夜どう? オレのベッドは十人まで寝れるぜ?」

「「「きゃぁ~~っ!」」」

「はっはっは!! さぁさぁ、お嬢さんたちも飲みな。天国へ連れてってやるよ」


 ナキはテラエルフの女性を口説きまくっていた。

 俺は、肉を食べながらエルドラドに聞く。


「にしても、ほんとすっげぇ明るいよな。今までのエルフはみんな奴隷だったのに」

「ボクがおかしいだけさ。本来、龍人族は他種族を受け入れたりしないよ」

「じゃ、あんたはいいやつなんだな」

「いい奴?……ふふっ、そんなこと言われたの初めてだな」


 エルドラドは、薬酒を飲みながら笑う。

 俺の隣で肉を喰らうカグヤはまるで聞いていない。立ち上がり、プリムとアイシェラの間にある肉の皿に向かって行った。プリムとアイシェラは……あれ、アイシェラの頭にデカいたんこぶが。どうやら木槌で殴られたようだ。


「戦いは嫌いだ。でも……ボクは強かった。四天王なんて呼ばれて、この地を与えられ、好きにしろと言われて数十年。ボクはボクなりにこの地を統治してきた。でも、ある日知ったんだ……ボク以外の四天王が、エルフや他種族を奴隷のように扱っていることを」

「酷かったぞ。ほんとに」

「……すまない。何度かヴァルトアンデルス様に直訴したんだ。他種族と共存すべきだと。でも、突っぱねられたよ。そういうのはお前の土地でやれってね」

「ふーん」

「だから、ボクはこの地で争いの場にさせない。他の領地もそうだ。いずれ全ての土地をエルフに還し、ヴァルトアンデルス様には他種族との共存、交渉をしてもらおうって。でも……ヴァルトアンデルス様は龍人の中の龍人。他種族と交渉なんてするつもりは絶対にない。だから、ボクは王になろうと思ったんだ」

「ほお」

「でも、王は強い。ボクじゃ歯が立たない。でも……キミたちがいれば」

「そこは問題ない! 俺、めっちゃ強いし」

「ふふ。数日で四天王を三人も倒すなんてね。キミみたいな人間は初めてだよ」

「はっはっは。任せろ任せろ」


 俺は薬酒を一気飲み……ぐえ、これ美味しくない。

 エルドラドは、俺のコップに薬酒のおかわりを注いだ。


「明日。ボクは本国に向かい王に謁見する。最後にもう一度だけ、全ての領土を返還して他種族との交流の場を設けてもらえないか、説得する」

「真面目だなぁ。ぶん殴ればいいじゃん」

「言ったろ? 争いはしたくない。話し合いでできることなら、話すべきだ」

「へいへい。じゃ、俺たちは?」

「ボクが戻るまでここにいてくれ」

「わかった。じゃ、明日も宴会な!」

「やれやれ。わかったよ」


 エルドラドは苦笑し、薬酒を飲み干した。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。エルドラドは数人の龍人を連れて出て行った。

 残された俺等は留守番。エルドラドが戻ってきたら龍人族の王国へ向かう。

 俺たちは、エルドラドの家でのんびりお茶を飲んでいた。


「いやー楽しみだな! 今日の宴会と龍人族の王国!」

「どっちだ貴様……それより、昨日の記憶がない。お嬢様、私はお嬢様をお守りできたでしょうか?」

「知らない。アイシェラの馬鹿」

「え……?」


 アイシェラは首を傾げる。

 ナキは煙草を吸いながら苦笑した。


「アイシェラ。おめーさん、昨日はプリムのお嬢ちゃんに」

「わーわー! 言わなくていいですぅ!」

「うるさいにゃん……それより、今後のことを話しておくにゃん」

『わぅん』


 クロネは、シラヌイを撫でながら言う。いつのまにこんな仲良くなったんだ?

 

「龍人族の王ヴァルトアンデルス。かなりヤバい奴みたいにゃん。強さは十二使徒五人分くらいで、聖天使教会の指導者アルデバロンと引き分けた実力者にゃん」

「アルデバロン……天使っぽくない名前だな」

「……確か、改名したんだっけか」


 ナキがそう言うと、クロネがポカンとしていた。

 

「数百年前だったか? 聖天使教会のトップが改名したんだと。よくわかんねーけど……聖天使同士でいざこざがあったとか。あー、よく知らん」

「う、うちは初耳にゃん……」

「オレも噂程度だ。もう聴くな」


 クロネは自分が知らなかったことでショックを受けている。

 すると、カグヤが欠伸した。


「そんなことより、エルドラド戻ってきたら殴り込みでしょ? ウズウズするわ」

「その前に、今夜も宴会だぞ! あ、そうだ。せっかくだし狩猟行かね? 美味い肉狩りに行こうぜ!」

「はい! わたしも行きたいです。お世話になったエルフの皆さんにお肉プレゼントしたいです!」

「お嬢様のいるところ我あり。もちろん私も行くぞ」

「お、いいね。森のことならオレに任せな。こう見えてけっこう狩りは好きでね」

「うちも行くにゃん。まぁ暇だし……」


 というわけで、全員で狩りに行くことになった。


 ◇◇◇◇◇◇


 さっそく全員で村を出た。

 馬車に乗り、近くにいい広場があるというのでピクニックがてら向かう。

 天気もいいし、いいピクニック日和だ。

 俺とカグヤは、馬車の屋根で仰向けになり空を見上げる。


「いやー……のどかだ」

「そうね~……龍人族の王様に喧嘩売りに行くとは思えないわ」

「だなぁ……くぁ~あ、眠い」

「寝ていいわよ。アタシが獲物全部いただくから」

「は、冗談」


 軽口を叩きあい、なんとなく笑っていた。

 プリムとクロネが窓から顔を出し、アイシェラとナキは御者席でお喋り。シラヌイはプリムの傍で昼寝……いやー、まさに『旅』って感じだ。

 この辺りの森は木々が閑散としているので、日の光がよく当たる。

 俺は空を見上げていた。


「───ん?」


 そして、気付いた。

 一匹の巨大なドラゴンが、空を飛んでいた。


「お、見ろよカグヤ、ドラゴ───」


 と───……ドラゴンを指さした瞬間。


『ゴァァァァァァァァァァァァッ!!』


 ドラゴンは、巨大な炎を吐いた。

 いきなりだった。

 炎は、どこを狙ったのか。

 俺たちの後方だった。

 そこにあったのは、浮遊石……そして、テラエルフの村。


「───おい、まさか」

「アイシェラ!! 戻れ!! まさか……まさか!!」


 ナキが叫ぶ。

 アイシェラは硬直し、ナキは手綱を強引に奪った。

 プリムは茫然とし、クロネが窓から飛び出す。


「先行くにゃん」


 それだけ言って消えた。恐るべきスピードだった。

 俺も無意識に飛び出した。

 カグヤが飛び出そうとしたが手で制する。


「───頼む」

「……うん」


 俺は全力で走った。

 同時に……臭ってきた。肉の焼ける匂い。木々が燃える匂い。

 嫌な予感が止まらない。

 そして、村に到着───そこは、地獄と化していた。


「……………………噓、だろ」

「……ひどい、にゃん」


 クロネがへたり込んでいた。

 そこには、黒い地獄しかなかった。

 人のような何かが転がり、家屋は全て焼けていた。炎の威力がすさまじく、燃えたのは一瞬……一瞬で焼き尽くし、何も残らなかった。

 プリムたちの馬車が到着した。アイシェラとナキは蒼白になり、カグヤは馬車のカーテンを押さえ開かないようにしていた。

 

「……………………」


 俺の背中は冷えていた。

 そして、背中から緑色の炎が爆発的に燃え上がる。

 ぷつんと、何かが切れたような気がした。


「あ、の……クソドラゴンがァァァァァァーーーーーーッ!!」


 怒りのまま叫び、俺は全力で空を飛んだ。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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