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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十章・深き森のグリーンエメラルド

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浮遊石地帯の龍

 毒龍ヴェノムスネークを討伐した俺たちは、最後のエルフ領土である『浮遊石地帯』へ向かった。

 嬉しいことに、毒の森からけっこう近い。

 毒の森を抜け、木々が明るい色になり、馬車の窓を開けたプリムが言う。


「はぁ~……空気が美味しいです」

「そーね。辛気臭い森とおさらばよ」

「にゃん。もうあそこに入りたくないにゃん……」


 カグヤとクロネも窓から身を乗り出して言う。

 俺はシラヌイを撫でながら馬車の屋根に寝転がった。


「ふぁ~あ。ようやくいい日差しが差し込んできたわ……眠くなってきたぞ」

「じゃ、少し寝とけ。オレが周囲を警戒してやっからよ」

「お、悪いな。さすがナキ」

「さすがの意味がわかんねぇよ……アイシェラ、隣いいか?」

「構わんぞ」


 ナキはアイシェラの隣に座り、煙草をふかし始めた。

 アイシェラは手綱を強く握り、ナキに言う。


「ナキ。『浮遊石地帯』だが……」

「ああ。エルフの神が祀られてる。オレもガキの頃に一度だけ行ったな……もう何百年前のことだから覚えちゃいねぇが」

「そこに最後の四天王がいるのだな」

「ああ。確か浮遊石地帯には、神に仕える神聖なテラエルフがいたはずだ」

「……テラ、エルフ?」

「エルフの神『テラーロアー』に仕える聖なるエルフだ。ま、見た目はそんなに変わんねーから、人間は『エルフ』って認識でいいぜ」


 ナキは煙を吐く。

 そういえば、ナキってエルフだけど普通とは違うのかな?

 俺は馬車から身を乗り出す。


「そーいや、ナキってエルフだよな?」

「まーな。人とエルフの混血、ハーフエルフだ」

「じゃあ、『森人(ハイエルフ)』ってのは?」

「そりゃ冒険者が勝手につけた二つ名だ。ったく、センスねぇなぁ……もっとカッコいいのなかったのかねぇ?」

「ははは。俺はカッコいいと思うぞ。なぁみんな」


 俺は馬車から身を乗り出してるプリムたちに言う。


「か、カッコいいと思います!」とプリム。

「どーでもいい」とカグヤ。

「うちもどーでもいいにゃん」とクロネ。


 つまり、みんなどうでもよかった。

 ナキは苦笑し、アイシェラはクスクス笑う。

 俺もつられて笑ってしまった。やっぱり、男の仲間がいるっていいな。


「なぁナキ、マジでこの騒動終わったら一緒に冒険しようぜ」

「……それもいいかもな」


 ナキは、ニヤッと白い歯を見せながら笑った。


 ◇◇◇◇◇◇


 それから二日。

 到着したのは、『浮遊石地帯』の名の通り、石が浮かんでいる変なところだった。

 大きな岩が何個か浮いてる。そして、その周りを囲うように村みたいなのがあった。

 そして、驚いたのは……すんなりと村に入れたこと。

 そして、目の前にいるイケメンだった。


「ようこそ参られた。遠い国の客人たち」


 スタイル抜群のイケメンだ。

 サラサラの金髪。シンプルなシャツとズボン。イケメン顔にさわやか笑顔。

 イケメンは、馬車が到着するなり俺たちを出迎えた。

 俺はアイシェラとナキに目配せし、一人で馬車から降りる。カグヤが寝ててよかった……あいつが起きるとめんどくさそうだしな。

 イケメンは、俺に向かって頭を下げた。


「ボクは『天龍エルドラド』……このエルフの地域を任された龍人だ」

「は?」

「戦う意志はない。部下も十人しかいない。どうか話を聞いてくれないか」

「……はい?」


 天龍エルドラドと名乗ったイケメン龍人は、両手を上げて降伏する。

 すると───どこに隠れていたのか、濃い緑色の髪をした少年少女が、エルドラドに突っ込んだ。


「どっかーん!」「えいやーっ!」

「うわわっ!? こ、こらこらレイク、アイコ、大事な話の最中だから出てくるなと」

「えっへへ、エルドラド兄ちゃん、遊んでくれるって言ったじゃん!」

「そうよそうよ!」

「う、うう。悪かった悪かった。後で遊ぶから」

「ほんと~?……あ、お客さんだ!」

「ほんとだ! 逃げろーっ!」


 少年と少女は笑いながら逃げ出した……え、なにこれ?

 エルドラドは、苦笑しながら言う。


「すまない。ここの子供たちは元気の塊でね……どうも相手をするのに体力がいる」

「……今の」

「ああ。テラエルフさ」

「……エルフは奴隷じゃないのかよ?」

「ボクは他の四天王とは違う。そのあたりを含め、話を聞いてほしい」

「…………」

「この地はエルフ族に返還する。ボクは待っていたんだ。キミたちのような存在が来てくれることを」

「…………わかった」


 俺は構えを解く。

 エルドラドはにっこり笑い、俺に握手を求めてきた。


「ありがとう……」

「ん、ああ……正直、まだ混乱してるけどな」


握手に応じ───気付いた。

 こいつ、めちゃくちゃ強い。凱龍のおっさんよりも、毒龍のホウキ野郎よりも。

 圧倒的な力が循環している。でも……闘う意志みたいなのが全く感じられなかった。


「わかってくれたかな?」

「ああ。お前、もしかしていい奴?」

「ははは。それはどうかな?……きみと、きみの仲間が見極めてくれたらいい」

「……わかった」


 手を離し、俺は馬車へ戻る。

 アイシェラ、ナキ、プリム、クロネがずっとこちらを見ていた。

 

「ど、どうしたんですか?」

「あいつ、戦う意志はないって。ってか、ここめっちゃ平和そうだぞ」

「……どういうことにゃん?」

「知らん。まずは話がしたいって」

「大丈夫なのか? お嬢様に不埒な真似をする輩が潜んでいるかもしれん」

「それはアイシェラでしょ」

「あっふぅん!!」

「……とりあえず、話を聞いてみようじゃねぇか」


 ナキが緊張気味に言い、馬車を降りた。

 プリムたちも馬車を降りる。

 俺は寝ているカグヤの頭を軽く叩いた。


「ほにゃっ……んん~? なになに」

「着いたぞ。降りろ」

「戦うの~?」

「戦わない。ほら、降りろ。脇くすぐるぞ」

「いやぁ~……んんん」


 寝ぼけカグヤの頭を強めに叩き、俺は馬車を降りた。

 さて、わけわからんが……どうなるのかな。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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